人生の再建のための第一歩が、恨み心、環境を呪う心、人のせいにするする心、こうしたマイナスの思いを断ち切ることにあるとするならば、二番目に必要なことは、研究する心です。
自分自身のなかばかりを見ていないで、周りを見ることです。世の中をよく見ることです。どのような人が生きているのか。彼らがどのような問題を抱えて、どのような気持ちで生きているのか。それを、もっともっと知らなければなりません。他の人びとを見てみるのです。
結婚に失敗したのは、自分だけではないでしょう。親に死に別れたのは、自分だけではないでしょう。病気をしたのも、自分だけではないでしょう。試験に落ちたのも、自分だけではないはずです。ほかにもたくさん、いろいろな人がいます。
しかし、そうした境遇にあっても、人びとの歩みはそれぞれです。いろいろな歩み方をしていきます。なぜ違うのか、それを一生懸命に研究してみる必要があるのです。そして、この研究は、主として二つの点に注意をしなければなりません。
第一は,みなさんから見て不幸だと思える方の、その原因を考えてみることです。
みなさんの目の届く範囲、耳の聞こえる範囲、職場か家庭か、必ずどこか身近に、不幸だと思える方がいるはずです。
自分から見て、余裕をもって見られる人、不幸だと思える人、そういう人を見て、その原因がどこにあるかを知ることは、それほど難しくはありません。こちらのほうが、より簡単です。
まず研究してみることです。いったい何が原因になっているのだろうか。それを考えてみるのです。いくつか理由は出てきます。そのなかでいちばん中心になっている原因は何だろうか。それを考えてみることです。
たとえば、事業でいつも失敗ばかりしている人がいます。それは、景気が悪いからだとか、人が信用できなかったからだとか、金が借りられなかったからだとか、従業員の質が悪かったからだとか、いろいろな言い訳はありますが、その人が経営で成功しない理由をよく見ていると、じつは、その人にひじょうに「焦る」傾向があったというようなこともあります。
その人は、いつもイライラして焦っているのです。焦っているとどうなるかというと、まず、人の仕事が信用できなくなってきます。そして、イライラして何か口をはさみます。また、焦ると結果をひじょうに急ぐようになります。
そして、もう少し辛抱すれば本当は成功するところだったのに、現在ただいまにおいて充分な成果が出ていないと、せっかくお金をかけて、人もずいぶん使ってやってきた仕事を、パタッとやめてしまう。こういうことで、せっかく過去に培ってきた信用関係を、わずか一日で失ってしまう。このようなことがあります。
こういう焦りの心を持った人というのは、結局、他の人に対するゆとりの目がありません。他の人の事情を見てあげる目がありません。相手の事情を汲んであげる余裕がありません。自分のことで、もう手いっぱいです。いつも不安でしようがないから、なんとか早く結果を出したいということで焦っているのです。
あるいは、もう一歩のところでいつもへまをする、このような方もいます。かなりのところ、八割、九割のところまでうまく来たのに、もうちょっとのところでへまをする、こういう方がいるのです。
こういう方は、たいていの場合、言葉で失敗することが多いのです。取引もまとまりかけて、もうすぐ契約という段階になると安心してしまって、「じつは、本当はうちに問題があるのですよと」というようなことを、サッと口走ってしまう。
「裏の倉庫は在庫の山で・・・・・」などと言ってしまう。あるいは、「先般も、じつは銀行から融資を断られたところだったのですよ。ありがとうございました」などということをペロッと言ってしまう。すると、相手は心配になります。「もう一回調べてみないと、これは危ない」と思って帰ります。そして、調べた結果、やはり危なそうだということで、契約がだめになってしまう。
このようなことをする人は、世の中にけっこう多いのです。もう少しのところで、わざと失敗するようなことを、自分で無意識に言ってしまうのです。
こういう人は、じつは心の奥で失敗を願っているのです。「失敗を願っている」などというと、その人は怒るでしょうけれども、傍目から見たらそうなのです。そのようなタイプの方が、そういう場面になって、やはり失敗を起こすようなことをします。そして、その結果、「やはり自分は不幸なんだ」ということを確認して、安心しているのです。このような方がいます。
彼らは、じつはぬるま湯から出たくないのです。ぬるま湯のなかにいたら風邪を引きそうだけれども、出ても風邪を引きそうだから、ぬるま湯に還りたいのです。こういう方がいて、自分で失敗をつくっていきます。そして同じ苦しみを味わって、人生は厳しいものだということを一生懸命確認しています。
このように、他の人が失敗している例を見てみると、いろいろなことがわかってきます。これをしっかり研究することです。これが、自分がまた同じような立場、環境に立ったときに、教材として生きてきます。これが指針になるのです。ですから、しっかり見なければなりません。
---owari---
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