グリーンブレーカーズ by 高木肥料店

農業の現場の おはなしなどなど。

ヒラズがきたっ。

2020-01-30 02:07:49 | Weblog
ヒラズがきたっ。

多発するとハウス栽培のピーマンやキュウリなどの果実の品質、とく
に見た目に大きな被害を与えるアザミウマ類。そんなアザミウマの生
息数が極端に増えていたのが、ここ宮崎県です。

その生息数ですが・・・

11月末に県が発表した発生予察注意報によれば、過去10年間で最
も多い 10花当たり25.8頭! 平年の生育数は10花当たり
6.1頭 といいますから、ざっと考えても現在のところ4倍以上の
頭数が存在していることになります。 
“10個の花に対して1頭が寄生したしても防除が必要となる“という
アザミウマ類ですから、その被害たるやもう大変といってもよい状態。

 発生予察第5号 →    

そんなアザミウマの大発生の原因ですが、やはりなんといっても一番
の原因、それは気温が高すぎること。例年よりも平均気温で0.92
度も高いとなれば、ハウス外の虫の死亡率は低下するでしょうし、さ
らにハウス内に侵入してきた虫の生存率はあがっていきますものね。

そしてもうひとつ。

今回のアザミウマ大発生の原因は、アザミウマの種類が異なってい
たことがあげられます。
気温が高いという条件のもと[天敵のスワルスキーカブリダニで防除
ができる]ミナミキイロアザミウマだけではなく、ミナミキイロアザ
ミウマよりも身体が大きいヒラズハナアザミウマ もまた生き残り、
生息数を増やしていたのです。

こうなると大変ですよ。例年なら天敵を使うことでミナミキイロア
ザミウマを中心に防除すればよかったものが、そうもいかなくなる。
またアザミウマ対策として天敵を導入しているハウスでは、天敵類
の健康を考えて薬剤を散布する回数も減らし・散布できる農薬の種
類も限定して使用しているわけですから、そのあたりの管理状況も
また ヒラズハナアザミウマに有利にはたらいた。

結果として「天敵を導入しているハウスほどヒラズハナアザミウマ
の発生が多い」という状況になっているといいますから、ヒラズハ
ナアザミウマとしては してやったり。例年どおりのスリップス対
策を実施していることで安心していた農家さんたちの裏をかいて大
発生した・・・といえる状態になってしまったわけです。

さて、そこでそのように難敵のヒラズハナアザミウマ対策です。

主として花の内部で生活する[より薬剤がかかりにくいですよね]ヒ
ラズハナアザミウマですから、 ここはひとつ花の数が少ないとき
を狙って防除すること、これが防除のコツになります。加えてよく
薬が効くように展着剤も入れたいところですよね。また花に潜り込
みやすいという性質ですから、開花する花の多い生長点付近に、青
色粘着トラップなどを集中して仕掛けることなどもよい方法だと思
われます。
予察のでた12月はじめから依然として気温の高い状況がつづいて
いる南九州ですから、ここはしっかりと対策していきたいところで
すねよ。

ということで今回は、[同じアザミウマといえども種類がちがえば
対策も変わってくるのですから]天敵のあるなしにかかわらず、現場
の観察をよくおこなって虫の種類をよくよく確認し、そのうえで対
策を練っていくことが肝要である というお話でした。

それにしても、そもそもの原因はなんといっても予測できない高温
です。簡単にコントロールできる代物ではないので、これからもい
ろいろな現象を引き起こしていくのだろうと思うと、かんがえるだ
けで頭が痛くなってしまいます。。
ちなみに関連記事として、イチゴのタンソ病ににた症状をひきおこ
す虫、温暖化が引き起こす意外な虫の害についてのはなしはこちら​。


晴れ アザミウマ類の名まえの呼び方ですが、 当地ではミナミ
  キイロアザミウマを スリップス。ヒラズハナアザミウマ
  は ヒラズ 。 と呼ぶ方が 多いです。 ちなみに虫の
  名まえについてのはなしは ​こちら​。よろしかったら。。

51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg夢で終らせない農業起業」「 本当は危ない有機野菜 


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