原油安とシェールオイル 各国の思惑 <地政学編>
http://the-liberty.com/article.php?item_id=8837
前回の経済編では、原油安における各国の経済的背景や影響について触れたが、原油価格の暴落は、国際情勢や外交にも影響を及ぼす。
サウジアラビアが、自国の外資準備金を減らしてまで原油価格の低迷に手を打たないのは、本当にシェールオイルつぶしと、市場のシェアの縮小を懸念してのことなのか。経済という視点のみで見るとその通りかもしれないが、原油価格の暴落には、政治的メッセージが隠れていることが多い。
実は、産油国であるイランはイスラム教シーア派が主導する国家だが、同国は現在、アメリカとの間で、核開発の協議を進めている。この動きにもっとも懸念を示しているのは、アメリカと手を組むイスラエルだが、それ以外で言うと、サウジアラビアのような、イスラム教スンニ派のペルシャ湾国家が挙げられる。
以前、サウジアラビアのアブドラ王は、アメリカの大使に「もしイランが核兵器を所持したら、我々もそうする」と発言した。その意味で、イランの核開発を止めたいアメリカとサウジアラビアの利害は一致する。
つまり、アメリカとイランの核開発協議が続く中で、サウジアラビアが意図的に原油価格を低く維持させ、イランの経済と財政に圧力をかけることによって、協議がアメリカ側に有利になるように誘導している可能性もあるというわけだ。
この仮説が正しければ、アメリカは、原油価格の低迷から起こるかもしれないシェールブームの崩壊と引き換えに、核開発問題で揉めているイランや、ウクライナ問題で揉めているロシアに対して、圧力をかけるために原油価格の暴落を黙認していると考えられる。
イランやロシアは、経済制裁の苦しみから逃れるために、中国などへ輸出先の多様化を図っているが、中国経済の失速と原油価格の低迷を考えると、財政を支えられるかどうかは分からない。
これらの国々が、経済的な課題と、地政学的・外交的な問題のどちらを優先させているかは分からないが、原油市場ひとつ取っても、こういった政治的な駆け引きが水面下で行われている可能性が十分にあるのだ。
ただ、各国の情勢から学ぶべきは、「わが国の経済は、石油のみで成り立っている」などという状態は危険であり、基本的に産業の多様化に成功している国が有利ということだ。アメリカでは、原油価格の低迷でシェールブームが終わったとしても、安い石油が消費の拡大や他の基幹産業を潤すため、石油の輸出のみに頼っている国に対して有利な立場に立てる。
日本でも、多くの企業が活躍しているが、もっと積極的に新しい産業領域に踏み込むべきだろう。アベノミクスの3本の矢でつまずいている「成長戦略」「規制緩和」を、航空・宇宙産業や防衛産業、新規エネルギー産業などの新領域で切り開いていくことは、経済の活性化だけでなく、安全保障上も、外交上も重要だ。(中)
【関連記事】
2014年11月29日付本欄 原油安とシェールオイル 各国の思惑 <経済編>
http://the-liberty.com/article.php?item_id=8833
2015年1月号記事 2015年 世界はこう動く 第2部 - 私はこう予測する! - アメリカ、中国、韓国、北朝鮮の行方
http://the-liberty.com/article.php?item_id=8762
2014年11月25日本欄 原油価格の低迷でシェールオイルの危機?
http://the-liberty.com/article.php?item_id=8804
2014年11月20日本欄 経済発展には国民の自由と自助努力が必要 ベネズエラがデフォルトに向かっている?
http://the-liberty.com/article.php?item_id=8748
バブル崩壊に向かう中国と日本の対応(2)[HRPニュースファイル1202]
http://hrp-newsfile.jp/2014/1863/
文/幸福実現党・京都府本部副代表 植松満雄
前回、1990年代の日本のバブルについて述べました。今回は中国経済の「バブル状況」は、どのようにつくりだされたのか、かつての日米の経済と比較しながら説明致します。
◆中国の投資資金はどこから来たのか?
中国は、北京オリンピック以降、過剰投資の資金をどうやって作り出したのでしょうか?
中国は、5カ年単位で計画経済(統制経済)を立てる国であるので、投資の元手は中央政府が一括で管理、規制しているために簡単に地方に資金が出ないのです。
また、2010年当時、中国人民銀行は、景気の過熱を抑えるために、金融引き締め政策を行ないました。
この時点から、資金を銀行から借りられなくなった地方政府は、「シャドーバンキング(影の銀行)」に頼るようになったのです。
地方政府は、「融資平台」という投資会社をつくり、証券会社などから資金を借りさせて、金融引き締めによる規制をくぐり抜けました。
その「シャドーバンキング」には二つあって、一つは銀行が企業に資金を貸し付け、その企業が他に高い金利で貸し付ける「委託融資」というものと、貸出債権を小口化した「理財商品」があります。
◆シャドーバンキングの市場規模?
そして銀行が年率10%もの運用利回りを謳って、「理財商品」を売り、投資家を募りました。集めた資金量は、2010年末で50兆円弱でしたが、2013年6月末には144兆円まで膨らんでいます。
シャドーバンキングそのものも2010年末に176兆円だったものが、2013年6月の段階で496兆円と実にGDPの6割となっています。(モルガン証券の調べでは7割とも)
それが今では、約半分の150兆円以上が返済不能(デフォルト)に陥っているのではないかと推定されているのです。
ちなみに、日本のバブル崩壊で発生した不良債権は50兆円と言われていますので、中国のバブル崩壊で150兆円の不良債権が発生すれば、日本を超える未曾有の不景気が起きる可能性があります。
◆中国のバブルと日本のバブルの違い
ただ、中国の不動産価格の推移や家賃の上昇率をみると、バブルというには程遠く、『最近の中国住宅市場の動向について』を見ると、2007年から12年までの5年間で、住宅価格の上昇率は30%にも届いていないのです。
一方、日本のバブル期(84〜89年)の5年間を見てみると、不動産価格は2倍近く上昇しています。
単純に住宅価格の上昇率だけを見ると、中国のバブルはさほど危険な水準では無いように見えます。中国の問題は、シャドーバンキング規制が遅れているため、不動産融資が止まらないことです。
中国の不動産価格上昇率が高くないのは、不動産が供給過剰となっており、住宅開発が多すぎて、需給バランスが崩れ、不動産の価格が頭打ちとなっているからです。
◆中国のシャドーバンキングと日米の経済
ただ、シャドーバンキングは、何も中国にだけの特有のものではありません。
2008年に起こったアメリカにおける「サブプライムローン問題」とも類似し、1989年頃、「財テクブーム」だった日本にもあった話です。
日本においては、証券会社が利回り保証(握り)として「営業特金」なる運用委託商品としてつくりだしたのですが、これを当時の大蔵省証券局が法規制したのです。
ここから日本経済が狂い始めました。当時の名目経済成長率は5〜8%でした。実質は4〜5%で、失業率は2〜2.7%、インフレ率は0.5〜3.3%。今から見れば夢のような数字です。
ここで、「バブル潰し」と称して、「金融引き締め」をやったことが日本経済をダメにしたのです。
バブルは土地と株式の制度上の欠陥があって価格高騰を招いたのであって、物価そのものは安定し、日本経済がハイパーインフレを起こしていたものではなかったのです、まったく不必要な政策でした。
◆今後、中国のシャドーバンキングはどうなるのか?
今後、中国で一つのシャドーバンクが破綻すれば、他の金融機関も貸し渋りが加速し、企業の連鎖倒産も増えるでしょう。
「理財商品」は、当然デフォルトに陥り、多くの中国人投資家が損失を被り、地方政府も多額の不良債権を抱え、財政破綻が相次ぐ事態となることは避けられません。
2014年3月の記者会見で李克強首相は、「中国の政府債務リスクは全体としては制御可能で、シャドーバンキングに対する監督管理を強化している」と発言しました。
中国政府が目標としている7.5%成長が維持できれば、銀行貸出も続けられますが、それが出来なくなると、官・民・投資家に至るまで、中国の経済主体のほぼ全てで崩壊に向けてのカウントダウンが始まることになります。
次回は、習近平政権の政策と、それに対する日本の対策を明らかにして参ります。
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国連という外圧を使って米軍の撤退を狙う翁長氏
当確の夜、翁長氏が「国連に伝える」とコメントしたのには理由がある。
国連の人種差別撤廃委員会は2010年、沖縄に米軍基地が集中していることについて、「現代的な形の人種差別だ」と指摘。同委員会は今年8月にも、日本政府に対し、沖縄(先住民族)の民意を尊重するよう勧告した「最終見解」を突き付けている。
こうした動きを受け、翁長氏は、反基地闘争を国連に持ち込み、日米両政府に"外圧"をかけようとしているのだろう。
他にも国連に対しては、琉球独立を実現させようとする左翼団体が、反基地闘争を隠れ蓑にして活動している。
また、本誌14年10月号でも報じたが、翁長氏は、琉球独立を目指す政治団体と極めて近い関係にあることも分かっている。
中国と"相思相愛"の翁長氏
翁長氏が掲げる県外移設で利益を得るのは、尖閣諸島を脅かす中国だ。それを裏付けるかのように、中国国営の新華社通信は翁長氏の勝利を速報で伝え、国営テレビも特集番組を組むなど、まるで自国の地方選挙を伝えるかのような報道ぶりだ(中国には民主的な選挙は存在しないが)。
那覇市長時代の翁長氏は、市内の政財界人などからなる訪問団を結成し、「中国詣で」を繰り返した。05年には、福建省福州市から「名誉市民」の称号を受けたほどの親中派。地元では、習近平・国家主席と近い関係を持つとささやかれている。
海を隔てた香港では、自由を守ろうとする学生たちの主張が、当局につぶされそうな状況だ(11月19日時点)。今春には台湾で、中国寄りの政策を進める馬英九政権に反対の意思を示すデモが50万人規模で行われている。
香港や台湾で起きている「自由の危機」は、地理的にも近い沖縄にとって対岸の火事ではない。国際的にも、中国の経済的・軍事的影響力が増すなかで、琉球独立論に関与し、中国にすり寄る新知事が誕生した沖縄は、また一歩「中国領」に近づいたと言える。
日本政府は辺野古への移設を推し進めるべきだ。