NOTEBOOK

なにも ほしがならなぁい なにも きたいしなぁい

エンプティネス

2010-02-04 | 休み
「原研哉氏トークイベント採録」(くらしの良品研究所・無印良品)


やっぱデザインって哲学であり思想であり思考であり、究極的にシンプルに言うと説明なんだな。この日本の美意識の源流に関する原さんの「emptiness(エンプティネス)=からっぽ」という枠組みの提示ってさすがだなぁ。日本文化特殊主義とかすぐさま日本は凄いと言う礼賛に結びつける言説って大嫌いなんだけど、原さんの日本文化に対するまなざしは、これは単純に美しい。

デザインの授業とか受けたことないんで分からないけれど、デザインっていうのは思考であり思索であり言語なんだぁ。どういう意図で作ったのか、何を伝えたいのか、それを明瞭に伝えられるのが良いデザインなんだと。原さんのサインデザインとかを見ると非常にそう思える。だから駄目なデザインって言うのは形だけを真似ているので伝わるものはないし説得力も無いから駄目だと。


更新
(上記リンクより画像を引用)


「更新」というフレームを原さんはここで述べているんだけど、上がそれを図表化したもの。満たされたものではないからこそ保存ではなく、更新することで伝承を繰り返してきたと。西洋的な考えだと保存することは変わらず維持することだけれど、日本の場合保存することは同じものを維持し続けるのではなくて「更新」することで伝承すると。完全に同じものではないからこそノイズが混じって、それが繰り返されることで「国風化」に至ったと説明する。

「シンプル」と「エンプティネス」は似てるし共通するところあるけれど、異なると原さんは指摘。「シンプル」は中世までの王権時代からの脱却、近代市民社会以降の合理主義がもたらした、モノを機能と直線で結ぶデザインだったと。それに対して「エンプティネス」はどこにも定着しない八百万の神を入れるための思想から始まり、それらを入れるために「からっぽ」(=エンプティネス)だったと。「エンプティネス」には何かが入る余白がある。



思考が非常にストレートでつるっと入る。読んでいてとっても気持ち良かったです。1ページが多く、しかも5ページもある(そもそも1時間の講演の文字起しなので)けれど、それをしても読むべき講義録。