谷が二俣に分かれる辺りから積雪が見られるようになり、私たちは左側の谷の方へ進んで行きました。
傾斜はキツくなりましたが、まだロープを出す程ではありません。
スマホにダウンロードしたルートと、紙の地形図を見比べながら、目の前に広がっている谷や尾根、崖が地形図上のどこにあたるのかを地図記号や等高線の密度等を見ながら判断します。
次第に傾斜がキツくなり、積雪が氷のように固くなってきました。
いつしか私は会長の指示の元、腰のカラビナにロープを繋ぎ先頭を進んでいました。
凍った斜面に登山靴のつま先を蹴り込みながら、一歩一歩高度を上げていきます。
急傾斜の谷を、滑って足を踏み外さないようにしながら登っている途中で振り返ると、朝方は雪雲に隠れていた天狗峰が青空をバックに聳り立っている姿が目に入ってきます。
谷を駆け上がるように氷のように冷たい風が吹きつけてきますが、特訓を受けていた成果があったのか、私の中に不安は全くありませんでした。
ロープを使いながら岩と砂の谷を上り詰め、灌木の茂る尾根道に出た私たち5人は、やっとのことで根子岳南峰に辿り着きました。
登りはじめて5時間後のことでした。
南峰の頂上にたどり着いた私たち5人は、これまでの緊張から解き放され、歓喜の声をあげながら互いにハイタッチしました。
会長を含め今回のメンバー5人は、根子岳南峰山頂で記念写真を撮り、随分遅めの昼食をチャチャっと食べて下山したのでした。