山頭火つれづれ-四方館日記

放浪の俳人山頭火をひとり語りで演じる林田鉄の日々徒然記

ひとりの火をつくる

2004-11-12 05:15:23 | 文化・芸術
Hitomaro_10-1.jpg

被災地に無情にも追い討ちの雨が降る。

今、午前4時過ぎ、
ここ大阪では昨日来の雨が、
先刻よりひときわ激しく降りつづいている。
ネットの天気予報を開いて見た。
四国では豪雨で土砂災害の警告も出ているようだ。
この激しい雨が、余震が続く新潟の被災地にも、
まもなく、無情にも降り注ぐにちがいない。
新潟・中越の被災地に、とくに知人や友人が居る訳ではないが、
窓外の激しさを増す雨音に気は揺すぶられ心は塞ぐ。

今夏からうちつづく天変地異、
毎週のように襲来した大型台風と激しくも過酷な地震災害に、
人事を超えた天災ゆえに、怒りの拳も振るえず
人という存在の無力さのみがクローズアップされてくる。
ただただ、無事に過ぎ行くのを祈るしかないのが、
なんとも悔しく歯噛みするばかりだ。

酷い雨、惨い雨、
日本中が泣き出したくなるような暗澹たる気に包んでしまうような雨だ。

けふも一日だれも来なかつたほうたる

2004-11-12 02:38:08 | 文化・芸術
manas_tetsu_031.jpg

山頭火のモノローグ

 九月一日、今日は関東大震災の記念日、――
一瞬のうちに東京という大都会が焦土と化した、あの日、――
あの日のことを考えると、自分のだらしなさがはっきり解る。
―― あの日、わしは湯島を焼け出され、
友のいる早稲田へたどり着いた。
 社会主義者の大杉栄と、その妻野枝らが、憲兵隊本部に連行され、
憲兵隊長甘粕正彦によって絞殺されたのを知ったのは、ずっとあとのことだ。
―― 重い空気が充満していた。―― 
郷里のある者はひとまず帰ろう、まず東京から逃れることだった。
早稲田に身を寄せてきた友のなかに木部というのがいた。
その木部が、知人の家に預けている荷物を取りに行くという。
わしともう一人、三人で出かけた。―― 
その相手、高津正道が憲兵隊のブラックリストに挙げられていたとは知る由もなかった。――
わしら三人は、憲兵達に捕らわれたのだ。――
 一言の尋問もされないまま、わしらは巣鴨の刑務所に送り込まれた。
鉄格子の向こうでは、怒鳴り声と人を打つ竹刀の音が一晩中鳴り止まなかった。――
 
わしは留置場の中で恐怖に打ちのめされていた。
‥‥ うずくまったきり、言葉を失っていた。―― 
さいわい内務省に勤めていた知人の計らいで、わしの嫌疑は晴れて釈放されたが、
‥‥ 心は、広漠たる焦土と化した街の姿そのままにすさみ、無常の闇に包まれていた。

   
 ‥‥ あれから十三年、―― 浮いたり、沈んだり ―― 
 わしはいたずらに放浪し、苦悩してきたに過ぎないのではないか。