ファーストアルバム、『Cult Grass Stars』はデビュー作らしくかなり荒削りです。もちろんそれはそれで大変に魅力的なものも多分に含んでいるのですが、中期以降例えば『Casanova Snake』以降の楽曲と比べると成熟さや洗練という観点からすると若干物足りないのが正直な所です。それはデビュー曲の「世界の終わり」も例外ではなく、チバの詩もメロディーも後期に比べるとストレートです。演奏もかなり簡単です。
初期のミッシェルのアルバムも好きです。好きですがそれはやはり中期以降の成熟と洗練には代え難い。楽曲の洗練や演奏技術の向上もさることながらチバの声。喉がつぶれたことでシャウトがとんでもないことに今の日本で一番シャウトが格好良いメージャーシーンのボーカルじゃないんだろうか。唸るようなボーカルをかなりの低音から引っ張り上げて、それでも飽き足らずそれを高音までシャウトで持っていってしまう。ここまで低音部まで音域が広いボーカルもメジャーでは珍しい。
そんな初期の楽曲も極まっちゃったメンバーが演奏すればどうなるのか。アップスケーリングされたかのように曲の構成の密度が上がり後期の水準近くまで楽曲を引っ張り上げてしまいます。ある種爽やかさを称えていたチバのヴォーカルも瑞々しさにとげとげしい苦さを持って所期の楽曲に新しい魅力を与えてくれます。その全てを最高の演奏で観ることが出来るのが今作最大の魅力です。そのままでも最高ですが、CD音源と聴き比べればもっとその凄さが体感できる凄さ。
―「ブギー 2003/10/11幕張メッセ」(Youtube)
『THEE MOVIE』にあったような異物は挿入されず、基本的に当日のライブを忠実に収録しています。幕張メッセのあの3つホールをつなげた箱に、むき出しのオールスタンディングで客を入れてライブをやるってやっぱりそれだけで格好良すぎです。しかも取り立てて特別な演出は無く、大してMCがあるわけでもない。ただライブがあるだけ。