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それぞれの心の領域を調和させる(後編)

2020年10月17日 | 人生
([心の領域と使い方④]―心のいちばん上に立つべき「悟性」)
「心」の領域には分けて捉(とら)えられるものがいろいろあります。要するに、心のなかのさまざまな面として、「喜怒哀楽」の感情から始まり、「意志」の領域、「理性」の領域、「知性」の領域があるわけです。

さらに、大事なこととして、勉強しなければ、あるいは、それに接しなければ決して生まれない領域として、もう一つ「悟性(ごせい)」というものがあります。

「理性」とは、理数系的な頭脳を磨いている途中で強くなっていく能力です。
「知性」とは、本をたくさん読んだりすると、身についてきやすい能力です。
「意志力」とは、いろいろと困難なことを断行しているうちに、だんだん身についてくる能力です。
そして、もう一つ、「悟性」というものがあるのです。宗教的に言えば、「悟性」が、人間の能力としていちばん上に立つものになります。

(「理性」を「悟性」の上に置いたカント哲学で生じた問題)
しかし、カント的な哲学(てつがく)では、「理性」を「悟性」よりも上に置いたりしています。これは、理性的な人間のほうが上という考え方になるのですが、そのように、「理性が最高」というように考えていくうちに、“神様の首が斬(き)られる”ようになってしまうのです。そして、神がいなくても成り立つような世の中を考えるようになります。

そのように、理性を最高のものとして人間の営(いとな)みを考えると、これは先ほど述べたような、「AIで判断できる世界」になっていきます。理性だけで行けば、「AIで損得計算をして、どのように判断するのがよいか」といったことをするようになるのです。理性を最高だと思うと、そのようになっていきます。

これは、カントという哲学者が、本を読み、一人で思索(しさく)しながら考えた人であるために、多様な人間社会のなかで揉(も)まれていなかったことも多分に影響しているでしょう。

そうした哲学者は、数学や天文学のような、一人でできるようなものには関心を持って取り組みますし、それが、現代の仕事の一部でとても役に立つことは事実です。

(人間が“機械の補助部分”になりつつある現代社会)
しかし、現代のテレビドラマなどでも会社の場面で数多く見られるように、どの人もどの人も、机の上でパソコンを開いて仕事をしています。そういう姿を見ると、若干、人間が“機械の一部”として接続されてきているようにも見えるのです。

それから、道路を歩いていても、横断歩道を渡っていても、スマホやケータイを離(はな)さず、それで話をしたり何かをしたりしていないといられない人間が多くなってきているのを見ると、「今、機械に接続できるような人間になってきていて、自動的に心の分野が薄くなってきているのではないか」という危惧(きぐ)、心配があります。

現代社会の進歩は、より便利で速いものをよしとしていて、生産性を高めるような活動のほうに向かっていることが多いのですが、同時に、それが、人間の持っている根本的なものを失わせている可能性もあるのです。

要するに、そういう機械類がなければ生きていけないような人間が大多数になってきていて、みな忙(いそが)しく、能率よくやらないといけないわけです。

例えば、昔であれば、人と話をするためには、わざわざ歩いていって会わなければいけませんでした。それが今は、ケータイで連絡が取れます。

また、百科事典を買っても、それが置いてあるところまで行き、引っ張り出して広げ、なかを見なければ調べられなかった項目が、今はスマホをいじるだけで調べられるようになっています。

横断歩道を歩きながら検索してまで調べなければいけない理由があるかどうかについては、私はよくは分かりませんが、こうした状態は「スマホ中毒」とも言われています。

それから、学校等では、スマホやケータイの使用は禁じられることが多いようです。確かに、「スマホで調べれば、答えが出てくるではないか」ということであれば、「暗記をしたりする必要はない」という考えも出てくるでしょう。

しかし、「計算機を使えば、別に筆算などできなくてもいいではないか」ということで機械に依存(いぞん)しすぎると、人間の能力が若干低下していき、人間はだんだん“機械の補助部分”になっていくと思いますし、実際、そうなりかかっている面もあるでしょう。

---owari---
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