長女が生まれて初めての3月を迎えるとき、「お雛様を買ってあげて」と両親が送ってくれた「資金」を大事に抱えて、ひな人形を求めて出かけたのは、小雪の舞う寒い日だった。
お雛様は、団地住まいの私たちの暮らしには不似合いで、飾る場所もなく、かろうじて玄関の下駄箱の上に納まった。
娘たちが成長して、予算議会の準備で頭がいっぱいだった私は、一度、お雛さまを飾るのを省略してしまったことがある。
一番の下の娘が悲しんだ。
その残念そうな顔が忘れられなくて、娘たちがそれぞれの場所に巣立っていってからも、年に一度、ひな人形を飾り、しまうことを、さぼることはない。
昨年の秋、お雛様のいない3月3日を残念がった娘が、女の子を出産した。
初節句に、私の両親が私にしてくれたように・・・と思っていたら、「家のお雛様を送ってほしい」と言ってきた。それがパートナーの提案らしい。
私と娘たちを見守ってくれた、お雛様が、娘とその小さな人を見守ってくれるような気がする。
少し寂しく、そして嬉しい、私にとっては初めての3月3日です。
ところで、娘が飾って、桃の花を添えて送ってくれた写真。よく見ると、お内裏さまの烏帽子と刀がない。刀はなくてもいいよね。
そう思っています。