鉄道撮影の技法として、超望遠レンズで撮影し被写体に独特の表現を求める撮影方法がある。
アントンKがまだ駆け出しの頃、鉄道写真の神様と言われた廣田尚敬氏が、まだ見たこともないような画角の写真を発表し、とても驚嘆した思い出があるが、アントンKには別世界に感じて、当時は憧れでしかなかった。
EF58を撮影していた1970年代後半、アントンKが多大な影響を受けた友人達がいた。もちろん今でも彼等とは機会を見つけては線路端に立っているが、昔のように頻繁ではなくなってしまったことが少し寂しく思う。そんな畏友たちだが、その当時から長いレンズで撮影する魅力に捕りつかれていた連中だった。アントンKは200mmレンズが一番の望遠レンズだったが、彼らは400・500・600mmといったいわゆる超望遠の世界に飲まれていたのだ。撮影に同行しても、レンズの長さで立ち位置が違い寂しい思いをしたものだが、彼等から超望遠の魅力を随分と教授させてもらったと思っている。あの当時からこんなに長いレンズで鉄道撮影し、そのカテゴリーを確立したのはおそらく彼等に他ならないだろう。ただむやみやたらに長いレンズを振り回すのではなく、しっかりとした拘った思考が存在しており、今まで考えもしなかったポイントで、または角度で被写体を捕らえることだけに神経を集中させているのだ。そこには、大いなる妄想や創造力が存在し、撮影の原動力になっているということを思い知らされたのである。頭で描いた画像を具現化する力が人一倍あるのだろうか。とにかく好きな被写体には、惜しむことなく時間と労力を費やす切り立った覚悟を感じていたのだ。
趣味の世界だから、やはり人とは違った独自性が欲しい。その手段の一つが超望遠の世界だとしたら、大いにうなずけるのだ。あれから30年以上の歳月が経ち、アントンKも彼らのような憧れの世界へ足を踏み入れる身分にもなったが、なかなか思うようにならないのが本音だ。
掲載写真は、早朝の高崎線で捕らえたEF65PFの石油列車。日の出直後で、オレンジ色の朝日が貫通扉を赤く染めた瞬間を仕留めてみた。こういった表現の強調も、超望遠ならではの世界ではないか。
2013-01-30 8760ㇾ EF652075 JR東日本/高崎線:新町付近