ミケを探して

 どんぐりが枝から落ちて、石畳の上に当たり、こーんと軽快な音を立てて跳ね返った。植物園には立派な樫の木がたくさんあって、どんぐりがたくさん落ちている。ときどき、枝を離れたどんぐりが、ぱらぱらと葉を叩きながら、頭の上から落ちてくる。
 ミケを探しに来た。このあいだ来たときは、日曜で人が多かったせいか、ミケは姿を現さなかった。もっとも、まだ植物園にいるという確証もないけれど、もしまだいるなら、お腹を空かしているだろうと思って、探しに来た。
 この前ミケを見た場所に向う途中で、別の猫にあった。さび色の小さな猫で、細い体に、とても小さな頭がついていた。呼んだら、人懐っこくにゃあにゃあと鳴いてやって来て、お昼のサンドイッチが入った紙袋の中に頭を突っ込んだ。このサビもお腹がすいているようだった。背中をなでたら、毛並みはきれいだけれど、背骨がこつこつと手のひらに当たった。ミケのために持ってきたキャットフードを袋から一掴み出したら、あっというまに平らげて、もっとほしいと膝に前足をかけて伸び上がった。もう一掴みあげてもまだ足らず、さらにもう一掴み分を食べて、ようやく落ち着いたようだった。
 次に、ミケのいそうな場所へいったけれど、ミケの姿は見当たらなかった。前に来たときにお皿に入れておいたキャットフードはすっかりなくなっていたので、やっぱり近くにいて食べに来たのかもしれないと思って、また足しておいた。
 それで帰ろうと思って、北門の出口の方へ戻りかけたら、おばさんにお弁当を分けてもらっているミケを見つけた。猫なのに白いご飯なんかを食べていたから、相変わらずお腹が空いているのだろう。しかしいまだあまり人には馴れていなくて、近寄ったら、花壇の中の背の高いカンナの花の下に隠れてしまって、呼んだら返事はするけど出てこなかった。キャットフードを置いてきたところから遠くないから、きっと気づいて食べてくれるだろうけれど、ミケと仲良くなろうと思ったら、もっと足繁く通わなければならなさそうである。
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