グリーンブレーカーズ by 高木肥料店

農業の現場の おはなしなどなど。

いまこそTPP大筋合意文書の正文に日本語を。

2016-12-29 12:06:19 | Weblog
いまこそTPP大筋合意文書の正文に日本語を。

「米国が政権交代期にある今、わが国こそが早期発効を主導しなけれ
ばならない
」「決して終わってはいない。保護主義がまん延しようと
している今こそ(TPPが)必要だ。」「結果を出す力を世界に示す」
などといった[域内2位の経済規模を持つ日本の実力を背景にしたと
おもわれる]安倍首相の力強い発言のもとで、さきの国会で採決され
たTPP交渉。

米国の参加で危ぶまれるなかで[この首相のご発言どうりに]日本が
残った参加国のなかでそれほどまでのリーダーシップがとれるもので
あるのなれば
・・・ここはひとつ

 大筋合意文書の正文に日本語を採用させる

という提案 も なされてはいかがでしょう。 もともと交渉の終盤
にあたっては “会議をリードしたのは日本”などと 甘利さんも豪語
していた
のですから、けして無理なことには思えないのですけれど。

想像ではありますが・・・日本の努力のおかげでめでたく発効した各
国の公文書上に堂々と日本語の文章が並ぶっていうのは、 なかなか
に壮観なことだとは思われませんか。そしてそれこそが早期発効主導
のメリット/国益を守ることだ ともおもえるんですけれど。

ということで、採決前の大筋合意文書の正文に日本語がないという
TPPのおはなしの再録は こちら。

 ↓ 

『あなたの職への、TPPの影響は?』

大筋合意文書の正文に日本語がないというTPP[英、仏、スペイン語
のみ
]。

交渉の終盤にあたっては “会議をリードしたのは日本”などと豪語して
いた甘利さんにしては、またTPP経済圏の中で米国に次ぐ経済規模を
誇る国であるはずの日本の扱いにしては、あまりに軽んじられた扱いを
受けているようにおもえてなりません。

そんな日本語訳がないTPPの大筋合意文書において心配になる のは、
5月下旬に発表された米国と日本との農業分野でのTPPの影響試算の
違いなのですが、それ以上に心配されるのが

 医療や投資や金融、サービス貿易全般
 さらには国有企業や電子商取引などこれまで貿易協定になかった分野


の国別の試算や解釈のちがいです。そのうちのひとつ「国民皆保険は守
る」と政府が繰り返し発言している医療についてですが、

 TPP発効後は、政府が薬価を取り仕切る今の制度は障壁だといわれ
 る可能性は否定できない。「医薬品の償還価格(日本では薬価)」の
 決定ルールについて将来、協議を行う

といった内容が、じつはしっかりと日米間の英文の交換文書に記されて
いるともいわれています[甘利さんの説明をききたいところですよね]。

さて、そんな英文のTPP大筋合意文書の日本語訳+問題点の分析報告
書が TPPテキスト分析チーム により発表されています。いろいろ
な業種にたずさわれているみなさまの職業や専門分野だけでもいちどご
覧になったらいかがでしょうか・・・ひょっとすると、 

 ある程度の補助や対策のある農業分野よりも、むしろ影響

といった可能性があるかもしれませんからね。TPPテキスト分析チ
ーム のページは こちら です。

ちなみに農業の実際の試算と解釈の違いの例となった5月20日の新聞
記事は こちら。

ののののの TPP解釈のちがい 日米

 → 参考資料として 「実際の法案処理は前途多難に」は こちら


◎ 交渉分野である「政府調達」。TPP発効後はこの入札手続
  きにも英語での公示文書を作る
ことが努力義務として課せら
  れるといいますから・・大筋合意文書の正文に日本語がない
  というのは、その予行練習だったりして。

51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg夢で終らせない農業起業」「本当は危ない有機野菜




牛ふん堆肥で生育障害。

2016-12-28 02:22:52 | Weblog
牛ふん堆肥で生育障害。

前回お伝えしたホルモン型除草剤「クロピラリド」を含んだ牛ふん
堆肥が原因とみられる農作物の生育障害。2005年に初確認され
たその生育障害が、いま宮崎県の県総合農業試験場や農家10戸で
発生していることを、12月16日の地元紙が伝えています。

     

この記事の概要は・・・

 県産スイートピー、ミニトマト国内で使用が認められていない
 ホルモン型除草剤を含んだ牛ふん堆肥が原因とみられる農作物
 の生育障害が、県内で発生していることが15日、分かった。
 除草剤は牛の餌となる輸入飼料に付着していたとみられ、県が
 把握しただけでも、スイートピーは県総合農業試験場と農家7
 戸、ミニトマト3戸で被害が発生。畜産物の安全性や人間の健
 康に影響はほとんどないとされるが、葉や実が変形し、苗が枯
 れた事例もある。被害農家は行政に周知徹底を求めている。


というもの。

これまでトマトやナス、ピーマンなどで発生していたことは確認
されていましたが、今回スイートピーでの発生は初確認 という
ことになります。

ちなみにスイートピーの被害状況ですが・・・被害の激しい農家
さんの例では 9月に苗を定植した13800本の苗のうちの約
5000本の植え替えを余儀なくさせられた・・・といいますか
ら、植えかえる苗代や人件費を考えればかなりの損害だといえま
すね。

そして注意したいのは、この除草剤による被害が 

 ● 共済の補償の対象外
 ● 国や県の支援策もない

ということ。 ということで、圃場に使用する有機物の種類や質、
そして使用量については、これまで以上に十二分な吟味が必要だ
といえそうです。 
 → 牛のおなかからでてくるものは の回 は こちら
 → 有機物の種類についてのおはなしは こちら。と こちら。 

◎ いわゆる風評被害を恐れてなのか、なかなか周知され
  ない傾向にある、こういった問題。今回は県総合農業
  試験場でもおこっているためにさすがに公表せずには
  いられなかったのかもな・・なんて思ってしまうのは
  ちょとかんがえすぎなのかしらん。

51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg 「夢で終らせない農業起業」「 本当は危ない有機野菜



過去にもあった、牛ふん堆肥で生育障害。

2016-12-25 02:32:47 | Weblog
過去にもあった、牛ふん堆肥で生育障害。


2009年に朝日新聞に掲載された『有機農法なのに農薬被害』
というタイトルの記事。生産地である宮崎県においても[こうい
った研究が発表される前に
]そのような症例をいくつか見聞きし、
実際に被害を目にしていただけに、けっこうインパクトがあった
記事だったと記憶しています。これ以降、生産県各地でも散発的
に確認されているクロピラリド障害だけに、ご参考までによろし
かったら。



『有機農法なのに農薬被害』

国内では使われていない除草剤が 輸入牧草を通じて国内の牛の
体内に入り、その牛のふんや尿から作った堆肥(たいひ)を使っ
たトマトやキクが生育障害を起こしていたことを、畜産草地研究
所などの研究グループが突き止めた。有機農法や資源利用型農業
として利用促進されている堆肥で想定外の汚染が起こる可能性が
示された。

 グループによると、長野県や愛知県などのトマトやミニトマト、
キクの生産農家の一部で2005年ごろから、牛の堆肥を使うと
葉がちぢれたり、実が細長くなったりする生育障害が起きること
が問題になった。

障害が起こる仕組み→ 図

当初は原因不明だったが、堆肥から日本では使われていない植物
ホルモン系の除草剤のクロピラリドが検出され、これで栽培実験
すると同様の障害が起きた。また、北米などからの輸入牧草から
も微量に検出された。牧草は、干し草が束ねられ輸入される。

クロピラリドは、人間を含め哺乳(ほにゅう)類には無害で欧米
などでは使われているが、残留期間が長く、日本では認可されて
いない。

農林水産省は因果関係が疑われた06年、都道府県に牛の堆肥の
大量使用で生育障害の恐れがあることを通知。その後、クロピラ
リドが含まれる可能性がある堆肥の判定法などの対策マニュアル
を作り、畜産草地研究所を通じて今年公開した。

農水省によると、クロピラリドの被害と思われる例は、06年に
5県で9件報告されたが、それ以降は確認されていないという。

↑ ここまで新聞記事。以上です。

◎ 過剰に施用すれば、たとえクロピラリドが残留していない
  フン尿たい肥であってたも環境に負荷をかけることなりか
  ねません。きちんと土壌検査して適正な施肥量を守るよう
  にいたしましょう。

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鳥インフルがおこると、車だって困る。

2016-12-20 11:52:09 | Weblog
鳥インフルがおこると、車だって困る。

宮崎で鳥インフルが連続したときのおはなしです。過去分の再録にな
りますが、家畜伝染病が[新型インフル誕生といった大きな話ばかり
ではなく
]一般市民生活全般にも影響を及ぼす例としてご参考までに
よろしかったら。



『悪夢ふたたび・・・それは1枚の回覧板からはじまった。』

車を大切になさっている方も多いと思います。大切な車に、たとえば
鳥のフンがついた場合は、どうなさいますか?

ほっとくという方や、直ぐに洗うという方など、対処方法は個人個人
で違うとは思いますが、たとえば車の販売会社のホームページでは、
つぎのような対処方法を指導
しているようです。

知っている方は多いと思いますが鳥の糞は強い酸性です。そして、
 車の塗装は基本的にアルカリには強いのですが酸性には極端に弱
 い特性があります。

鳥のフンには塗装を傷めるアルカリ成分が含まれているので、放っ
 ておくとシミやくぼみができてしまいます。乾く前なら水で流し、
 乾いてる場合は無理に取ろうとせずに、水分をたっぷり含ませ柔
 らかくしてから水で洗い流しましょう。


と、このように鳥のフンが酸性かアルカリかという問題がありそう
ですが、車の塗装を傷める可能性はありということになりましょう。
それでは・・これが鳥のフンではなく同じくアルカリ性や塩素系の
液体であれば、どうでしょう。大切にしている車に塩素系やアル
カリ性の液体がかかった場合の影響
はどのような作用を車体に
及ぼすものなのでしょう。

と、書くと、「車に塩素系やアルカリ性の液体がかかる」なんてこと
があるのかなと思われる方が大半であると思いますが・・・畜産県に
住んでいる場合は、そんな場面もいまや大アリなのですよ。
そう、口蹄疫や鳥インフルエンザの蔓延を防ぐために、こういった
畜伝染病の発生した道府県では一定区域内で消毒が実施される
からな
んです。

ちなみに口蹄疫被害のおこった宮崎県の自動車販売会社によると、
消毒液に関しての対処法
は〔問い合わせが多かったということで〕つ
ぎのような説明がなされていました。

塗装がはげた部分やタイヤのホイール内側はさびやすいです。塩素
 系やアルカリ性の消毒薬をかけた車両を放置すると、白い斑点がで
 きる恐れもあります。そうしたことを防ぐには、なるべく早く洗車
 するのが一番。消毒の前に車用ワックスをかけるとより効果的です


ということで・・・回数にもよりますが、1日に数回も消毒液がかかる
とやはり影響がある。そしてそのような状況を踏まえて、このおはなし
は 宮崎県のお花農家である私の友人のYくんのケースにつづきます。

車を人一倍大切にするYくんにとっての大問題となったのは、彼のお家
の場所にありました。お花を栽培している関係上、 彼の家のまわりは
養鶏場や牛舎が点在する田園地帯にあったのです。

そのために愛車が、消毒漬けになった。

通常の町への買い物はもちろん、こどもさんの送り迎え、作っているお花
の出荷に、車でいちど出ていくたびに最低でも2回、往復で4回も車が
消毒される道を通らねばならない
のです〔1日のうちに3回通ると12回
となりますよね
〕。
 
最初のうちは、家にかえるたび、まめに洗車していたYくんですが、
さすがに4ケ月もこの状態が続くと、次第に洗車をするのが億劫にな
っていったといいます。そして7月に口蹄疫被害がようやく収まった
のをよしとしたYくんは、昨年の10月に愛車を買い換えた
のです。

そんな昨日、鳥インフルエンザ発生を伝える新聞と前後して新車にし
たYくん宅の郵便受けに入っていたのは、非情にもこの回覧板の文面
でした。

  発生したとき.jpg 

なんと、口蹄疫発生時と同様にYくん宅に関係する生活道路における
消毒が、 鳥インフルの発生を告げるこの通達と同時にすぐに再開
されてしまったというわけなのです。


 チラシ.jpg 内容.jpg 


ということで

いま わたくしは・・・車好きで新車に買い換えたばかりのYくんのためにも、
そしてもちろん畜産農家さんのためにも、そして飼われているトリたちのため
にも、1日でも早い事態の収束を願っております



◎ 家畜伝染病は農業界ばかりでなく、いまやまわりの市民生活
  全般にも多大な影響を及ぼす・・・ということでもありますね。


51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg夢で終らせない農業起業」「本当は危ない有機野菜



ミネラルをやっても効かない時は。

2016-12-16 00:38:38 | Weblog
ミネラルをやっても効かない時は。K

ひつづきミネラルのはなしです。微量要素欠乏がでやすい今の時期の
参考としていただければ幸いです。

 ↓

「作物の栽培中に マグネシウム欠乏や石灰欠乏、ホウ素欠乏がおこ
 ったので、それらのミネラルを補給してみたのだが事態が改善しな
 かった。そこで翌年の作付けでは、ミネラル欠乏の起こる前にあら
 かじめ予防的にミネラルを補給してみた。しかし、それでもミネラ
 ル欠乏がおこってしまった」

などという、ご相談をうけることがあります。

こういった場合に考えられるのは、このシリーズですでにご紹介した
ミネラルの間の派閥争いのためと考えられます。そしてそれに加えて
もうひとつ。

 土のPHの影響

があげられます。じつはいくつかのミネラルは土のPHが中性である
7以上になると不溶化[水に溶けにくくなる]してしまうことで、結
果的に作物にされにくくなることがわかっています。そういう状況で
あれば当然のことながら

 予防的に使用しても作物に吸収されにくいために欠乏症状を示す

という状態になってしまうこともある。ちなみに下の図は、そのよう
な土のPHの影響下におけるミネラルの溶け具合をしめしたものとな
ります。

のののの 
ミネラルとPH

とはいっても、なかなかわかりにくい図だと思われますので簡単に
いえば

 ● 作物に必要なミネラルの多くは PH6.5で よく効く
 ● 土がPH7.0以上で、不溶化してくるミネラルが増える

といったかんじでしょうか。

実際のところ、ハウスの土の検査をいろいろな場所やいろいろな時
期に こなしてみれば、個人的には

 ● ミネラル不足は土がPH7.0以上の状態でおこりやすい
 ● むしろ成績の良いのは、PH5.5からPH6.5くらい
 ● 作物が小さいうちは、土のPHは、5.5くらいがよい

という見方・とらえ方を しております。

ということで今回は、ミネラル欠乏がおこる原因には[ミネラルの
あいだの派閥争い
だけではなく]作物の植えられている土のPHも
影響しているものだという、おはなしでした。

といことで次回は、その対策を。


◎ヒトの手にもやさしいのは微酸性・・・みたいな、そんな
  せっけん類のCMがあります。
  今回のはなしも、そんなかんじでかんがえるのもよきかもし
  れませんね。

51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg 「夢で終らせない農業起業」「 本当は危ない有機野菜