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なぜ鬱(うつ)になるのか(前編・下)

2023年06月19日 | 人生
(経験していない未知なることへの恐怖)
「転勤が鬱のきっかけになる」と述べましたが、「昇進鬱」というものもあります。

平社員で仕事をしているうちは、「私は、なかなか出世しない」と思い、それなりに、ある程度の不平不満はあるのです。ところが、昇進し、たとえば、「四月から課長になり、部下を八人持つ」などということになると、「これは大変だ。どうやって部下を管理したらよいのだろう。どのような考え方が必要なのか、どのような能力が必要なのか、分からない。どうやって部下に仕事をさせたらよいのだろう」と思って、とたんに鬱になることがあります。

それまでは、自分が仕事をすればよかったので、「人を働かせて成果をあげる」ということは経験がないわけです。それで鬱になります。学校では、人を使って成果をあげる方法は教えてくれません。学校で教えてくれるのは、自分の勉強の仕方だけです。「人を働かせて成果をあげる」ということは、生まれてこのかた、やったこともなければ、見たこともないのです。

たまたま、事業、商売などをしていて使用人をたくさん抱えている家に育った人は、子供時代から、親が人を使う姿を見ていて、ある程度、人を使うことができる場合があります。

しかし、親がサラリーマンなどであって、親の働いている姿を子供時代に見ていない人は、どうやって人を使えばよいかが分からないのです。「私の父は、平社員のときは、どのような仕事をし、課長になったら、どのようの仕事のスタイルを変えて、どのように部下を率いたのだろうか。部下を集めて酒を飲んだりしたのだろうか。仕事の仕方としては、どのようなことをしたのだろうか」と思っても、会社へ行って見ていたわけではないので、まねができず、どうしたらよいかが分かりません。自分にとっては、そこで初めて行き当たることなのです。

もっとも、親が生きていれば相談することができますが、早いうちに親が死んでいる人もいます。子供時代に、あるいは大人になってすぐに、父親や母親が死んでいるという場合もあるのです。

父親が生きていれば生きていたで、息子や娘は、けっこう不満を持ち、「うちのおやじはろくでもない」と思うものです。しかし、そういう、くだらない父親であっても、生きていれば人生の節目に相談をすることができます。「就職する」「会社を辞めて転職する」「結婚する」「転居する」「子供ができた」「子供が進学する」などというときの相談相手として、いないよりはましなのです。

自分にとって未知のもの、経験がないものについては、親に相談すれば、たとえ答えが間違っていたとしても、何かアドバイスをしてもらえます。

「親のアドバイスを聴いて、その反対のことをすれば、正しい結果が出る」という親、ほんとうに見事に反対になる親もいますが、それでも、いないよりはよいのです。「おやじの言うことは、たぶん間違いだ。敗北者の人生を送ったおやじだから、おやじの判断は、ことごとく間違うはずだ。だから、おやじが言ったアドバイスと反対のことをやれば、絶対、成功する」と思って相談に行く場合もあるわけです。

母親が早めに亡くなっている場合、女の子は、きれいな女性に育ち、賢くて、よくもてたとしても、二十歳以降の振る舞い方、あり方は、なかなか難しく、けっこう大変です。どのような母親であっても、いてくれれば、それなりにアドバイスはしてもらえるのですが、自分一人だと、「どうしてよいか分からない」というプレッシャーはずいぶんあります。仕事の面においてもそうです。

このように、昇進など、環境が変化して、傍目には、その人にとってプラスのこと、人生の前進と思われることが起きているにもかかわらず、本人は鬱状態になることがあるのです。それは、ほとんど、経験していないこと、未知なることへの恐怖によるものです。それで鬱になるのです。

---owari---
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