(転勤や結婚などの環境の変化がきっかけになる)
鬱になるのは、自分の置かれている環境が変化するときが多いようです。環境の変化が鬱のきっかけになるのです。
たとえば、子供時代から大阪で育ち、そのまま大阪で会社勤めをしていた人が、突如、生まれて初めて東京へ転勤になるとします。これは、傍目には栄転であり、周りの人たちも、そう言ってくれたとします。
ところが、本人は、「私は東京に住んだことはない。東京には修学旅行で一回行ったことがあるぐらいで、そのときは、人が多くて、まごついた覚えがある。東京は嫌だな」と思っていたりします。
それでも、周りの人たちが、「おめでとう」と言って送別会をしてくれるので、表向きは、「うれしい。これで、私も偉くなれるかもしれない」などと言わなければなりません。そう言いつつも、だんだん憂鬱になってくるわけです。
このようなことは確かにあります。このたぐいの経験がある人は多いのではないでしょうか。客観的に喜ぶべき状況でも、本人は、新しい環境に適応できるかどうかが不安で、憂鬱になるのです。
結婚も、喜ばしいことの一つではあるのですが、なかには結婚式の前日に蒸発する人もいます。あまりのプレッシャー、緊張に耐えかね、怖くなって、結婚式の直前に逃げ出すのです。
これまで一人で生活してきた人が、四六時中、他の人と一緒に過ごすというのは、大変なことです。はっきり言って、かなりのプレッシャーでなければおかしいのです。
親とだって、一緒に住めるのは子供時代だけで、大人になり二十歳を過ぎると、四六時中、一緒にいられるものではありません。いつも一緒にいたら、けんかばかりします。親とだって、そうなのです。きょうだいとだって、そうでしょう。一定の年齢を超えて、いつも一緒にいたら、けんかばかりするようになります。
ましてや、見合い結婚であれば、相手は、ついこの前、会ったばかりの人です。恋愛結婚の場合でも、なかには五年も十年も付き合うこともありますが、二、三年ぐらい付き合って結婚することが多いので、相手と会った回数は、それほど多いわけではありません。
そういう相手と、四六時中、一緒に生活し、子供を持ち、家庭を営んで、その後、死ぬまで、四十年も五十年も一緒に暮らせるだろうかと考えると、急に不安になって、そのプレッシャーに耐えかねる人もいるのです。
それで、結婚式の直前に、逃走、遁走する人もいれば、結婚式を終えて家に帰るや否や逃走する人もいます。これまでと違う生活へのプレッシャーに耐えられないのです。
確かに、「新しい環境になる」ということでは、転勤でもそうですが、結婚でもプレッシャーはかかります。それまでの二倍、三倍の圧力がかかってきます。
また、結婚して夫婦で暮らすだけであればよくても、子供ができるや否や鬱になる人もいます。子供がいないうちはよかったのですが、子供ができたら鬱になるのです。なぜなら、若いうち、結婚してしばらくのころは、仕事が忙しいことが多いからです。
子供ができると、大変です。子供は、未知なる生き物のようなものであり、言うことを全然きいてくれません。親の都合に関係なく、動き回ったり、泣いたり、物を要求したり、おなかをすかせたり、病気になったりします。そのため、子供ができて、すぐに鬱になる人もいるのです。
一人目の子供ができて鬱になる人もいれば、二人目ができて鬱になる人や、三人目ができて鬱になる人もいますが、それは、どこかで、その人のキャパシティー(能力)を超えるからです。夫婦の結婚生活だけで大変だった人は、子供ができた段階で、そうなります。
奥さんの方が鬱になる場合もあります。一生懸命、ご主人に尽くして、よい妻をしているつもりだったのに、子供ができると、能力的に、子供の世話とご主人の世話の両方はできなくなるわけです。
それで、ご主人の世話は全部捨てて子供にかかりきりになると、ご主人は文句を言います。両方を半分ずつにすると、どっちつかずで両方とも駄目だったりします。また、子供の世話のほうを捨てると、あとあと、ひどい目に遭うことがあります。親の愛が足りないと、子供は不良になって非行をしたりして、それなりに、いろいろと大変なことがあるのです。
そのように、客観的に見ると、結婚も、祝福されることだし、子供ができることも、ほめられることなのですが、それがプレッシャーになって、その段階で、とたんに鬱に入る人は、たくさんいるのです。
---owari---
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