鉄道の憧れだったブルートレインも、いつしか全て消滅してしまい、過去の写真を紐解いては想いを綴ることが普通になりつつある。確かに鉄道写真を始めた頃から、ブルートレインは我々の垂涎の的であり、輝いていた時代を送ることが出来て幸せだったと思っている。もうお前は随分撮影しただろうから、十分だろうと身内によく言われたが、切りがない事を知りながら、写欲は無くならなかったのだ。撮影しなければ、自分の存在意味がなくなるとまで自分を追い込んでいた時期もあった。今は、撮影したい被写体というよりも、周りの友人知人と戯れるために、現場に出ることの方が勝っているかもしれない。今では尊い友人達が、アントンKの原動力になっていると最近よく考えるのだ。
早朝の東海道線、寝台列車を狙いにいつもの根府川までやってきた。EF65PFけん引のブルトレに混じってやってきたのは、かつてのブルトレけん引機EF65P型だった。この日はローカル貨物列車の任にあたり、地味に目の前を通過していく。ヘッドマークを掲げ、朝日を受けて走った時代からは、想像もつかないほど、汚れていて疲労が隠せない。何と哀れな姿だろうと、この時何とも言えない気持ちでシャッターを切った。このEF65535は、後年最後の花道を飾り、我々の前に優雅な姿を披露したことも遠い昔の出来事となってしまった。
1983-06-05 3460ㇾ EF65535 東海道本線:根府川付近