中国のGDPは嘘!? 中国ウォッチャー・評論家の宮崎正弘氏に聞く(2)
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中国が設立を目指すアジアインフラ投資銀行(AIIB)。経済面でも存在感を強める中国の狙いはどこにあるのか。
現在書店で発売中の本誌7月号の特集「2023年 習近平が世界を支配する」では、中国全33省を踏破してその内情をウォッチしている宮崎正弘氏にAIIBなどについてインタビューを行った。紙幅の関係で掲載できなかった、中国の内情についての内容を2回に分けて紹介する。第2回は、中国のGDPについて。
中国のGDPはあくまでも「作文」
――最近、中国の電力消費量などが落ちていまが、中国が発表しているGDPは7%の経済成長を示しています。なぜでしょうか。
宮崎正弘氏(以下、宮崎): あれは作文です。誰も信用していません。地方政府が完全に水増ししているし、統計の取り方もおかしい。私の推計では中国のGDPは今、日本と並ぶか、日本よりちょっとだけ多いくらいでしょう。
例えば、通常、GDPを構成しているのは、住宅投資を含む消費、民間の設備投資、政府の財政支出、貿易黒字です。中国の場合、住宅投資だけでGDPの12%あります。建設全部を合わせたら、投資だけでGDPの48%も占めます。つまり、この投資がなくなったら、中国経済は「ぺっちゃんこ」になるということです。
また、消費は相当ごまかしていますね。日本やアメリカの場合はPOSシステムを使ってデパートや大手スーパーで統計を取りますから、消費統計をごまかしようがない。一方、中国のそれは全然分かりません。
次に民間企業の設備投資。中国で設備投資している会社は、生産能力の2倍も投資しています。鉄工所も自動車工場も商品をつくりすぎて、マンションも空き部屋ばかり。
繊維産業もそうです。完全に過剰投資になっていますから、突然潰れる危険性もあります。それなのになぜもっているのかというと、まだ外国投資が続いているからです。
中国の嘘に騙された筆頭がドイツ、イギリス、韓国。ドイツのフォルクスワーゲンは工場を拡張して、2018年に中国での生産体制を年間500万台に増産するとまで言っています。
韓国の現代自動車も2018年に、年間180万台体制にする。すでに中国では、自動車は合計5000万台もの年間生産能力があって、2400万台しか売れていないにもかかわらず、です。ただ、2400万台という数字そのものはアメリカを超えていますから、大変なものです。
中国に外貨はほとんど残っていない
――中国は投資によってGDPを盛り上げているとのことですが、投資の元となるお金は、今まで貯めこんできたドルでしょうか。
宮崎: 外国からの投資です。過去20年間に年平均1000億ドル、合計で2兆ドル投資されています。それから間接投資としての株と不動産投資。この金がものすごくたくさんあります。
でもこうした株などのホットマネーは、すぐ退いてしまう性質のものです。中国の外貨準備高は公称で3兆8000億ドルぐらいありますから、中国経済は健全に見えますけれども、これは「張子の虎」です。
――つまり、海外投資が退いていったら……。
宮崎: もうおしまい。それ以前に、実は、不正に海外に持ち出された金が約3兆7800億ドルあるという調査結果もあります。公称の外貨準備高3兆8000億ドルから差し引いたら、僅か200億ドルしか残っていない。
一方で、中国は1兆2000億ドルの米国債を持っていますから、これを担保に他国から金を借りています。この半年だけで4000億ドルほど海外から借りていて、まだもう少しは借りる余裕がある。
しかし、例えば中国政府系の投資ファンドの金は、ほとんど残っていません。以前は日本企業の大株主として中国政府系の投資ファンドの名前がありましたが、今はない。5兆円の日本企業の株は売り払った気配が濃厚です。
経済破たんの次は、南シナ海紛争、あるいは……
――もし中国の経済が崩壊した場合、中国が取れる手段として、対外的な軍事行動を起こす可能性はあるのでしょうか。
宮崎: それは大いにあります。
――一番標的になりそうなのは、南シナ海周辺の国々ですか。
宮崎: まずベトナム、それから台湾も可能性はあります。あとは日本の尖閣諸島です。私が今、気になっているのは、ミャンマー国境。あそこが非常に"燃えて"いるんですね。
――ミャンマー国内では内乱みたいなものが起きていますね。
宮崎: ミャンマーが植民地だったときにイギリスに金で雇われていた少数民族が、反政府運動をやっています。その少数民族は金がなくなったから、中国から金や武器をもらって、ミャンマー政府への反乱を繰り返している。これがどうなるか分からないのです。
また、フィリピンともめている南シナ海のスプラトリー諸島やパラセル諸島の3つの人工島には、滑走路が2本できて、あと1本が完成間近です。これが完成したら、ここも紛争につながる可能性があります。(了)
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