珍しく、夜中の1時半をすぎても八新の灯りがともっていた。
健さんがお客さんと話し込んでいるのだ。
と、そこに店の電話が鳴り響いた。
こんな時間に誰やろ?
受話器を取った健さんの耳に飛び込んできたのは、
ビービービーというすさまじい音響と
タミヨさんの
なんとかして! という叫び声・・・
携帯電話が突然、大音響で鳴りだし
何をしても止まらんし、電源も切れん・・・のだという。
5
日の早朝から視察に出掛けるわたしは、ちょうどそのころ
最後の荷物の点検をしていた。
健さんは、まだ店にお客がいる、
お酒を飲んでいるから運転ができない、
そもそも携帯電話のことはさっぱりわからん・・・
というので、仕方なくわたしの出番となった。
草木も眠る丑三つ時である。
タミヨさん家についたら、ほんとにすごい音が
鳴り響いていた。
携帯の画面には、
防犯ブザーを止めるにはロックナンバーの入力が必要です・・・
と出ている。
で、タミヨさんロックナンバー知ってる?
なんやそれ?
手当たり次第に、タミヨさんにまつわる数字を入力してみたが
結局、どれも当てはまらず、ブザーは鳴りやまず・・・
エ~イ! こうなったらバッテリーを抜いて
明日、携帯のショップに持っていくしかない!
裏側のふたを開け、バッテリーを抜いたら
やっとブザーは鳴りやんだ・・・
オ~・・・やったぜ!
ふと、思いついてバッテリーを装填してみた。
ナ、ナ、なんと!
画面が正常な状態に戻っていくではないか!
ハ~・・・ため息が出る・・・
わたしが敦賀からよそへ出かけるというと必ず
タミヨさんには
体の不調がおこり、何かが壊れ、何かの事件が起こる。
結局わたしは、ほとんど眠る時間もないまま
視察に出掛けるハメになってしまった・・・