猫とドクガ

 今年は、庭の山茶花の木にチャドクガの幼虫が発生した。葉っぱの上に、数十匹がびっしりと仲良く並んでいる黄色と黒の毛虫で、この毛虫の毒針毛が肌につくと、非常に激しいかゆみの症状が出るらしい。毛虫本体だけでなく、抜け殻に残った毒針も効力が長く持続するそうなので厄介だ。前に勤めていたところの駐輪場に山茶花の木があって、そこにもチャドクガの毛虫がいたらしく、同僚の腕が大変なことになった。たまたま敏感性だったのかもしれないけれど、腕が一面、肩にいたるまで赤い湿疹に覆われて、「こんなになっちゃったんですけど」と腕をまくって見せられた私もびっくりした。チャドクガの毒針毛がもしついた場合には、ガムテープをくっつけて取り除くのがいいらしい。
 そのチャドクガがいっぱいついている山茶花の木の下で、みゆちゃんは平気そうに座っていた。毛虫に刺されないかしらと心配したが、とくに、どこかがかゆくてかきむしっているような様子もない。猫は体を毛に覆われているから、大丈夫なのかしらと思った。
 先の同僚は、毛虫の木には近づかなかったといっていたので、もしかしたら毒のついた抜け殻が風に飛ばされて付着したのかもしれなかった。抜け殻が風に乗って、庭に干している洗濯物についてはかなわないので、山茶花の毛虫と、毛虫が食べたあとの葉にくっついていた抜け殻は、あらかた除去したのだけれど、やっぱり完璧にというわけにはいかないので、そのうちの何匹かは成虫になった。それが、ときどき庭をひらひらと弱々しく飛んでいる。チャドクガというのは厄介な虫で、卵から成虫まで、すべての段階で毒針を持つらしい。自治体のホームページなんかを見ると、毒針が飛び散らないよう、慎重に処分しましょう、というようなことが書いてあるので、庭を飛んでいるチャドクガと思しき蛾がこっちに飛んで来たらいやだなと思ってみていたら、庭に出ていたみゆちゃんが、あっというまに猫パンチを繰り出して、殺してしまった。猫パンチをした前足の肉球は、毛に覆われていない地肌である。みゆちゃんの手がかゆくなったらどうしようと思ったけれど、やっぱりなんともないようである。あんなに柔らかい肉球なのに、蛾の毒針は刺さらないのか、不思議である。
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