グリーンブレーカーズ by 高木肥料店

農業の現場の おはなしなどなど。

ウンカ。例年より早く飛来す。

2021-06-30 16:39:49 | Weblog
​ウンカ。例年より早く飛来す。

6月の野上農相の記者会見において「これからウンカ類の増殖に好適な
高温小雨の気候条件となれば、昨年同様に発生の拡大が懸念される」と
発表されました。農水省によれば6月中旬までにすでに9府県で飛来が
確認され、そのうちの8府県で例年よりもひと月ほど飛来時期が早かっ
たということで、注意が必要です。なんといっても2020年のウンカ
の被害は甚大なもの[昨年の新聞記事はこちら↓]。

2020年新聞→ 

中国・九州地方を中心に水田のイネが約半分が枯れてしまったという農
家をはじめ、なかにはイネが全滅したという農家に加えて、さらには自
家用のコメもさえ確保できないという農家などもいたほどの、深刻な被
害をもたらしました。 ということで当ブログのウンカの記事、19年
分と20年分の再録です。とくに早期栽培では出穂の時期をむかえてい
るということで、よろしかったら ご参考に。


2019年9月分/ミステリーサークル状の穴を作るトビイロウンカ』

水田のイネの穂がそろったあたりの時期から、あれよあれよというまに
イネの茎が灰白色になって株が倒れ始め、そのうちに遠目でもはっきり
わかるような円形の“窪地状の坪枯れ”ができる・・・
        

ちょっとした小型の “ミステリーサークル”のように、水田のあちこちに
陥没ができるのが イネの害虫であるトビイロウンカによる被害です。

         

その穴の大きさですが、今回の写真のケースでは 普通車のトラックが
すっぽりはいるくらい。ですから この虫の発生によるイネへの影響は
大きいものとなり[倒伏しない程度のイネにも発生していますからね]

 ● 収穫期の終盤ちかくの発生で  3割近くの減収
 ● 穂がでて30日くらいの発生で  5割近くの減収
 ● 穂がでてまもなくの発生では  収穫が皆無

という大被害をもたらすことになってしまうのが、現場でのイネをみる
とよくわかります[今回の写真は西都市にて09日に撮影]。

このイネの大害虫であるトビイロウンカ が、ただいま西日本を中心に
大発生。9月10日時点で16の都道府県で注意報や警報が発令される事態
となっていますよ。おそらくは 7月初めの台風などの温湿な南西から
の風に乗って海外から飛来した第一世代の子供たち が、繁殖したもの
だと考えられます。

このように、つぎつぎと世代交代して大繁殖していくトビイロウンカ。

早生種よりも晩生の品種・乾田よりも湿田・ウルチ米よりもモチゴメ
といった具合に被害が大きくなりますので、 心当たりのかたは水田を
よく観察し[成虫で5ミリ弱といったところ]、被害を発見されたとき
には出来るだけ早く関係機関の発表にそった対策を実施されるようにさ
れてくださいね。

なんたって、寄生されたイネは こんな状態 ↓

             

見るからに 痒そうでゾワゾワ してしまいます。


晴れ 病虫害被害を軽減するために大切になるのは、なんと
  いっても早期発見。被害にあったとして3割減収の場合
  では10アール当たり3万円。1haでは30万、10ha
  だと300万にもなりますものね~。これがもし壊滅なん
  て事態となったらなら、ぞっとします。・・ということで
  日常のこまめな観察ってやっぱり大切。。

 

2020年9月分/トビイロウンカ発生は今年も』

宮崎県病害虫防除・肥料検査センターは9月01日宮崎県の
全域の普通期水稲を対象にトビイロウンカの注意報を出しま
した。

「8月下旬に県内の41圃場を実施した圃場では、1株当り
 の虫数が平年の7.5倍の水準の10.69匹であった」
「なかには1日株当りの虫数が240匹を超えている圃場も
 あった」

ということで、過去最大のトビイロウンカ被害が起きた昨
年なみの状況[​こちら​]が引き起こされる可能性も充分に予
想されますから注意が必要です。

 

ちなみに 8月20日には佐賀県でトビイロウンカに対す
る警報、8月21日には大分県で警報、8月26日には鹿
児島県で注意報、8月28日に長崎県で注意報がだされて
おり、今後は昨年なみに九州の広い範囲で「爆発的に増え
る恐れがある」ことも予想されますから、
水田をよく観察し 産卵数が多い短翅型[たんし/羽が短い]
雌成虫がみられる場合には、すぐに防除されることをおす
すめします。あわせて昨年被害が大きかった場所も忘れずに
ですね。

ということで今回は、台風被害や塩害もだけれど トビイ
ロウンカの害も、忘れずに対処しましょうというおはなし
でした。


晴れ 弱った作物個体に集中してやってくるのが、虫
  たちの習性/たち。台風害で樹勢が弱ったいまこ
  そ注意&ケアが大切です。
  

 51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg夢で終らせない農業起業」「本当は危ない有機野菜




ぞろぞろイラガ。レッドロビンにも。

2021-06-28 15:49:31 | Weblog
ぞろぞろイラガ。レッドロビンにも。

​垣根ふうに、大切に育成している​ アカメガシ​。そんなアカメガシ
の葉の表面が、網目状に食い荒らされる被害が 立ってきました。
前回分は ​こちら​。

犯人は そう、おそらくは イラガです。イラガの幼虫。。

網目状になっている被害葉の周辺の葉の裏面を注意してみていくと
・・いました・いました。

   
     

まるで 航空母艦の甲板にきれいに配置された艦載機 のように、
びっしりとすきまなく整列している イラガの幼虫の群れです。

彼らがもう少し大きくなって分散して生活するようになると防除
も厄介・・・ということで、発生初期の今の時期のまとめて防除
をこころがけています。

ちなみに6月中旬の点検では、背丈よりやや高い大きさ30本横
並びに植えたアカメガシの場合で、ざっと見で上記の写真程度の
イラガの群れた葉5枚ほどを発見し駆除しました。

そして、今回の6月下旬の駆除作業。
大切なことは、なんといっても長袖での駆除作業を心がけること。
です。

だって

   

体長5ミリ程度の個体であっても、こんなかんじでがびっしり。

ということで今回は、イラガは群れている状態の発生初期のうちに
うっかり刺されないよう注意にして、まとめて駆除するのが楽 と
いうおはなしでした。

・・それにしてものイラガの群れ。お互いに刺しつ刺されつなんて
ことはないのかなあって、ついつい思ってしまうんですけれど/笑。


晴れ そんなイラガの成虫の姿。スターウォーズの人気キャラで
  ある ボバ・フェット。 彼の愛機である スレーブ
  の カラーリングと型に似ている個体がときどきあって、
  そんな個体をみつけたときには かっこいいな と 思い
  つつ、ほれぼれと見とれてしまうんですよね、これが。


51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg夢で終らせない農業起業」「里地里山複合大汚染」 






そろそろイラガ。

2021-06-28 15:47:37 | Weblog
そろそろイラガ。

剪定ばさみを使って クスガネモチの樹形を整えていたとき ・・・

       

右手の薬指付近に一瞬 ビリリ、 その後に ひりひり とした刺激。


      

      

イラガです。


  

電気が走ったような刺激を受けた場所をよくみると、そこには☆の形
に整列した、まだ長さ1センチにも満たない若齢幼虫期のイラガたち。

“小さいうちはそれほど棘がない” とはいいますが、それでも患部は
ひりひりひり 。 別の部分の葉をよくみると、樹の そこかしこ
にも 小集団が。

      


農業においての、たとえば果樹の成木園などでは大発生しない限り生
産上の実害はそれほどない・・といわれるイラガ類ですが、農作業中
に幼虫の毒針に触れて刺されると、気分的に厭世ってかんじになるの
で、やっぱり対策は必要でしょうね。

ということで今回は、 そろそろイラガ というおはなしでした。


晴れ  独特なのがイラガ類の繭。​こちら​。 芸術的でもあり
  土俗的でもあり、これがなかなかに魅惑さセます。
  
 
 
51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg夢で終らせない農業起業」「里地里山複合大汚染」    

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タコを食べてイネの豊作を願った日。

2021-06-21 17:20:04 | Weblog
​​タコを食べてイネの豊作を願った日。
『夏至からはじまり半夏生〔はんげしょう〕までに田植えを終える』
という、昔ながらの農作業の目安があります。

夏至は6月21日、そして半夏生は7月2日ですから・・・いまの暦
で わかりやすくすれば

 6月21日から田植えを始めて、7月2日までに田植えを終える

ということになります。

そしてそんな田植え作業が終わり、農家の方がホッとする 半夏生の
日にタコを食べて豊作を願う
という
風習が、西日本の農家にはありま
した。

 ​なぜにタコなのか​

ということなのですが、これは一説には

 ​8本あるタコの足のように、イネの根がたくさん出てほしい​

という、農家の願いを表したものといわれていますよ。

同時にこの風習は、田植えという農作業の作業で疲れた身体を、この
時期にちょうど旬となる地物のタコを食べていたわろうとした農民の
知恵でもあったようですよ。 “半夏生から5日間は農作業を休みと
した”なんて話も地方によってはあるようですし。
 
そんな話を聞くと・・・昔の農作業の行事や風習って、なかなか合理
でもあったんだなって、思います。
 
と、いうことで今回は 普通作の田植えも一段落たところで、

 いまは機械があるので楽になったけれど、昔の田植えは大変な重労
 働だったのだろうな

と昔の方のご苦労を思いつつ旬なタコを堪能ながらのおはなしでした。


晴れ 刺身・酢ダコ・天ぷら・タコ飯などなどで、獲れたての
  地ダコを、農作業が一段落したあとの充実感とともに堪
  能する
・・・農家であることの醍醐味ですよね、これっ
  てじつに。
 
51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg  「夢で終らせない農業起業」「里地里山複合大汚染」​​




SDGs。日本について考える。

2021-06-18 23:13:33 | Weblog
SDGs。日本について考える。

このままの状況がつづいていくと今の世界の持続は不可能になる。も
う地球は耐えられない、だから本格的で根本的な変革を地球上のひと
りひとりがおこしていこう・・・
ということで国連で2015年に採択されたSDGs。このSDGsを達成
するための目標は、開かれた場所で女性や子ども、先住民や労働者に
NGOや民間企業等多くの人や団体が議論に加わって作り上げたもの。
国連や各国政府そして企業が勝手に決めたものではないという
性質のものであるのです。いち例をあげれば 途上国の人々が劣悪な
環境下や低賃金で働かされることで、先進国の人たちが利益を得たり
するといった不公平の是正も大切な課題のひとつとされています。だ
からこそ地球上の一人ひとりが当事者であり、誰ひとり取り残さない
というコンセプトが掲げられているというわけですね。
そんなSDGsに関連するはなしとして 当ブログの2009年7月に
挙げたわが日本国についての回があります。世界のエネルギーや食料
を、金にあかして無秩序ともいえるかたちで輸入してきている日本で
はありますが、その為に失われたものもおおきかったというおはなし
ですが、よろしかったらご参考に。

 ↓

『昔話で日本をかんがえる/2009年7月分』

昔話のおきまりですね、山へ行くおじいさんと、川へいくおば
あさん。そうです、昔は山と川でいろいろなものが手にはいっ
たのです。食料や肥料に燃料、それに工芸品の材料など生活に
必要なものはほとんど山や川で手にはいったのです。

桃太郎を少し説明してみましょう。

たとえば、おじいさんのおこなう「柴かり」。これは芝生を
かることではありません。
このおはなしのなかの柴とは、小枝や木のこと。おじいさんは、
料理をしたりお風呂をわかしたりするときにつかう燃料を山に
とりにいっていたのです。そしておじいさんはいろいろな木を
植えた「雑木林」や材木用の山をつくり、そこから炭の原木や、
紙の材料となる木、家の材料となる木などを手にいれていたに
ちがいありません。

おばあさんもそう。川の水は洗濯だけではなく飲み水や料理を
するときにつかえましたし、川の流れは粉をひく水車の動力や、
さらには交通手段としても使用されたのです。

それだけではありません。「かぐや姫」のおじいさんは竹山を
つくり、世話して、その竹山から取れる竹で、おはしやカゴや
ザルなどといった竹でできた道具をつくっていました。そうそ
う、もちろん春にはおいしいタケノコももちろんたべていたこ
とでしょう。

このように、ひとびとの生活を支えてきた山や川のある場所は、
里山(さとやま)とよばれ大事に管理されてきました。そして、
その里山につながったひとびとの暮らす場所や田畑を、われわ
れ日本人は里地〔さとち〕と、よんできたのです。

ヒトの作った里地と里山には、畑や水田やしっ地、ため池、草
地、落葉広葉樹林などのさまざまな場所が作られ、そのさまざ
まな場所にはそれぞれの場所に住むたくさんの動物や植物がヒ
トとともに生活していました。カチカチ山のウサギやタヌキ、
サルカニ合戦にでてくるサルやカニ、そしてそのほかのむかし
ばなしにでてくるたくさんの生き物たちです。そこには美しい
森と清らかな水の流れがありました。牛や馬といった家畜も、
田畑を耕す労働力として、家族同様に里人に大事にかわれてい
たものでした。

そんな里山が変わり始めたのは昭和40年代になってから。
まずは 燃料の主役が石油やプロパンガスに変わってきました。

新しい燃料は、炭焼きのような苦労をしないで得られるため、
町はもちろん、里地や里山にまでふきゅうするようになったの
です。たくさん外国から輸入される木材で住宅を作るヒトがふ
え、山にうえられていたスギやヒノキも売れなくなりました。
プラスチックやビニールの普及で、わら製品や竹製品も売れな
くなります。里人も、農業のかたわら輸入されたエサを使い・
狭い場所でたくさんの食用となる家畜を飼うようになっていき
ます。作物に施すために落ち葉や野草でつくられていたたい肥
も、たくさんでる家畜のフンにおきかえられました。外国から
たくさん輸入される食料のため、里山でつくられていた農作物
は半分以上も売れなくなってしまいました。
たくさんの家畜のフン尿や外国から輸入される食料ののこりの
ために日本の土は次第に肥えていきました。
そのために川は汚れ、川では炊事はおろか洗濯までできなくな
っていったのです。

こうして里山は人々から見捨てられ、やがて ますます大きな
家畜飼育用の施設や作られなくなった田畑がふえていきました。
山々の木々が伸び放題になり、人々が次第に近づかなくなって
しまいました。里山にたくさんのいたはずのいろいろな種類の
動物や植物もいつのまにかいなくなります。
五穀豊穣(作物が豊かに実ること)を祝うお祭りや、ご神木であ
る木にまつわるお祭りをとおして、長く里山をみまもってきた
鎮守の森の神様もきっとさみしくおもわれていることでしょう。

さて、里山と里地は死んでしまったのでしょうか。一度失われ
た里山と里地は復活することはかなわないのでしょうか。
いえ、希望はあります。

少しずつ暮らしを変えていけば
きっと里山と里地、そして美しい森と清らかな水の流れはよみ
がえることでしょう。
そこでは昔話で登場してきたたくさんのいろいろな種類の動物
や植物もたちも、里人といっしょにきっと笑顔で生きていける
はずです。