袴田巌さんの再審公判で「無罪判決」のニュースが飛び交った日。
良かった。
それにしても事件から58年。
死刑判決から44年。
この長すぎる時間。
「死刑囚」でなくなる日がきても、袴田さんが奪われた日々は戻ってはこない。
「再審法の改正を一日も早く」と改めて思う。
2022年12月議会で、泉大津市議会が採択した「意見素」の全文を、転載しておきます。
再審法(刑事訴訟法の再審規定)の改定を求める意見書
罪を犯していない人が犯罪者として法による制裁を受ける冤罪は、人生を破壊し人格を否定すると同時に、法制度自体の正当性を失わせることにつながる。冤罪はあってはならないと誰しも認めるが、無実の人が罪を問われることが後をたたない。
泉大津市でも各種報道に取り上げられた当時21歳の土井佑輔氏が無実の罪を問われた。彼は2012年8月に泉大津市内で起きたコンビニ強盗の疑いで逮捕され、300日以上も勾留されたのち、無罪判決を勝ち取ったが、土井氏本人や弁護人、彼を支援した家族や友人の多大なる努力によって無罪となった。
しかし、無実であるにも関わらず、罪を受けた人たちがたくさんおり、その人たちを救う最後の砦が再審制度で、2010年の足利事件に始まり、2016年、東住吉事件に至るまで、無期という重罰事件の再審無罪が続いた。2014年には、袴田巌さんが47年ぶりに死刑囚監房から解放されるという歴史的な出来事があった。
これら事件で再審開始が認められ無罪となる過程で、検察が捜査で集めた証拠を開示しないため、再審請求では、無実を主張する側から無罪証拠を提出することが求められる。ところが、証拠のほとんどは警察・検察にあり、当事者主義の名の下に開示義務がないとされ、しばしば捜査ミスを明らかにしない目的で無罪証拠が出されず、再審が棄却される結果となっている。検察手持ち証拠の全面開示がされれば再審開始となり冤罪は晴らされる。
再審でない通常の刑事裁判手続では、不十分ながらも一定の用件で証拠開示が制度化されているにも関わらず、再審における証拠開示には何一つルールがない。その結果、証拠が開示されるか否かは裁判官の個別判断や検察官の任意に委ねられており、一度有罪が確定すると覆すことが難しくなっている。再審における証拠開示制度の確立が、無実の人を救うのに必要で、現行の刑訴法の再審の規定は大正時代そのままで、長年改正されていない。
今年、土井氏は大阪府警の再捜査で、現場にあった犯人の指紋が見落とされたことが分かり、無実が明確となった。単なる捜査側のミスで無実であったにも関わらず、逮捕され長期間勾留され、人生を大きく変えられてしまった。土井氏は泉大津市で生まれ育った、普通の市民で、冤罪は報道でのみ知る身近ではない出来事のようだが、実際はどこに住んでいても誰の身の上にも起こりうる。無実の者を誤った裁判から迅速に救済するために、再審における検察手持ち証拠の全面開示などの「再審法(刑事訴訟法の再審規定)」の改正を行うことを要請する。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
令和4年12月16日
泉 大 津 市 議 会
送付先:衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、法務大臣