開発のQuantic Dreamの前作、『Fahrenheit』が面白いとの評判ながらも好みではなかったので『HEAVY RAIN』は買うつもり無かったのに、開発会社のギオームさんとかのインタビューを読んでいて、アマゾンであんまりにも安かったんで注文してしまった。結局アマゾンはキャンセルでゲーム店で買ったのだけど。そして結構売ってなくて数軒梯子。
―『HEAVY RAIN -心の軋むとき-』(SCE)
幼児連続殺人犯、シリアルキラーを追いかけるサイコサスペンスが話の本筋。そこに4人の登場人物のそれぞれの事情を描きつつ、それぞれに連続殺人犯を追うという正にハリウッドサスペンス映画の王道。プレイする前はシナリオはB級かと思ってたけれど、割と高度などちらかというとA級寄りのサスペンス。少なくとも「午後のロードショー」レベルは超えてるし、日本の最近のサスペンス映画よりは数段面白い。後半微妙だけど。
ただシナリオよりも何よりも注目すべきなのはシステム。QTEをより身体化(右、左、上、下などを各ボタン毎にファジーに当てはめて、キャラクターの動作を表現。例えば「歩く」という動作ではL1、R1を交互に押すなど)させたことで、従来のような「映像に合わせて単純にボタンを押すだけ」なQTEとは一線を画している。言い換えれば、ボタンを押すことに対して意味がちゃんとプレイヤーに伝わるようになってる。
しかも従来のQTEよりボリュームが多く、1つのシークエンスのQTEでかなりの入力をする必要がある。加えてこのQTEの成果でキャラクターの生死が左右されてしまう(≠ゲームオーバー)場面まである(しかも生死後もゲームは展開される)ので、必然にQTEに熱がこもらざるを得ない。さらにそういったシークエンスも高品位のリアルタイムデモで展開され、前述のQTEの身体性も相まって没入感やゲームとしての面白さも強い。
またQTEと対を成す、日常生活の些細な行為・行動までを表現する右スティックでのコマンド入力も当初はイロモノな機能だと思っていた。小便をする、髭を剃る、椅子に座る(特に意味は無い)などなど。車を運転するにしても、ドアを開けて乗り込む→シートベルトをする→エンジンをかける→シフトブレーキを解除→ギアを1に入れる、という一連の動作をコマンド入力して初めて車で出発することが出来る。
確かに最初はこんなところまでやる必要あるのか?と思うのに、プレイしていくうちに次第に慣れて、右スティックによるコマンド入力が自然の行為、必然的なものに思えてくる。慣れも有るんだろうが、最大の要因はこのコマンドの自然さだと思う。QTE同様に身体性にある程度連動するように設計されているので、コマンド入力であるにもかかわらず身体感があって単純なコマンド入力には無い没入感を生み出すことに成功してる。
移動が左スティックだけではなくてR2ボタンと右スティックを組み合わせたレースゲームみたいな移動システムだったりと、システム関係は多少人を選ぶところがあると思う。でも全体的には凄くプレイヤーの没入感を煽るような優れたシステム。そしてそれを結構高品質なリアルタイムデモで行われ、ムービーとQTE、調べるパートなどがシームレスに地続きになっているのでさらに没入感が高まる。本当に凄いし、面白い。
惜しむらくはマルチシナリオだからこその不整合。ゲームの構成としては5分から30分の小さなシークエンスを、4人の主人公を時系列に相互に切り替えられていくことで物語が展開される。だからこそ小さなシークエンスの結果が細かく物語に反映される、のだけれど、その際の問題として分岐が全て綺麗に繋がってるとは言えず、少なくない箇所で前後の科白がかみ合わない箇所があるのは、システムがこれだけ凄いだけに残念。
個人的な不満としてはやっぱりFBI捜査官、ジェイデンが使用するARIという調査ツール。文字通り、AR(現実拡張)を用いた操作ツールで、『マイノリティリポート』のごとく、現実の延長線上に仮想空間を映し出して操作資料を集めたり、捜査資料を閲覧できる。便利は便利だし作品に異なった彩を添えてはいるけど、本格サイコサスペンスの世界観にこういったSF要素は非常に違和感。作品世界を壊しかねないツールだと思う。
こういった不満が無いわけではないけれど、それにしても凄い完成度とクオリティ。何より面白い。期待していなかったからなのかもしれないけど、『アンチャーテッド2』に勝るとも劣らない没入感と興奮度。QTEに関しては、『シェンムー』や『竜が如く』、『ナルティメットストーム』、『God of War』など今までのどの作品よりも優れた完成度と面白さを兼ね備えてると断言できる。システムと演出のクオリティの完成度が高い。
ADVとしてもこれまでのテキスト型や探索型とも違った形を提示できてると思う。テキスト型ADVを3D化したようなベルトスクロール型とでも呼ぶようなスタイル。3D化されていて一見自由度が高そうで何でも出来そうで、迷いそうなのに出来ることは限られていて、プレイヤーはファジーに示された選択肢の中でゆるく自由に行動、選択することしか出来ない。でもそれをQTEなどで上手く表現してるので「やらされてる感」は少ない。
これにはキャラクターの人格は大抵のゲームではプレイヤーと=の存在なのに本作では決して=ではないことも少なからず影響しているかも知れない。L2ボタンを押すことでプレイヤーはキャラクターがその時点で何を考えているのか明示され、知ることが出来る。それはヒントという側面もあるけれど、キャラクターとの人格の乖離を示している気がする。キャラクターと”一体化する”というより、キャラクターを”演じる”に近い。
マルチシナリオにしても完成度が高い。くだらないアニメの焼き直しのような国内のゲームをするくらいなら『HEAVY RAIN』をプレイするべき。操作方法など人を選ぶゲームだと思うけど、それを補って余りある体験が出来ると思う。モーションコントローラの使い方はPS3のソフトの中で今までで一番上手い。吹替えもクオリティ高いし。
<画像参照>
―SCEJ、PS3「HEAVY RAIN 心が軋む時」日本正式タイトル決定! TGS 2009にプレイアブル出展 シリアスな現実と感情を描く“大人向け”なインタラクティブアドベンチャー(GameWatch)
―PS3ゲームファーストインプレッション「HEAVY RAIN -心の軋むとき-」(GameWatch)
―『HEAVY RAIN -心の軋むとき-』(SCE)
幼児連続殺人犯、シリアルキラーを追いかけるサイコサスペンスが話の本筋。そこに4人の登場人物のそれぞれの事情を描きつつ、それぞれに連続殺人犯を追うという正にハリウッドサスペンス映画の王道。プレイする前はシナリオはB級かと思ってたけれど、割と高度などちらかというとA級寄りのサスペンス。少なくとも「午後のロードショー」レベルは超えてるし、日本の最近のサスペンス映画よりは数段面白い。後半微妙だけど。
ただシナリオよりも何よりも注目すべきなのはシステム。QTEをより身体化(右、左、上、下などを各ボタン毎にファジーに当てはめて、キャラクターの動作を表現。例えば「歩く」という動作ではL1、R1を交互に押すなど)させたことで、従来のような「映像に合わせて単純にボタンを押すだけ」なQTEとは一線を画している。言い換えれば、ボタンを押すことに対して意味がちゃんとプレイヤーに伝わるようになってる。
しかも従来のQTEよりボリュームが多く、1つのシークエンスのQTEでかなりの入力をする必要がある。加えてこのQTEの成果でキャラクターの生死が左右されてしまう(≠ゲームオーバー)場面まである(しかも生死後もゲームは展開される)ので、必然にQTEに熱がこもらざるを得ない。さらにそういったシークエンスも高品位のリアルタイムデモで展開され、前述のQTEの身体性も相まって没入感やゲームとしての面白さも強い。
またQTEと対を成す、日常生活の些細な行為・行動までを表現する右スティックでのコマンド入力も当初はイロモノな機能だと思っていた。小便をする、髭を剃る、椅子に座る(特に意味は無い)などなど。車を運転するにしても、ドアを開けて乗り込む→シートベルトをする→エンジンをかける→シフトブレーキを解除→ギアを1に入れる、という一連の動作をコマンド入力して初めて車で出発することが出来る。
確かに最初はこんなところまでやる必要あるのか?と思うのに、プレイしていくうちに次第に慣れて、右スティックによるコマンド入力が自然の行為、必然的なものに思えてくる。慣れも有るんだろうが、最大の要因はこのコマンドの自然さだと思う。QTE同様に身体性にある程度連動するように設計されているので、コマンド入力であるにもかかわらず身体感があって単純なコマンド入力には無い没入感を生み出すことに成功してる。
移動が左スティックだけではなくてR2ボタンと右スティックを組み合わせたレースゲームみたいな移動システムだったりと、システム関係は多少人を選ぶところがあると思う。でも全体的には凄くプレイヤーの没入感を煽るような優れたシステム。そしてそれを結構高品質なリアルタイムデモで行われ、ムービーとQTE、調べるパートなどがシームレスに地続きになっているのでさらに没入感が高まる。本当に凄いし、面白い。
惜しむらくはマルチシナリオだからこその不整合。ゲームの構成としては5分から30分の小さなシークエンスを、4人の主人公を時系列に相互に切り替えられていくことで物語が展開される。だからこそ小さなシークエンスの結果が細かく物語に反映される、のだけれど、その際の問題として分岐が全て綺麗に繋がってるとは言えず、少なくない箇所で前後の科白がかみ合わない箇所があるのは、システムがこれだけ凄いだけに残念。
個人的な不満としてはやっぱりFBI捜査官、ジェイデンが使用するARIという調査ツール。文字通り、AR(現実拡張)を用いた操作ツールで、『マイノリティリポート』のごとく、現実の延長線上に仮想空間を映し出して操作資料を集めたり、捜査資料を閲覧できる。便利は便利だし作品に異なった彩を添えてはいるけど、本格サイコサスペンスの世界観にこういったSF要素は非常に違和感。作品世界を壊しかねないツールだと思う。
こういった不満が無いわけではないけれど、それにしても凄い完成度とクオリティ。何より面白い。期待していなかったからなのかもしれないけど、『アンチャーテッド2』に勝るとも劣らない没入感と興奮度。QTEに関しては、『シェンムー』や『竜が如く』、『ナルティメットストーム』、『God of War』など今までのどの作品よりも優れた完成度と面白さを兼ね備えてると断言できる。システムと演出のクオリティの完成度が高い。
ADVとしてもこれまでのテキスト型や探索型とも違った形を提示できてると思う。テキスト型ADVを3D化したようなベルトスクロール型とでも呼ぶようなスタイル。3D化されていて一見自由度が高そうで何でも出来そうで、迷いそうなのに出来ることは限られていて、プレイヤーはファジーに示された選択肢の中でゆるく自由に行動、選択することしか出来ない。でもそれをQTEなどで上手く表現してるので「やらされてる感」は少ない。
これにはキャラクターの人格は大抵のゲームではプレイヤーと=の存在なのに本作では決して=ではないことも少なからず影響しているかも知れない。L2ボタンを押すことでプレイヤーはキャラクターがその時点で何を考えているのか明示され、知ることが出来る。それはヒントという側面もあるけれど、キャラクターとの人格の乖離を示している気がする。キャラクターと”一体化する”というより、キャラクターを”演じる”に近い。
マルチシナリオにしても完成度が高い。くだらないアニメの焼き直しのような国内のゲームをするくらいなら『HEAVY RAIN』をプレイするべき。操作方法など人を選ぶゲームだと思うけど、それを補って余りある体験が出来ると思う。モーションコントローラの使い方はPS3のソフトの中で今までで一番上手い。吹替えもクオリティ高いし。
<画像参照>
―SCEJ、PS3「HEAVY RAIN 心が軋む時」日本正式タイトル決定! TGS 2009にプレイアブル出展 シリアスな現実と感情を描く“大人向け”なインタラクティブアドベンチャー(GameWatch)
―PS3ゲームファーストインプレッション「HEAVY RAIN -心の軋むとき-」(GameWatch)