「柳蓼・やなぎたで」
蓼食う虫も好き好きという諺がある。タデの辛い葉を好んで食う虫もあるように、人の好みはさまざまだという意味である。諺のタデはヤナギタデと特定されているわけではないが、料理の世界でタデといえばホンタデ(本蓼)とかマタデ(真蓼)とも呼ばれるヤナギタデを指すのである。ホンタデ或いはマタデは「これが正真正銘の辛いタデである」という意味から名づけられたヤナギタデの別名である。
タデ科の植物は地球上に約800種類が分布しているとされ、この内の約70種類が我が国に自生または帰化している。タデ科植物の中で最も重要なものは穀物のソバおよび同属の韃靼ソバである。他にはジャムなどにするルバーブや漢方薬の大黄(だいおう)やツルドクダミ(何首烏)、染料植物のアイ、山菜として利用されるイタドリやスイバなどもタデ科植物である。もう一つ忘れてならないタデ科の草が、子供のままごとに使うアカノマンマである。
ヤナギタデは、すでに平安時代から香辛料として用いられてきた。江戸時代には栽培品種も多く作られたということである。葉を噛むと、辛くて口の中が、ただれるという意味から「タデ」という言葉が生まれたと言われている。
鮎の塩焼きを食うときに使う「タデ酢」には、ヤナギタデの葉が香辛料として加えられている。タデ酢は、ヤナギタデの葉をすりおろし酢に混ぜてつくる。アユの塩焼きのほか、臭みのある魚料理などに使われる。また、刺身を食うときに、卸しワサビとともに、「つま」として添えられている「紅タデ」は、ヤナギタデの種子の芽生え(子葉)である。
ヤナギタデは、野菜としての利用法により「芽タデ」とか「笹タデ」と呼ばれている。芽タデは葉の色により「べニタデ」と「アオタデ」に区別されている。「べニタデ」の子葉は、濃赤紫色であるが、「アオタデ」は緑色である。一般に白身の魚には「べニタデ」を、赤身の魚には「アオタデ」を用いる。笹タデには本葉を用いる。主に「アオタデ」が利用され葉の形から「笹タデ」とよばれる。
ヤナギタデの辛味は胃を刺激し胃液の分泌を促すので消化を助け食欲をそそる働きがある。また、臭みを消すだけでなく、解毒効果もあるとされる。このことから、魚などを食べるときには、ツマとして添えられているヤナギタデの葉を残さずに食べておくことが望ましい。このことにより、食あたりを防ぐことができるからである。
ヤナギタデの英名は、"Water pepper"と呼ばれ、ヨーロッパでは、この果実をコショウの代用に使う。
ヤナギタデはその全草を生薬「水蓼」(スイリョウ)と呼び、民間薬として用いられる。秋に全草を採取し、日干しにして薬用に使う。ヤナギタデには、血液凝固促進作用や、血圧降下作用を示すことが報告されている。これを消炎、解毒、利尿、下痢止め、解熱、虫さされ、食あたり、暑気あたりなどに用いられる。ハチや毒虫にさされたときには、ヤナギタデの生の葉を揉んで塗布すると痛みや腫れがおさまる。食あたりには、茎葉をすりつぶしたものに、卸しショウガを同量混ぜ合わせ、小スプーン1杯を服用する。葉を水洗いして日陰で乾燥させたものを利尿や解熱に用いる。また濃く煎じて飲めば暑気あたりによいといわれている。その他、ネパールでは、魚毒として、葉を砕いて川に流し浮いてきた魚をとる。ヨーロッバでは葉から黄色の染料をとる。
タデ酢を作るには、タデの葉を微塵に刻んで、二杯酢に混ぜるだけでもよいが、更に手を加えるならば、擂鉢でタデの葉を細かく擂り、これに粥飯を少し加えて擂り潰し、二杯酢を加えながらとろりとするまで擂りのばせばよい。なお、タデの葉を煎って作る「いりたで」というのがあり、清汁の吸い口などに用いられる。
◆ 鮎釣れて休耕田の蓼を摘む
蓼食う虫も好き好きという諺がある。タデの辛い葉を好んで食う虫もあるように、人の好みはさまざまだという意味である。諺のタデはヤナギタデと特定されているわけではないが、料理の世界でタデといえばホンタデ(本蓼)とかマタデ(真蓼)とも呼ばれるヤナギタデを指すのである。ホンタデ或いはマタデは「これが正真正銘の辛いタデである」という意味から名づけられたヤナギタデの別名である。
タデ科の植物は地球上に約800種類が分布しているとされ、この内の約70種類が我が国に自生または帰化している。タデ科植物の中で最も重要なものは穀物のソバおよび同属の韃靼ソバである。他にはジャムなどにするルバーブや漢方薬の大黄(だいおう)やツルドクダミ(何首烏)、染料植物のアイ、山菜として利用されるイタドリやスイバなどもタデ科植物である。もう一つ忘れてならないタデ科の草が、子供のままごとに使うアカノマンマである。
ヤナギタデは、すでに平安時代から香辛料として用いられてきた。江戸時代には栽培品種も多く作られたということである。葉を噛むと、辛くて口の中が、ただれるという意味から「タデ」という言葉が生まれたと言われている。
鮎の塩焼きを食うときに使う「タデ酢」には、ヤナギタデの葉が香辛料として加えられている。タデ酢は、ヤナギタデの葉をすりおろし酢に混ぜてつくる。アユの塩焼きのほか、臭みのある魚料理などに使われる。また、刺身を食うときに、卸しワサビとともに、「つま」として添えられている「紅タデ」は、ヤナギタデの種子の芽生え(子葉)である。
ヤナギタデは、野菜としての利用法により「芽タデ」とか「笹タデ」と呼ばれている。芽タデは葉の色により「べニタデ」と「アオタデ」に区別されている。「べニタデ」の子葉は、濃赤紫色であるが、「アオタデ」は緑色である。一般に白身の魚には「べニタデ」を、赤身の魚には「アオタデ」を用いる。笹タデには本葉を用いる。主に「アオタデ」が利用され葉の形から「笹タデ」とよばれる。
ヤナギタデの辛味は胃を刺激し胃液の分泌を促すので消化を助け食欲をそそる働きがある。また、臭みを消すだけでなく、解毒効果もあるとされる。このことから、魚などを食べるときには、ツマとして添えられているヤナギタデの葉を残さずに食べておくことが望ましい。このことにより、食あたりを防ぐことができるからである。
ヤナギタデの英名は、"Water pepper"と呼ばれ、ヨーロッパでは、この果実をコショウの代用に使う。
ヤナギタデはその全草を生薬「水蓼」(スイリョウ)と呼び、民間薬として用いられる。秋に全草を採取し、日干しにして薬用に使う。ヤナギタデには、血液凝固促進作用や、血圧降下作用を示すことが報告されている。これを消炎、解毒、利尿、下痢止め、解熱、虫さされ、食あたり、暑気あたりなどに用いられる。ハチや毒虫にさされたときには、ヤナギタデの生の葉を揉んで塗布すると痛みや腫れがおさまる。食あたりには、茎葉をすりつぶしたものに、卸しショウガを同量混ぜ合わせ、小スプーン1杯を服用する。葉を水洗いして日陰で乾燥させたものを利尿や解熱に用いる。また濃く煎じて飲めば暑気あたりによいといわれている。その他、ネパールでは、魚毒として、葉を砕いて川に流し浮いてきた魚をとる。ヨーロッバでは葉から黄色の染料をとる。
タデ酢を作るには、タデの葉を微塵に刻んで、二杯酢に混ぜるだけでもよいが、更に手を加えるならば、擂鉢でタデの葉を細かく擂り、これに粥飯を少し加えて擂り潰し、二杯酢を加えながらとろりとするまで擂りのばせばよい。なお、タデの葉を煎って作る「いりたで」というのがあり、清汁の吸い口などに用いられる。
◆ 鮎釣れて休耕田の蓼を摘む