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北海道米がおいしくないお米の代名詞だった時代が確かにありました。(ラーメン興亡6)

2006年10月15日 | 書いたもの
 米に当てがあった。ユミさんの実家が新十津川で米を作っていた。
 道産米は大学の生協でしかお目にかかれないという時代であったように思う。
北海道の農家自体も、自分が作る米に自信の持てない時代だった。
それでも、(当たり前のことだが、)おいしい道産米も存在した。
その状況は、今の日本のワインの状況に似ている。
おいしい日本のワインもあることはあったが、ともするとそのワインは、同じポテンシャルのフランスワインよりも高い。
けれども、おいしい道産米が、新十津川には確かにあった。
 マコトさんはユミさんの実家に頭を下げた。
「ぬりかべ屋」の評判を知っている新十津川も悪い気はしなかった。
三種類のお米がマコトさんに渡された。
 お米を食べてみてマコトさんはびっくりした。どの米もおいしかったのだ。
何より驚いたのは「冷めてもおいしい」ことだった。
 ご飯と塩だけで握ったおにぎりをもって、邦さんのもとへ行った。
「邦さん、これ冷めてもうまいです。」
 邦さんも頭をかきながら言った。
「なんだお前も、あれだ。おんなじ事考えてたのか。オレもおまえば、びっくりさしてやるべと思ってけど、おんなじだな。」
「ってことは」
邦さんがにやりと笑う「そうだ。冷めてもおいしいチャーシューのそぼろだ。」
「見せてください」
「ああ、食べてみれ。いやいやそのままでなくてよ。おまえのもってきたご飯ば、ボウルに入れてよ、チャーシューとかまかしてみれば、いいべや」
「あ、はい」
チャーシューのそぼろは、ご飯によくなじんで、すぐに三角のおにぎりができた。渡されたおにぎりを、邦さんが半分ちぎってマコトさんに渡した。
二人同時に食べた。
「うまい」二人同時に言う。すぐに邦さんが照れ隠しに言う。
「うまいけど、ぱらぱらこぼれるべや、はんかくさい。海苔でも巻けばいいんでないか」
怒ったように言いながら、邦さんは嬉しかった。みんなに知らせたくて、マコトさんは食べかけのおにぎりを持って大急ぎでぬりかべ屋に戻った。邦さんが残ったおにぎりを仏壇に供え、先だった奥さんと長いこと話していたのを、マコトさんは知らない。
コメント (2)
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