ニュースを見ていると、安倍派事務所に家宅捜索が入ったとかで大騒ぎとなっているが、そもそも、政治資金収支報告書不記載ということで会計責任者の罪は問えても、それを議員などが指示したという証拠が無ければ議員を罪に問うことは難しいのではなかろうか。(そうやって隠蔽された金が、私的な用途で使用されていたとかであれば、議員を罪に問うことも可能かもしれないが、)それなのに、マスコミは騒ぎすぎであるかとも思う。もっとも、この件については、自民党の持つ構造的な利権体質というものが、再度、明るみに出されたということでは意味が大きいと思う。政治が、政党への寄付などで影響力を持っている企業・団体などに有利なように歪められ続けているということは、自民党という政党の宿痾とでもいうべき問題点であるとも思う。しかし、野党も野党で、自民党に取って代わろうかという気概が見えないような気がする。しかし、戦後からの日本社会は、米国の軍事的な保護国でもあり、西側体制の中で、利権と各勢力の妥協によって政治が運営されてきたというのも事実であり、そうだからこそ、自民党政権は、こんなことでは容易に潰れないのではないかと予想する。もし、潰れるとしたら、二世・三世の多い政治家達が、最近の消費者物価の値上がりと、実質賃金の目減りという事態を軽視し、見栄えの良い、実質的には効果の無い政策で国民を誤魔化し続けていることに国民が気付き、怒りだして、選挙で非自民党政党に投票を始める場合以外には無かろう。
デフ・ヴォイスというNHKBSでやっていたドラマを見て、気になったので小説も買って読んでみた。この小説は、ミステリーの要素も含まれているが、主題となるのは、主人公が、聾者の家族の中に生まれた唯一の健聴者であって、聾者側の社会にも入れず、かといって世間にも、家族のことを隠して生きているという、人間関係の挟間にあったということだったのではなかろうか。また、主人公は、警察事務員として長年勤務していたが、会計課の主任をしていた時に、各都道府県警察で当たり前のように行われていた、捜査費や旅費の水増し・架空計上によって作られている裏金のシステムに気づき、それを内部告発をしたことによって閑職に追いやられ、自主退職さえ余儀なくされ、妻とも離婚したという過去を持っているが、聾者の家に生まれながらも、家族の中で唯一の健聴者として世間との挟間に置かれたということでは、不正を行うことが当たり前のようになっていた組織の中で、敢えて内部告発に踏み切らざるを得なかったという葛藤を持ったことについても、何か共通するものがあったような気がする。
自民党の今回の騒動でも、政治活動に金がかかるということで裏金を作り、それに充てることが当たり前になっているということに関しては、日本社会にある、理屈があれば、必ずしも法律を守らなくても良いという、「赤信号、皆が渡れば怖くない。」的な空気感と、そういった社会に染まりたくないという反骨人がいて、しかし、結果的には、反骨人の方が疎外されるという社会の在り方、そんなことまで考えさせられるような気がする。