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名も無きねこに

仏検二級 二次試験終了

2009-07-20 22:23:01 | 仏検二級二次
午後からのにわか雨も予報されている湿気を孕んだ空の下、
御茶ノ水駅のホームに降りるとセミの鳴き声が聞こえた。
わたしの住む所ではまだ彼らの声を聞かない。
都心の方が暑いのだろうか。
そんなことを考えながら、プリントアウトした地図を頼りに
汗だらけでアテネ・フランセに到着したのは、
集合時間の十分前だった。
NHK のテクストに掲載される広告で建物の外観は知っていたが、
中に入ってみると、
あちこち古びた、大学の校舎のような様子が意外だった。

七月十二日以降、二次試験当日まで、
勉強らしい勉強は結局ほとんどしなかった。
録音しためておいた『ディアローグ三銃士』を
流し放しにしてフランス語に耳を慣らすことと、
あとは会場に向かう電車の中で、
先週作成した 6 ページ分の答案を読んで、
使いそうな表現をある程度覚えていっただけだった。

通された控え室で待機している受験者は、
大半が女性で、男性は十人に二人程度だ。
持参したノートに目を通す者や、
他の受験者と談笑する者など様々だが、
試験前の張り詰めた空気を漂わせているのは共通していた。
集合時間になると係員は受験者を集め、
二次試験に関する簡単な説明をして、
面接が行われる階に移動した。

日の光の差し込まない地下通路に置かれた椅子で、
自分の番を待つ間、気持ちが高ぶっていくのを感じた。
経験上、適度な緊張は良い結果に結びつくことが多かった。
待機中に感じている緊張も良い兆候だった。

案内係の男性が面接の行われる教室の戸口に立ち、
室内の人物に何かを確認して頷き返すと、
わたしに入室を指示した。

とても小さな教室に二つテーブルが並べられ、
それぞれに、明灰色のスーツを着た年配の日本人と、
薄い黄のポロシャツとオリーブ色のショートパンツ姿の
フランス人が座っていた。
どちらも和やかな雰囲気の男性だった。
挨拶をすると着席を促されたので、Merci といいながら
室内中央に置かれた椅子に腰掛け、バッグを足元に置いた。

フランス人男性はわたしの名前を確認し、
どこに住んでいるのかと尋ねた。
口調は穏やかで、話す速度も予想より遅い。
内容も想定範囲内だ。
わたしが答えると、さらに、
住んでいるところに満足しているかと問われた。
答えは予め練ってあるので、
多少言葉に詰まりながらも、これにも応答できた。

すると、別のトピックに関する質問をされた。
わたしの応答が短すぎるからなのか、
それとも試験官たちの方針のためか、
それ以降、複数のトピックに関する質問がなされた。
一つの話題について掘り下げて話をするのかと
予想していたので、これには少し戸惑った。
順番は思い出せないが、覚えている限り、
質問されたのは以下の話題に関してだった。

住んでいる所
街の様子
家事を好むか
ペットの有無
夏と冬のどちらを好むか
フランス語の勉強法
職業
今晩の予定
スポーツをするか
なぜこの試験を受験したのか

十の質問の内、仏検の受験動機だけは答えを考えていなかった。
準二級を受験して自信がついたので、
と答えになっていないようなことを言っているところで、
ドアがノックされた。
別れの挨拶をして席を立ち、部屋を後にした。
2009 年度春季仏検二級はこうして終了した。

廊下に出ると、肩の力が抜けて行った。
緊張しつつも、押し黙って詰まってしまうことは避けられた。
自分としては出来る限りの応答をした。
一階に通じる階段を上りながら、
そのことにささやかな満足を感じた。


帰途、新宿の紀伊国屋に立ち寄って
『新しい仏文解釈法』(山田原実, 大学書林, 1963) を買った後、
電車の中で二次試験について反省を廻らせた。

時折、言葉に詰まりそうにはなったが、
ほとんどの質問に答えられたのは、
先週作成した解答案を
ある程度頭に入れていったからだった。
実際、まったく考えたことのなかった最後の質問は、
答えるのに苦労した。
フランス語でどう表現すべきか、
予め考えているのと考えていないのとでは、大きな差がある。
過去問を分類して、
トピックごとの解答を作成した成果はあったといえる。

また、聞き流す程度でも四六時中流しっぱなしにしていた
NHK の『ディアローグ三銃士』も、
二級二次試験と程度が似通っていて幸いだった。
自分の答えについてさらに考えを述べようとするときや、
話と話の間に入れる接続詞など、
その場で思いついて多少なりとも使うことが出来たのは、
この番組のおかげだ。

一方、作成済みの解答案にある文しか思い浮かべられずに、
わたしが口にした答えが質問に対する応答として、
微妙な食い違いを生じさせていたという認識も
面接中に感じていた。
単純に ne ~ pas で答えられそうなものを、
aucun, e を多用してしまったり、
冠詞を付け忘れたりなど、文法的に誤った答えも多かった。

今回の試験の合否が判るのは来月だが、
秋季二級を再受験するにせよ、しないにせよ、
今後の学習で、聞く・話す練習には、
より労力を割かなければならないのは間違いない。
明日からまた、勉強法を模索しつつ、
新たな目標を検討する。
コメント (4)
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