私はあなたがたに言っておきたい。
あなたがたの多くは、まだまだ盲目である。
あなたがたの多くは、まだまだ、
この世のなかに隠されたる神秘と、その美に目覚めていない。
あなたがたの多くは、どうしても、
自分の身の回りにしか目が行かない。
そして、多くのものを見過ごしているのだ。
大地を歩くときに、その大地を見つめてみよ。
その大地をつくるために、
いかほどの歴史が刻まれているかを、
その大地のなかで、
どれだけ多くの生命がうごめいているかを、
見つめてみよ。
大地のなしている、大いなる仕事の数々を、
あなたがたは思い起こさねばならない。
そうして、あなたがた一人ひとりが、
この大地の上に、小さな家を建てて住んでいる。
そこに大きなメルヘンがある。
はるかなる上空から眺めてもみよ。
見渡す限りの大地に、
一つひとつの夢を託して、小さな小さな家が立ち並んでいる。
はるかなる上空から眺めてみるならば、
そこに住んでいる人たちの姿は、どのように映るであろうか。
そのなかに、一つの夢がある。
そのなかに、一つの生涯がある。
そのなかに、家族の営みがある。
そこに、ほほえみがあり、そこに、幸せがある。
それを、あなたがたは想像することができるだろうか。
一つひとつの小さな家のなかに、
素晴らしい語らいがある。
素晴らしい歴史がある。
素晴らしい物語がある。
愛し合った男女が一つになり、
子供が生まれ、その子供が育ち、家族が大きくなり、
また、新たなる者が、老いたる者に取って代わり、
そして、時代が進行してゆく。
しかし、すべてのものは、前進、前進、前進あるのみであって、
決して後退することはない。
あたかも川を流れ下ってゆく小舟のように、
すべてのものは、先へ先へと進んでいって、少しも退くことはない。
その家族の歴史を見てみるときに、
ああ、この大地に、
いかほどの幸福が生れていることよ。
いかほどの愛が生れていることよ。
それは、素晴らしいことではないだろうか。
そうして、目をさらに遠くに転じてみるならば、
大海原には船が浮かんでいる。
人類のロマンよ。
いかほどの昔に、人類は、
船をつくって海に浮かべることを考えたのだろうか。
いかばかりの昔に、
船に乗りて大洋を航海せんと決意したのだろうか。
そこに夢がる。
そこにロマンがある。
船に乗りて世界の果てを見んとした男たちの、
数限りない歴史がある。
そして、その船の下に、
数多くの生き物たちが生きている。
数万種の魚が、海草が、貝が、
さまざまな生命が生きている。
あなたがたは、海に興味を持ったことがあるだろうか。
そこにもまた仏の創造が隠されているということに、
気がついたことがあるだろうか。
さて、陸上にのみ生きて、海に興味を持たなかったとするならば、
あなたは、生涯のなかで、
何か大切なものを忘れていたのではないだろうか。
共に同時代を生きている生命たちのことを、
忘れていたのではないだろうか。
また、空を見上げよ。
空のなかでも、数多くの生き物たちが養われている。
鳥たちを見よ。
彼らが飢えたということを聞いたことがない。
彼らは、木から木へと、さえずりながら渡り、
どこからともなく飛んできて、
どこへともなく飛び去ってゆくものだ。
数多くの鳥たちよ、
あなたがたは、いったい何羽いるのだろうか。
百万でも、きかないだろう。
億だろうか。
いや、それ以上の数がいるに違いがない。
それだけ多くの鳥たちが、
飢えることもなく、
冬を越し、夏を過ごして生きていけることの素晴らしさよ。
それぞれの鳥たちが、
それぞれの巣づくりをし、
それぞれのひなをかえして、
そして生きつづけていくことの素晴らしさよ。
彼らには、何らの保障もない。
彼らには、人間と違って、
病気のときに助けてくれる者もない。
また、年を取ってからの社会の福祉も何もない。
彼らには何もない。
彼らには、経済もないであろう。
彼らには、政治もないであろう。
彼らには、軍事もないであろう。
彼らには、人間社会にあるところの文化すらないであろう。
しかし、彼らは、
飢えることなく、
千年前も、万年前も、そして、現在も、一筋に生きている。
「この大空を自分のものにする」という自由のために。
その自由をみずからの手に入れんとするがために。
その自由を決して放さぬために。
彼らは紡がない。
彼らは、人間の如く仕事に従事することもない。
彼らは、その自由を手に入れることのみを、
数千年、数万年のあいだ、待ちつづけてきたのだ。
はるかなる下で人間たちが大地を歩いている姿を見下ろしながら、
彼らが、いかに精神の高貴さを保っているかを、
あなたがたは知っているだろうか。
その自由に比べれば、
人間の自由などは、
はるかにはるかに劣ったもののように見えるであろう。
人間の生活さえも、劣ったものに見えるであろう。
人間たちは、大空を飛ぶのに、
あんな大きな金属の鳥をつくらねばならない。
お金を払い、荷物を運び、座席に座り、
そして飛んでゆかねばならない。
しかし、鳥たちを見よ。
彼らは自由自在だ。
枝から枝へ、大空へ、海原を越えて、そして次なる国へ、
自由自在に飛んでゆく。
この素晴らしさよ。
太古からある、この素晴らしさよ。
「仏は、すべての生命を平等に愛して、
それぞれのものに素晴らしきものを授けたのである」ということを、
あなたがたは知っているだろうか。
(仏法真理)
---owari---
読者登録ありがとうございます。
長い文章をうまくまとめられていますね。
私にはできない芸当です。
今後ともよろしくお願いします。