NOTEBOOK

なにも ほしがならなぁい なにも きたいしなぁい

うぬぼれ刑事

2010-07-18 | 休み
久しぶりのクドカン×磯山晶ドラマ。クドカンドラマは人によって合う合わないが激しいけれど、ぼくはぴったし。一部やり過ぎなところもあるけど、それを補って余りある魅力がある。


金曜ドラマ「うぬぼれ刑事」(TBS)


自惚れているので、周りからも自惚れと呼ばれ、父親にさえも本名を忘れ自惚れと呼ばれている”うぬぼれ”さんこと”うぬぼれ”刑事。(クレジット表記も”うぬぼれ”)そんな”うぬぼれ”刑事は日夜女の子にモテることだけを考えていて、殺人事件の容疑者にも惚れてしまう。惚れた女性のことをよく知ろうと調べるうちに、徐々に容疑者の女の子が犯人であるのではないかという疑問を深めていく、という棚ボタ探偵という設定。

演出で”型”をしっかりと示すのでメリハリがあって気持ち良い。事件があって、うぬぼれが惚れる女性であり容疑者である女性に出会い、うぬぼれ4と恋愛相談と警察での捜査会議、そして気づきと父親と女性との面談。そして番組後半には基本的には埠頭で、うぬぼれが新郎のような白いスーツに身を包み、告白兼謎解き。

そして「水戸黄門」のような定型ラストシーン。うぬぼれ刑事は白いスーツに身を包みまるで新郎のように容疑者である女性の前に現れる。事件のすべてを悟ったうぬぼれ刑事は逮捕状と結婚届を両方握り締めて容疑者の女の子に詰め寄る。「結婚してくれたら、すべて」「犯した罪を含めて、全部あなたを受け止めます!」、「あなたを僕と結婚するの刑に処す!」それでも首を縦に振らない女の子に結婚指輪と手錠を突き出し、どちらかを選べと迫る。こんなくそバカなドラマは海外ドラマなんかじゃ決して見られない素晴らしいバカ。

小ネタが冴えてる。「最近、ツイッターを始めました。でも困ったことにあなたのことばかりつぶやいてしまう」という教授の台詞や「テレビなんて見ないですよね」、「見るとしたら『となりのトトロ』くらいのもんよ」この台詞。当初の予定だと第2話放送日の金曜ロードショーで『となりのトトロ』放送の予定だったのになぁ、もったいない!というかそこまで考えて脚本書いてるのか!?「ふざけるな!警察は探偵ナイトスクープじゃないぞ!」という台詞、よく考えたらうぬぼれの親父さんが局長だった。


でもバーにあつまる「うぬぼれ4」(後に「うぬぼれ5」)はちょっとキツイかなぁとは思う。特に矢作。ただクドカンドラマなので、一旦話を整理する”場”は「木更津キャッツアイ」にしても「マンハッタン・ラブストーリー」、「我輩は主婦である」にしても”場”から話が展開していたので仕方ないんだろうけど。恋愛マスター役の坂東三津五郎は凄いキャスティングだと思う。

あとミステリー部分。社内IDとSUICAのすり替えトリックは非常に現代的なトリックでトリックとして面白いけれど、結局はアリバイトリックでしかないので殺害方法自体は普通のサスペンスで見られる偶発的なもの。突き飛ばしたら物が落ちてきて…というやつ。そしてそれに付随する犯人の動機もよく見る感じのもの。これは女性犯人だから宿命的弱者としての動機なのか?そして第2話になるとトリックすらなかったし。

ドラマ自体には関係ないけど、第1話で被害者であるゲームクリエーターが宮本さんという名前で笑った。そしてそのゲームがマリオを禿げ散らかしたようなキャラだったり、会社名がマジソンというハドソンリスペクトなのにも。ロゴのフォントまでハドソンリスペクツ!クドカンの年代だからなんだろうか。社内のゲームのポスターにCEROマークが入ってたりと芸が細かい。


まだちょっと乗り切れていないかなぁとも思わせるけれど、クドカン脚本はスロースターターなので3、4話くらいからかなり面白くなるのかなぁと期待しております。そしてやはり2話目からテンポがものすごく良くなって笑い通しだったです。基本的には。ちょっとなぁと思っていたうぬぼれ5も段々と慣れてきた。執談ママの登場でうぬぼれ5の件りがテンポ良くなってきたし。


味わうべきはやっぱりミステリーではなくて、クドカンの小ネタ満載の脚本(それだけしかないかもしれない)をどれだけ俳優さんたちが体現できるかってことかもしれない。長瀬智也がうぬぼれを演じると説得力があるんだよなぁ。荒川良々も切れてるし、世田谷通り署の面々がとっても良いなぁ。