アントンK「趣味の履歴簿」

趣味としている音楽・鉄道を中心に気ままに綴る独断と偏見のブログです。

都会に薫った「みどりの風」

2019-05-15 15:00:00 | 音楽/芸術

都内も若葉が美しい季節となった。こんな日和は、天気が目まぐるしく変化して、寒暖の差ができて身体も心も不安定に成りがちだが、抜けるような青空のもと、まだ若い緑を目にするとどこか心がスーッと洗われる想いがして気分が良い。明るい日差しの中、春の薫りを感じて街を歩けば、今までとは違ったものが見えてくるように思う。ほんの一瞬でもいいから、そんな想いが心に過れば、また前に進めるような気がしている。

仕事を早めに終えて都心へと急いだ。企業向けに催される演奏会を鑑賞しに行くためだ。いつも聴いているオーケストラのようなジャンルではなく、もっと少人数の室内楽鑑賞だ。アントンKは、鉄道写真と同様に、クラシック音楽鑑賞も随分と長い間続いている趣味の一つだ。聴きたいと思って意識したのは、40年以上前のことになるので、鉄道写真と同等かそれ以上の歴史が出来てしまった。しかしそんなに長い時の流れの中で、鑑賞する楽曲は、ほとんどがオーケストラで演奏される楽曲であり、ピアノやヴァイオリン、チェロといった器楽曲は、ほとんど聴いてこなかった。いずれ年齢を重ねたら、自然とジャンルが広がるとは思っていたが、とうとうそういった年齢になったということか・・・

いや年齢もそうだが、実際アントンKを導いてくれるのは、こういった演奏会を企画し実演されているヴァイオリニストの崔文洙氏のおかげなのである。忘れもしない2015年1月の大阪フィルの演奏会での衝撃は、アントンKの心を熱くし、あの命がけともとれる演奏は未だに生きる糧となっているのである。これは何度も書いてきていることだが、こんな演奏家が日本にもいるんだと正直ノックアウトされ、それ以来とにかく崔文洙氏の演奏を聴きたいと思い続けている訳だ。

そんな崔氏の演奏会は、大阪フィルハーモニー交響楽団のメンバーとともに演奏される「室内楽の愉しみ」と題されたもの。昨年同様、弦楽器のみのアンサンブルかと思いきや、今回は現在の大フィルクラリネットのトップ奏者である金井氏も登場、色彩豊かな音色が響き渡った。プログラムは、東欧を意識した内容で、中でもドホナーニの弦楽三重奏は、実演奏ではなかなか聴けないらしい。アントンKも予備知識はほとんどない中、目の前で生まれる音楽、響きの深さを味わうことが出来た。崔氏自らのMCも解りやすく、楽曲の聴きどころなども細かに解説しながらの演奏で楽しめる。昔、朝比奈隆が、「演奏者は、舞台に上がれば役者でなければならない」と語っていたが、この時の崔氏を見ていると自然とそんな言葉を思い出していた。いかにも大阪チックな金色のラメジャケットで身を包み、ヒンデミットの「ミニマックス」では、楽曲に合わせて、数々のアドリブをかまし、会場を和ませていたのだ。これが本当の意味での「エンターテイナー」なのではないか!

アントンKには、今回唯一馴染み深いモーツァルトのクラリネット五重奏曲は、よく耳にしていたおよそ20年前の光景が目の前に現れ、当時の気持ちが蘇ってきてしまった。いつものオケでは、精神性の高い音楽を演奏したかと思えば、今回のようにもっと身近に接することができる音楽を我々に享受してくれる崔氏には、今回も脱帽である。

「室内楽の愉しみ」~大阪フィルハーモニー交響楽団

ドホナーニ   弦楽三重奏のためのセレナーデより

ヒンデミット  ミニマックス(軍楽隊のためのレパートリー)

バルトーク   ルーマニア民族舞曲

モーツァルト  クラリネット五重奏曲

ほか

アンコール 

         竹取物語

チャイコフスキー 10月 ~武満徹編曲

CL     金子 信之

Vn1   崔 文洙

Vn2   須山 揚大

Vla    木下 雄介

Vc     近藤 浩志

2019年5月13日  三井住友銀行東館 ライジング・スクエア~アース・ガーデン