山頭火つれづれ-四方館日記

放浪の俳人山頭火をひとり語りで演じる林田鉄の日々徒然記

鉄鉢の中へも霰

2004-11-26 16:44:10 | 文化・芸術
ichibun98-1127-094-1.jpg

山頭火のモノローグ<最終篇>

わしはの、放哉のように、
底の抜けた柄杓というわけにはいかなかったが、―― 
いわば、社会の疣みたいなものですよ、―― 
たとえば、顔に大きい黒い疣があるとすれば、
それは邪魔にもなろうが、
小さい疣なら邪魔にはならないでしょう。―― 
時には愛敬を添える疣なら、―― 


その疣だと思って、
堪忍して下さい、―― よ。



  うしろすがたのしぐれてゆくか

  生死の中の雪ふりしきる

  わかれてきた道がまつすぐ

  涸れきった川を渡る

  ぼうぼううちよせてわれをうつ

  笠へぼつとり椿だつた

  てふてふひらひらいらかをこえた

  鉄鉢の中へも霰