遠い昔僕の幼い頃は
愛想がよく誰からも声をかけられ
「可愛い坊ちゃんだね〜」
と言われていた。
そして誰にでも
ついていってしまう
無防備、無警戒な僕だった。よくぞ
誘拐されなかったと…
すぐいなくなり、
誰にでもほいほいと
ついていってしまう
そんな可愛い僕ちゃんを
いつもうちの親は探し回るのが
日課だったようだ。
目を離すと家にいない。
探し回ると
四軒先のおばさんの家で
お菓子を食べてた。
買い物に行って目を離した隙に
知らないお姉さんといっしょに
おもちゃを見てたとか
とにかくじっとしてなかった
子供だった。
ある意味おおらかな時代
また、地域とか優しさで
子供だった僕は
守られてきたことを
思い出し実感する。
ある日…
怪獣映画「ガメラ対ギャオス」
を観に連れて行ってくれた父
映画の帰りは
港に停泊中の客船に
乗る事ができた
そこからの眺めを見ていた。
初めて飲んだジュースが
瓶のファンタグレープ
小さな手で瓶のジュースを握りしめ
葡萄色の着色料から透けて見える
船からの景色を
幼い僕は覚えたての
言葉を喋りながら
父親に船からの景色を教えていた。
数少ない娯楽の中
精一杯の時間の中
父と子の触れ合う時間は
人生の中では数少なく
唯一未だにしっかりと覚えている
幼い日のキオク
遠い遠い日のキオク
大切に大切に
育ててくれた
記憶
セピア色の写真の中に
映る
幼い僕はたくさんの
おもちゃに囲まれて
ていたり、
母親におんぶされたり
テレビを真剣に見ていたり
色々の場面を写真におさめて
くれていた父。
自分のルーツを辿って、
まっさらな気持ちになる
僕は
愛されてきたのだなぁ
どこかに…
他人の子供なんじゃないか?
橋の下で拾われた記録が写真に
残ってないか?
など思いながら昔の写真を見ていた
時期もあった。
モノクロ写真は父親がたくさん
記録してくれた
愛情の証 愛情の印
遠い日のキオク