山頭火つれづれ-四方館日記

放浪の俳人山頭火をひとり語りで演じる林田鉄の日々徒然記

おちついて死ねそうな草萌ゆる

2004-11-19 09:40:32 | 文化・芸術
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山頭火のモノローグ

松山の友はみなこのわしに親切すぎるほどだった。――

御幸(みゆき)山の麓、御幸寺境内に
わしが最後の棲家一草庵を調えてくれた。
高台にあって閑静で清らか、市街や山野の見晴らしも佳い。
殊に和尚さんに人を得て、この上ない。―― 
六畳と四畳半、台所も便所もほどよく、
水は前の方十間ばかりのところに汲揚ポンプがある。水質は悪くない。
焚き物は裏山から勝手に採るがよろしい。
東向きだから真っ向陽が昇る。月見には申し分ない。―― 
東隣りは新築の護国神社、
西隣りは古刹龍(りゅう)泰(たい)寺、
松山銀座へ七丁ぐらい、道後温泉へは数丁。―― 
すべての点において老残のこの身には過ぎたる棲家だ。


わしは感泣して、この親切に甘えた。