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このままじゃあ子どもの寝顔しか見られないんじゃあないかって、思う時期が確かにある。(ラーメン興亡3)

2006年10月05日 | 書いたもの
 マコトさんが、実の両親と縁が薄かったという話は聞いていた。
小さな子どもと接したことがなくて、赤ちゃん抱いたことなんか
一度もないや、って話していたのも知っている。
その話と現実のギャップを差し引いても、
マコトさんの息子の溺愛ぶりは、常軌を逸していた。
「ぬりかべ屋」を畳むという話まで出たほどだ。
実際、赤ん坊が生まれる前後を手伝ってくれた安さんがいなければ、
店は畳まれていたかもしれない。
 「未来」みらい と名付けられた男の子をマコトさんは本当に可愛がった。
子どもの写真をお店に貼るのはまだ許せるとしても、
鳴き声が聞こえると、客がいようとお構いなしに赤ん坊に駆け寄るマコトさんに
客はあきれかえった。
再び客足が途絶える。
 ユミさんの両親が未来をさらっていかなければ
本当にお店はつぶれていたかもしれない。
ユミさんの母親が放った一言。
「半端なラーメンしか作れない男に、娘を嫁がせた覚えはない」
そして父さんも。
「未来に誇れる仕事をしなさい」
二発のパンチを食らったマコトさんは、
三日経ってようやく立ち直った。目が覚めた。
その代わり、お店の営業時間が変わった。
客のあるうちは、遅くまで開いていたぬりかべ屋が、
8時の鐘を聞くと、暖簾をおろした。
早く閉まることで、店は前より長い行列をしょった。

マコトさんが人を好きになるとお店が変わる。
未来の誕生は、思いがけない方向にぬりかべ屋を引っぱっていくことになる。
コメント
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