おでんの鍋

 大きな鍋を持っていなくて、たとえばおでんだと、卵がひとり一つずつ、大根がこれくらい、じゃがいもがこれくらいずつと人数分を入れていくと、最後に練り物を入れる頃にはもう鍋がいっぱいになってしまっていて、今さら二つの鍋に分けるのも面倒だし出汁も薄まるし、結局、どうにも入らなさそうなところに練り物を無理やり押し込んだり、それも無理なときには、練り物だけ二段階で入れることになる。またハンバーグ入りのホワイトシチューを作ったら、具が多すぎて鍋の中でぎゅうぎゅうになってしまい、混ぜるのに必要な空間がなくなって、せっかく作ったハンバーグが、シチューの中でばらばらになってしまった。
 そんな話をしたら、私の台所事情を聞くに聞きかねた母が、このあいだ一緒にショッピングセンターへ行ったときに、大きな鍋を買ってくれた。
 ステンレス製の頑丈な鍋で、これならもうおでんを作るときにも、こんにゃくが一人当たりいくつまでと、ぎりぎり限界の許容量を頭をひねって見積もらなくても、どんどん放り込めばいい。実際、ぴかぴかのあたらしい鍋の中で、いっぱいに入ったおでんがぐつぐついっているのを見るのは、なんだか心楽しい。
 鍋を買ってもらったその日にさっそくおでんを作って、しっかり味がしみこんだ次の日、おでんを実家に持って行った。
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