
山頭火のモノローグ<最終篇>
わしはの、放哉のように、
底の抜けた柄杓というわけにはいかなかったが、――
いわば、社会の疣みたいなものですよ、――
たとえば、顔に大きい黒い疣があるとすれば、
それは邪魔にもなろうが、
小さい疣なら邪魔にはならないでしょう。――
時には愛敬を添える疣なら、――
その疣だと思って、
堪忍して下さい、―― よ。
うしろすがたのしぐれてゆくか
生死の中の雪ふりしきる
わかれてきた道がまつすぐ
涸れきった川を渡る
ぼうぼううちよせてわれをうつ
笠へぼつとり椿だつた
てふてふひらひらいらかをこえた
鉄鉢の中へも霰