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農業の現場の おはなしなどなど。

中世の騎士の甲冑のような鉄の鱗を持つ貝。

2021-05-31 18:55:28 | Weblog
中世の騎士の甲冑のような鉄の鱗を持つ貝。
2010年分ですが、次回関連で再掲載です。

 ↓

『中世の騎士の甲冑のような鉄の鱗を持つ貝』

この貝の標本と出会ったのは2006年江ノ島水族館・・・わたく
しはこの標本をみたときに、これはてっきり「オウムガイを鉄で模
したアート作品
」であるな・・・と勘違いしてしまいましたよ。

sk_hokudai_01.jpg

そう、みえませんか?

さらに外見とおなじように生態も独特。通常の巻貝は敵に襲われる
と殻の中に身を隠し蓋を閉めてしまいますが、この貝には蓋が無く、
鱗のある足を閉じることで自らの身を守るのだそう。

見た目と同じように硬そうと見て取れる、そのあたかも金属のよう
にみえる鱗から連想したのは、

そう中世の騎士の甲冑姿。51FKMVM8B7L__SL500_AA300_.jpg  

そしてこの貝の鉄の鎧の成分は見た目だけではなく、ほんとうに 
鉄分〔硫化鉄〕で、なんと磁石にも反応する。

鉄は実験などでは硫黄と反応して硫化鉄〔Fe + S→ FeS]と
なるのはわかっていることのですが、その化学反応を

 体内でおこなったうえに、その硫化鉄の成分で鱗を生成する

というのですから、この生物のすごさにはただただ脱帽もの。あっ
と、書き遅れてしまいましたが、この貝の名前はスケーリーフット。
和名をウロコフネタマガイ」といいます。

2001年に世界で初めてインド洋の深海にて採集・学術発表され
「硫化鉄の鱗を鎧のように身にまとった巻貝」として世界中で話題
になったスケーリーフット。世界の海の中でも、その地点でしか見
つけられていないという不思議なそして超貴重な貝であります。


晴れ  ここで・・・忘れてならないのは日本の飼育技術の巧みさ。
  深海でも高温域でもない大気圧下の常温で飼育することに
  成功し一般公開までしてしまうというのですから、これがま
  たなんのもまして素晴らしいですよね。。

51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg夢で終らせない農業起業」「里地里山複合大汚染



SDGsの6。日本もまた水不足に?

2021-05-28 22:12:08 | Weblog
SDGsの6。日本もまた水不足に?
SDGsの6である安全な水の努力目標の4・・・2030年までに全
セクターにおいて水利用の効率を大幅に改善し、淡水の持続可
能な採取及び供給を確保し水不足に対処するとともに、水不足
に悩む人々の数を大幅に減少させる・・というものがあります。
この努力目標をみて、ぁあ水不足に悩む国もあるのだなぁ・・
などという感想を持つと同時に、日本は水にめぐまれていてよ
かったなぁど思われる方も多いかと思いますが、農業現場や地
方などでは たびたび干ばつや大干ばつがおこっていることも
往々にしてある。今回はそんなケースについてのご紹介です。
その1『カッパの王国を襲った大干ばつ』
その2『日増しに からっぼになっていくダムの水』
その3『極端な多雨・少雨が増えている日本。』
その4『日本の水に関する内訳』
その5『自衛隊にも襲いかかった“渇水危機”』
という具合に、宮崎県から九州、日本の水というふうな、水に
ついての当ブログの関係の回の2011年前後の干ばつ時の回
の再掲載となります。「牛丼一杯を生産するのにも 風呂おけ
10杯分、量でいえば2トン超の真水が必要
になる」ともいわ
れているのが農業生産の世界・・・そんな現実を認識しながら、
よろしかったら ご参考に。



その1『2010年/カッパの王国を襲った大干ばつ』

宮崎はカッパの王国といわれるほどに、県内には複数の大小の
河川がくまなく流れ、水に恵まれた土地柄なのですけれど、そ
んな宮崎に、昨年から水不足の傾向が顕著になってきています。

3月下旬から早期水稲の田植がはじまった宮崎県では、深刻な
水不足に悩まされています。宮崎地方気象台によると県内は今
年に入って少雨傾向にあり、宮崎市の3月の降水量は32ミリ
で、平年の180ミリを大幅に下回っている。4月も降水量の
少ない状態が続く見通しを発表しています。

4月1日の地方紙はそのような渇水の状況を次のように伝えて
いました。

『宮崎県内で水不足の影響が出始めている。昨年夏からの少雨
 が今年に入っても続いているためで「これまでにない深刻さ」
(県河川課)。ダムからの緊急放流や農業用水の取水制限など
 でしのいでいるが、一部自治体で稲作などへの影響が出始め
 ており、まとまった雨が降らなければ上水道への影響も懸念
 される。』

と、いうもの。

 状況.jpg
 田植後の干上がった田と、水不足の状況を伝える新聞記事

そのような状態を受けて、宮崎県の河野俊嗣知事は7日、少雨
のため一ツ瀬ダム(西都市)と渡川ダム(美郷町)の有効貯水
率がゼロとなり、枯渇したことを発表、他のダムも枯渇が懸念
されるとして、農工業用水の大口利用者や流域自治体などに節
水を呼び掛けます。

その後4日8日。気象台の予報では、『県内全域でまとまった
雨が降る』との予報であったにもかかわらず、残念なことに結
果は少雨に。

この少雨を受けて県河川課は『県の管理13ダムのにおいて、
ダムへの降水量は1月は4%、2月は42%、3月は16パー
セントでしかなかった』 『県内のダム46カ所のうち、枯渇し
た一ツ瀬と渡川のほか別の4カ所も放流量を調整。今後も雨が
降らなければ1-2週間で最低水位を下回り貯水率がゼロとな
る見通し』と、いう深刻な水の状態を報告するに至りました。

・・・この時期のこの渇水は誰しも記憶にないところ。宮崎の
農家の間では50年、いや60年以上も実施されたことのない
“雨乞い”の儀式の話が取りざたされるようにまでなっています。
天候というもは皮肉なもの、昨年のいまごろは多雨による日照
不足がつづいていたのですから、自然というものは、つくづく
予測のつきにくいものだと 実感せずにはおられません。

さてそこで。農業の現場で生産に携わっている身としては、こ
のような日本の雨の偏りの傾向は、今後も継続していくものと
考えていったほうがよいかもしれません。


その2『2010年 日増しにからっぼになっていくダムの水』

ダム湖沿いの道を走りながらの森林浴を楽しんでいると、この
ような緑に満ちた光景が目に入ります。

 森林浴.jpg

しかし↑今年の5月の風景は、例年とは大きく違いました。

 下がる喫水線.jpg

それは喫水線の位置・・・ダム湖の水の量が甚だしく少かったの
です。

 ダム湖の異変.jpg


いつもの年であれば、木々の緑の下は ほどなく水面。ダム湖の
いま見えている崖、白く見える部分は 例年なら湖水に沈んでい
る部分となります。


 干上がるダム湖.jpg


建設当時に『西日本最大のダム』といわれた一ツ瀬ダムのダム湖
の、本年の貯水量が こういった惨状なのですから、今回の東九
州における水不足がいかに激しいものであったかが わかろうと
いうものです。

ご参考までに、もうひとつのダムの風景がこちら ↓ 。

         低水放流.jpg

上の写真は、ここ一ツ瀬ダムよりも北、大分県にある北川ダムに
関する5月21日付けの新聞記事です。
このように50年ぶりとも形容された大干ばつによって、東九州
各地のダムでは、史上はじめての低水放流を実施しなければなら
ないほどの貯水率の減少 という事態に見舞われているのです。

・・・一般的な国民の認識として、“日本は水に恵まれている”と
いうものがありますが、この認識はそろそろ改められてしかるべ
きなのではないのかと、そう思えてなりません。


その3『極端な多雨・少雨が増えている日本。』

日本の農業生産にとって大事な水の問題を考える場合に まず第
一に挙げなければならないこと、それは日本の降水量の変化につ
いてです。

気象庁の全国の51地点での継続した調査や国立環境研究所の調
査で、とくに西日本を中心にしたほとんどの地点で年降水量の変
動が大きくなっていることが報告されています。つまり極端な多
雨そして少雨の年が増えている。 →気象庁の異常気象リスクマ
ップは こちら 。→ 注.2021年現在版は ​こちら​。

そうなんです、

「水がほしいのに、降らない」
「水が過剰なのに、まだ降る」

こういった気象/降水量の変化は、作物の生長に応じて水を継続
して必要とする農業生産にとって、きわめて不都合な話しとなっ
てくるのです。

渇水の話しをつづけますと、
たとえば 「露地もの」の葉もの野菜を大面積で栽培する場合に、
50日を越す渇水に見舞われたとしたら農作物の成長不良や枯死
などの被害が発生します。それでもまだ生産できればよい方で、
これ以上に水の絶対量が不足した場合は ・・収穫がゼロになっ
てしまうという壊滅的な打撃を受けることになる。

現実におこったこのような干ばつ/渇水の例としては、1978
年から1979年にかけて起こった福岡渇水が語り草になっいま
すが、この場合には 5月から翌年3月まで続いたといいいます
から、生産に携わる身としては 想像しただけでもぞっとしてし
まいますよ。

そんな被害ですが、渇水による農業被害の金額がはっきり出てい
る例としては、1994年夏に起きた全国的な渇水で、特に被害
が大きかったといわれる四国の松山市を中心とする当時の5市1
4町4村のケースがあります。
7月はじめから10月下旬までつづいた干ばつよってもたらされ
た農水産業被害は、70億円を超したといわれています。

またこういった水不足/干ばつは、たとえば給水設備のととなっ
ていないことの多い大面積の露地野菜栽培の場合、生産にかかわ
る費用の増大が経営にのしかかることになります。
作物が枯れないように人手と経費をつかって かん水作業をおこ
なうわけですが、この1994年の渇水の際には、生産すること
に対して平年の約3倍もの費用が必要になったとされております。
こうなってくると収穫できたとしても往々にして採算はとれない
なんてことになってしまうのですから、これはこれで生産者とし
はやりきれない話だとおもってしまいます。。

まあしかし考えてみればです。

農業生産に多少でも回せる水があるならまだまし・たとえばもっ
と長い、2ケ月越える渇水が起こったとすれば、水の節約のため
水道用水が減圧給水や時間断水される事態もはじまってくる。。
そうなると工場の操業短縮や停止といった被害が発生するでしょ
うし、家庭生活において食事の用意ができない、水洗トイレが使
えないなどの大きな影響が及ぶことになる。

ここまでの非常事態に陥れば、野菜の生産やとくに水を必要とす
るイネ栽培を行う農業には回せる水がないといった処置がとられ
ることになるのでしょうね。

農業するものにとっては辛いはなしでありますけれど。


その4『日本の水に関する内訳』

「日本の農業は世界への農産物輸出を大量に増やせる」という説
があります。その説の裏づけになっているのが、「日本は水資源
に恵まれているから」ということらしいのです。そこで水の日の
本日8月1日。本当に日本が水資源に恵まれているのかを検証し
てみることにいたしましょう。

わが国の年間の降水量は、平均で約六千四百億立方メートルです。
そのうち約36パーセントは蒸発し、残りの約四千一百億立方メ
ートルが利用可能な水の量で、実際に使われている水の量は20
06年の取水量ベースでそのうちの八百三十一億立方メートル
〔ここですでに降水量の12パーセント〕となっています。

このような統計をみると、使用されていない水が多いように思え
てしまいますが、それらの水の一部は地下へ、そしてそのほかの
大部分の水は海へ流出していきます〔日本は山国であり、その急
峻な地形が影響しているためによけいに〕。

さて実際に使用されている 八百三十一億立方メートルの水の内
訳です。

用途別の使用状況〔2006年〕では、農業用水が使用される水
全体の66パーセントにあたる約五百四十七億立方メートル、生
活用水が19パーセントにあたる約百五十七億立方メートル、工
業用水が15パーセントにあたる約百二十六億立方メートルとな
ります。

こうみてくると農業生産のために必要な水の量が、いかに大量に
必要であるかがわかる数字ではありませんか。

そしてここでかんがえなければならないこと、それは現在の日本
は、もちろん時給率が3割程度の食料輸入国であるということで
す。そう、時給できていない7割の食料を輸入している国であれ
ばこそ、この約五百四十七億立方メートルの農業用水だけで事足
りている・・・そういった厳然たるという現実がある。

そこを忘れてはなりません。そこで結論ですが、

日本には大量に輸出するための農産物を生産する水資源はない

・・・これが農業の生産現場にいるものとしての意見です。

ちなみに輸入されるものの生産に必要とされる水の量についても
お知らせしておきましょう。いったいどれくらいの外国の水が使
用されているのか。
国土交通省の資料によれば・・・コメ・麦・豆・肉類に綿製品な
どだけでも約四百四十億立方メートルになるといわれています。

[主な輸入品の生産に必要な水量]

 水資源.gif

そう、繰り返しになりますが、日本に水がありそうに思えるのは
7割にも及ぶ海外からの食料のおかげ、もしその輸入が途絶える
ことになってしまったとしたら

 日本には農産物を自給できるほどの水資源はない・・・

のです。[水利組合などの弱体化などのマイナス要因もあること
ですし→こちら]残念ながら日本の水の将来は非常に脆弱な状況で
あるといわざるを得ないというのが実情だとおもいます。実際に
本年の九州の水稲作の植え付け時期には、大渇水が現実の問題と
なりました。

必要なときに降らず、不必要なときに大降りするもの・・・それ
が 雨。


その5『自衛隊にも襲いかかった“渇水危機”』

水の日の8月1日から、「日本は水資源に恵まれているわけでは
ない」という現実を、現場の話をお使ってお届けしたのですが、
そんな折・・・こんどは東京・硫黄島の水不足が深刻化しており、
『自衛隊は一部の隊員を引き揚げさせ、訓練も制限している。』
というニュースも発表されました。

ニュースは こちら です。

シリーズでお知らせしてきたこのブログの水不足に関する関連の
回はいじょうです。いわずとしれたことですが、日本は島国、そ
の日本という島が硫黄島のようにならないことを祈りながら、水
を大事につかっていきたいとおもいます。

余談ですが、「牛丼一杯を生産するのにも風呂おけ10杯分の、
2トン超の真水が必要になる」ともいわれている貴重な水をつか
って生産した農産物を大量に輸出している国々の水資源の将来の
ほうがむしろ心配になっちゃいましたね。

カリフォルニアとかオーストラリアとか干ばつと山火事は日常茶
飯事になってきているじゃないですが、それでも食料/水の化け
物を輸出する根性って、普通じゃない気がしませんか?



サツキが丸坊主にされるまえに。

2021-05-26 15:57:11 | Weblog
サツキが丸坊主にされるまえに。

梅雨の時分には、ひと雨ごとにぐいぐい伸びる枝葉とか下草とかに
注意がとられて、ついつい疎かになってしまうサツキの様子見。
葉がなくなって丸坊主にされた 昨年・一昨年の 苦い思いを胸に
今年はひまを見つけては駆除してきましたが、そんなに気をつけて
いたとしてもやっぱりいるのが、こちら ↓

   

ミノムシです。・・ということで2018年の被害を受けた時分の
回の再掲載です。 梅雨の前後の今時分の季節に、サツキなどの樹
の葉がなくなってしまう などという被害に心当たりのある方には
よろしかったらご参考に。

 ↓

『サツキを丸坊主にした犯人は/2018年6月分

じとじとと小雨が降りつづいた長い梅雨もおわって、ひと月あまり。

晴れ渡った青空のもとで、早朝の涼しいうちに事務所の剪定でもや
ろうか・・と、道具をもってお盆前の樹木の伸びを確認していたら

     

列に植えられているサツキに、葉がなくなって丸坊主になりかかっ
ている部分を発見[映像↑の左の映像が被害個所・右は健常部分]。

しまった油断した・・・とおもったときには大発生しているあの虫、
ミノガの仕業です。

     

ミノガとは もちろんミノムシ。

葉や枝を食べた残りくずで 幼虫の作る巣が、ワラ製の雨具である
蓑/ミノ[こなきじじいが着ているアレです]に 似ているために
ミノムシとよばれるようになったのであろうという、あの虫です。

 いったいどのくらいいればこんなに丸坊主にされるのだろう

と、ためしに被害個所の1本当たりの1センチ以上の大きさのムシ
を、ひとつふたつと枝から引き剥がしといったところ、約30匹く
らいのミノムシを捕獲しました。


    


農業用の害虫図鑑をひも解けば、

 発生は年1回・梅雨あけに新成虫が現れる

とされていますので、6月の中旬以降につぎつぎと孵化した幼虫が
2月弱あまりでおおきいものは3センチ強に育ったことになります。

そしてこのミノムシ。 特筆すべきは、その防除の厄介さです。

なんせ防水性に富んだミノを持つ。たとえ薬剤を散布したとしても
安全なミノのなかに逃げ込んしまうのでなかなか薬効がないのです。
さらには汎用性な食性も武器ということであり、75種の庭木や樹
木で発生し、ときにはヒマワリなども食害するというからビックリ
ですよね。

ということで、お庭の手入れが趣味のあなた。

梅雨明けてひと月のいま。お庭の一角に丸坊主になりかかっている
株はありませんか。もし存在/したとしたら、対処は いま。充分に
生長して被害が広範囲に広がらないいまのうちに、せっせとミノを
みつけて捕獲してまいりましょう。

ということで今回は、梅雨明けの爽やかなサツキの新緑を丸坊主に
した犯人は局所に大量発生するミノムシだった というお話でした。


晴れ  身の回りにある 手ごろなものでも、ミノを作るミノムシ。
  色とりどりの毛糸クズのなかに、蓑をはずしたミノムシを
  入れて毛糸のミノを作らせる・・なん遊びも以前は流行って
  ましたよね。

51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg 「夢で終らせない農業起業」「里地里山複合大汚染





フェニックス[不死鳥]という名前なのに枯死。。

2021-05-25 09:56:37 | Weblog
フェニックス[不死鳥]という名前なのに枯死。。

4月のはじめ。地元紙である宮崎日日新聞に掲載されていた記事
・・・ 日南市立油津小学校でシンボル的な存在となってていた
フェニックスの木が伐採された というものでした。


      

そう、宮崎県の県木に制定されているフェニックスの樹。今回の
この小学校の記事でもわかるように、たとえば図書館とか体育館
とか農業試験場などの教育施設や公民館とか自治体の関連施設、
くわえて民間の農協とか病院とか、さらには景観を大事にしてい
る公園はもとより風光明媚な観光地区の道路脇とか川べりとか、
あとお金持ちとか資産家のおうちとか/笑 とにかく宮崎県におい
てはいたるところに植えられており、県民にとっては幼い頃より
慣れ親しんでいて、いろいろな思い出がつまった宮崎を象徴する
シンボルツリーといってもよい植物であるのです。

だから

フェニックスの樹を絵に描いたり、木陰でかくれんぼやだるまさ
んがころんだ などをしたりしたなどといった経験をもっているこ
とであったろう油津小学校の子供たちは きっと
[なれ親しんだ学校のフェニックスの樹とのお別れは]さびしく感
じたことだったろうな・・・と、そうおもわずにはおられません
でした。

さて、そこでフェニックスです。もともとは不死鳥という名前が
つけられているほどに丈夫であるはずのこのヤシ科の植物である
フェニックスを弱らせた原因です。「昨秋頃から葉の色が褐変し、
年が明けた頃からはすべての葉が落下し、春を迎えた頃には立ち
枯れ状態にいたった」と学校関係者にいわしめた原因となったも
の、それが

ヤシオオオサゾウムシの存在[前回はこちら]です。

宮崎県とししてもチラシ↓なども使ったりした啓発につとめ、こ
こ10年以上にわたって対策をとってはいるのですが、なかなか
フェニックスへの加害を阻止することができない状態がつづいて
いるのです。

 チラシ →    

ちなみにそのヤシオオオサゾウムシによるフェニックスの被害状
状況です。もともと「約3千本のフェニックスを「県木」に指定
している宮崎県において、1998年にはじまる この虫の発見
確認以降の約10年間で枯れた木は累計で約650本」といわれ
ていました。その後 宮崎県は薬剤散布や防虫ネット&薬剤注入
で対応し民間による伐採には補助金を支出しているといった対策
をとっているとはいえ・・・
それから10年いじょうも経過した現在では、もっともっと被害
が広がっているものと考えられています。

いちど樹木のプロといっていい県林業技術センター技術者と話す
機会があったとき、これ幸いと この虫に対する見解をきいたこ
とがあるのですが、その方曰く 「ヤシオオオサゾウムシは一度
に何百個も卵を産み、さらには飛翔し生育域を拡大していくので、
これを根絶やしにするのはじつに難しい」と話されていたことを
鮮明に記憶しています、 残念ながら。

いじょう、今回はフェニックスという大樹を枯死させる難防除害
虫のヤシオオオサゾウムシのおはなしでしたが、この新聞記事に
ある 油津小学校のフェニックス伐採の映像あり とのことで、
仕事場やお家にフェニックスがある・・といった方や この虫の
生態に興味がある方は、この映像が公開されているうちにいちど
ご覧になったらいかがでしょうか[枯れかけた場合の対処法や運
悪く枯れた場合の処理経費の参考となりますし]。こちら​です。


​​晴れ 九州各地で広範囲に繁殖しているヤシオオオサゾウムシ。
  10年ほどまえに長崎西高校生物部の研究では
  「DNA解析した結果、宮崎・長崎各県の個体が同一系統
  である」ことが確認されています。・・ということは、
  はりこの虫の日本での確認は宮崎スタートで、その系統が
  拡散している
ということになりますから 大切にしている
  フェニックスをお持ちの方は要注意かと。

  51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg 「夢で終らせない農業起業」「 本当は危ない有機野菜


​​



​​​

オレンジ色の昆虫〔にくいやつ〕。

2021-05-20 16:11:41 | Weblog
オレンジ色の昆虫〔にくいやつ〕。
次回の参考に2010年分の再録です。
 ↓

   この昆虫 をご存知ですか。

この虫の名は ヤシオオオサゾウムシ・・・その名の表すとおり
に ヤシの木に巣くう、オオきい、ゾウムシの仲間。ゾウムシと
いうから小さいのかと思いきや、意外や意外カブトムシのメスほ
どの大きさもあるでかいゾウムシです。さらに目立つのは その
色でしよう、あざやかなオレンジ色の体色には、しょうじき驚か
されてしまいます。

このインドが原産だという ヤシオオオサゾウムシ 。

本土では 1998年に宮崎県で発見されたのち、1999年に
岡山県・鹿児島県、2000年に福岡県、2003年に長崎県と
三重県、そして、2004年には熊本県と、寒くない冬がつづく
とともに生育区域を拡大。2005年には淡路市でも みつかっ
ているように、急速にその生息域をひろげているようです。

そんな外来の昆虫であるヤシオオオサゾウムシなのですが、問題
は この虫がヤシ、とくに フェニックス・カナリエンシス(Ph
oenixcanariensis)を食害してしまうこと。ご存じのように南国
の象徴とでもいうべきフェニックスは、高さ10メートル超、幹
の直径が1メートルくらいの大きさはザラといった風情の巨大な
ヤシ科の植物ですから

 体が大きいゾウムシだけに、その餌になる植物もでかくなる

といったところなのかもしれません、ね。

さて、そのヤシオオオサゾウムシのフェニックスに対する食性行
動はつぎのようなものとされています。

 フェニックスの樹冠部に飛来
 ↓
 樹冠部に卵を産み付ける
 ↓
 卵からかえった幼虫は樹冠の内部を食い尽くす
 ↓
 成虫となり次の樹へ移動/分布を広げる

といった具合です。巨大なフェニックスだとはいえ、樹冠の成
長点を狙われるのでは たまりません。やがてフェニックスの
樹冠部は空洞状態となり、生長が停止。新葉はもとより、虫の
侵入の前からあった葉も、やがては枯れて終いにはすべての葉
が落ちてしまうことになってしまいます。
さらにこのまま、虫に対する対策がなにも講じられずに放置さ
れるとすれば最終的には樹全体が枯死し、そしてなにせ巨大な
樹体であるフェニックスなのですから 万一倒伏したとしたら
たいへんな事態を引き起こしかねない・・ということで、安全
性を考えれば、切り倒さなければならなくなってしまいます。

ということで ヤシオオオサゾウムシ・・・じつに厄介な虫だ
と いえます。

そのような最悪の事態をさけるために、ここ宮崎県ではこの虫
の被害を回避するため 次のような対策をとってきました。い
わく・・・

 ● フェニックス上部に漁網を巻き付ける〔成虫飛来を阻止〕
 ● 殺虫剤を散布して成虫の根絶をはかる

といった対策です。だけれども、ここでなんといっても問題と
なるのは、ここでもフェニックスの樹体の巨大さです。そうな
んです、その樹体の高さゆえに、こういった処置を講ずるため
には 必然的にクレーン車が必要になる(経費がかかる)。こ
のことも被害が拡大する一因となっています。

ちなみに宮崎市の農業系の大学内キャンパスにある65本のフ
ェニックスに上記の対策を施したケースでは

 クレーン車3台をつかっての、まる10日もの作業

が必要となったとされているほど[クレーンをつかった単純な
剪定作業だけでも1本で4万円かかる・・といいますからいく
ら経費がかかったのかかんがえるだけでも怖ろしい話です
]。
もちろん昔から観光にちからをいれていて、フェニックスをた
くさん植栽している宮崎県ですから対策を講ずるのは無論ここ
だけではなく、平成11年度以降の5年間に、国・県・市町村
や民間のフェニック
ス ・3353本について 同予防対策が
講じられた
というのですから、すごい[ただでさえ貧乏県なのに]。

が 困ったことにこういった対策がとられても、ヤシオオオサ
ゾウムシを根絶するに至っていないというのですから、なんと
も悲しい話ではありませんか。

さあそんなヤシオオオサゾウムシ、温暖化の進行とともに分布
をひろげているのが現実なのですから、 そのうち近い将来に、
あなたのお住まいの近くで、地上1メートルほどのところを飛
んでいるオレンジ色の大きな甲虫が見られる日がくる・・・・
のかもしれません。つづく。


​​晴れ 気候の変化のバロメーターともなりえる生物分布の
  変化。南方系の外来種は、確実に北進中です。

  51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg 「夢で終らせない農業起業」「 本当は危ない有機野菜


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