金融マーケットと馬に関する説法話

普段は資産運用ビジネスに身を置きながら、週末は競馬に明け暮れる老紳士の説法話であります。

【映画】 ドライブ・マイ・カー  (2021年 日本作品)  <ネタバレ注意です>

2022-08-02 06:25:54 | 映画

 映画館で見損なった映画『ドライブ・マイ・カー』を、WOWOWでようやく観ることが出来ました。以下は、感想であります。

 

 上映時間が2時間59分なので、「間延びするかな?」と覚悟はしていましたが、意外にリズム感良く、ストーリー場面が変化していくので、一気に観ることが出来ました。

 正直言って、評点をすれば5点満点の3.5点くらい。まぁ、一度くらいは観ても良い映画、というのが率直な評価。

 

 まず、その低評価の原因の一つが、原作の村上春樹氏の作風にあります。とにかく、映画化には向かない作風なのであります。人間の奥の奥を深く抉ろうとするあまり、「極端な人物設定が多いこと」と、難しい状況を正確に伝えようとするために「高度に論理的で演繹的な説明、すなわち、くどいセリフのやり取りが多いこと」で、観る側に共感を持ってもらうことが難しくなってしまうのであります。

 まず「極端な人物設定」という意味では、今回は主人公の亡くなる最愛の妻。主人公とは相性も抜群で、人も羨むほど美しい女性なのですが、一人娘を幼い時に失ってから二重人格のようになってしまい、主人公といる時は貞節な妻、一方、留守の時には次々と男を家に呼び込んで情事に耽るという、とんでもなく極端な人物設定となっています。

 このあたり、村上春樹作品では、「ノルウェイの森」のヒロインは、美しく可憐だが、性器に異常があって性行為に難がある女性という人物設定でしたし、「海辺のカフカ」のヒロインは、中性的で清楚な人物なのですが、やはり人並み外れたエロチシズムを醸し出す不思議な存在でありました。

 とにかく、村上春樹作品には、普通のヒロインが出てこない‼

 

 ちなみに、第2のヒロインであるドライバーの女性の人物設定は、まだ共感が得られやすい内容でした。すなわち、貧しい母子家庭で育ち、札幌に通う水商売の母親のために、最寄りの駅まで、毎日車で片道1時間ほど車で送り迎えをしていた。しかも、中学に入った時から‥もちろん無免許のまま、運転を覚えて母親の送り迎えを毎日行っていた。

 仕事で疲れている母親は、少しでも凸凹な運転をすると怒鳴るし殴るから、まるで重力を感じさせないレベルまで運用技術を磨かざるを得なかった。結果として、その技術を身に着けたため、プロのドライバーとして自立が出来た。

 こちらのヒロインには、十分に感情移入が出来ました。

 

 なお、主人公は役者であり、演出家でもあるのですが、妻の不貞を知っていながら、夫婦関係が壊れることを恐れて、何も言えない人物。一方で、妻と不貞を重ねていた若い役者は、衝動を抑えられない直情的な人物この両極端な人物設定にも、あまり共感ができず、感情移入が出来ませんでした。

 

 『村上春樹作品の映画化は難しい』

 これが、この映画に対する私の感想であります。


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【ゴールデンウィークの過ごし方】 映画でも観に行こうと思ったが‥

2022-05-03 06:48:37 | 映画

 ゴールデンウィークの過ごし方で、少し右往左往しております。

 

 そもそもは、コロナ前であれば、この時期を狙って「海外出張」を組むことが多かったのです。それは、日本は大型連休でも、海外は皆仕事をしているので、普段会えない海外の提携先や、海外拠点で頑張っている同胞たちと、リアルなミーティングおよび懇親の機会を作る絶好のタイミングだったから。しかし、今年はまだ、それを大々的に行えるほど「国内世論」が成熟しておらず「コロナやウクライナを横に置いて、こんな時に何やってる!」と叱られるのがオチ。

 という訳で、ゆっくり美術館巡り、あるいは高尾山でも‥と思いきや、連休中の美術館や高尾山も「密」な現場と指定されており、これも避けろ、との指示。

 結局は、客数を間引いて上映している映画館であれば良し(人の動きもなく、声も出さないので、リスク小ということらしい)、ということで、久しぶりに映画を何本か観て過ごすことに決めました。

 ところが‥。

 

 まず観たかったのは、昨年観にいけなかった「シン・ヱヴァンゲリオン劇場版」。どこかのシネコン内の小さなシアターならば、まだやっているところがあるかも‥と探してみましたが、もうやっていませんでした。

 

 それならば、「シン・ウルトラマン」から先に観ちゃえ、とばかりに探したところ、何と、こちらは5月13日(金)からロードショー。ワザとゴールデンウィークを外したのか! 庵野総監督の意地の悪さか? 単に撮影が間に合わなかったのか?

 

 次に気になっていたのが、「機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島」ワタシの世代は、オリジナルガンダムのリアルタイム視聴者なのであります。ガンダムものは、このオリジナルストーリーそのものと、そこから派生しているスピンオフものしか、我々リアルタイム世代は認めません。今回の「ククルス・ドアンの島」はオリジナルストーリーの第15話を、富野由悠季自身が掘り下げて映画化したスピンオフ作品。これならば、と意気込んだら、これも何と、6月3日(金)ロードショー! 嘗めとんのか!!

 

 もう仕方がない。第1作目のストーリー展開の生煮え状態に絶望したものの、今回、2作連作で完結させるという「鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー」でも良い、と思ったら、これも5月20日(金)と6月24日(金)ロードショーだって! 映画関係者の皆さん、ゴールデンウィークを軽く考え過ぎてませんか!!

 

 これはもう、ゴールデンウィークの気分で観るべき映画ではないと、候補から外していた「ドライブ・マイ・カー」にしよう。ジックリ、しんみり、観よう。と思ったら、4月28日(木)で終了しておりました‥。

 

 という訳で、ゴールデンウィークは、ラーメンでも食べ歩いて、思い切り太ることにしました。


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【再掲】 「風の谷のナウシカ」が教えてくれる人類の性(さが)!

2022-02-10 06:57:52 | 映画

 このBlogは、2020年の4月2日に掲載したものの再掲です。コロナ禍の終息が見えてこないこの時期、今でも、よく読まれている一編なので、少し手を入れた上で、改めてご紹介いたします。

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 宮崎駿の「風の谷のナウシカ」では、1000年前に起きた「火の七日間」という最終戦争によって、高度産業文明が崩壊。その後は、汚染された大地に、異形の生態系である「腐海」が広がり、「蟲」と呼ばれる巨大な昆虫生物が腐海を守っている。腐海には多くの菌類が生育しており、その菌類から噴出される猛毒の「瘴気」が人間を寄せ付けない。衰退した人類は、拡大する腐海の瘴気と蟲に怯えながら生きている。

 しかし、主人公のナウシカは、人類同士の勢力争いに巻き込まれながら、偶然に迷い込んだ腐海の最下層部にて、その腐海が極めて長い時間をかけながら、汚染された大地と空気を浄化している真実にたどり着く‥

 

 宮崎駿の名作と、今のコロナ騒動を無理に重ね合わせてみる訳ではありませんが、2月に都市封鎖を行った武漢や、サプライチェーンの停止により工場の操業を止めた上海北京では、名物のスモッグが消えてなくなり、ぜん息で苦しむ市民が激減しているそうです。同じ事象が全世界で発生するとなると、コロナ騒動⇒人・モノの動きが止まる⇒世界中の需要が減退⇒石油・石炭などの炭素系エネルギー消費の減少⇒温暖化へのブレーキ効果、という流れに。

 新型コロナウイルスが「腐海」なのか、「瘴気」なのかは分かりませんが、少なくとも、人類が足並みを揃えるのに20年かかっても出来なかったことを、たった2か月ちょっとで、全世界の気候変動リスクの源を止めてしまったのは事実。新型コロナが、地球からの刺客、いやメッセンジャーかもしれないと、妙な気分に浸ってしまいました。

 この感染がいったん収まり、また人・モノの動きが再開すると、石油・石炭を燃やしてエネルギー使用量も回復する。そうなると、また変異したコロナ株の感染が再開して、また人・モノの動きを止めるコロナ禍が地球の意志だとすれば、この繰り返しは、人類の行動が変わらない限り、あるいは、人類の数が激減しない限りどこまでも続くのでしょう。

 

 それが判っていても、人類は目の前の行動を変えることが難しい。そのことは、35年前の「風の谷のナウシカ」の世界が教えてくれています。


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【難解な映画にハマる】 クリストファー・ノーラン監督の「TENET」!

2021-07-10 08:26:04 | 映画

 今の現役監督の中では、リドリー・スコット監督とクリストファー・ノーラン監督の作品が特に好きであります。リドリー・スコット作品については、またいずれ、ウンチクを傾けたいと思いますが、本日は、ノーラン監督の「TENET」について。

 

 日本では、昨年の9月に公開された映画ですが、コロナ禍でしたので、ずっと映画館には行けずにおりましたが、ついこの間、WOWOWで放送されたので、やっと観ることができました。

 まぁ、一言で評するならば、「難解な映画」。しかし、そこは、ノーラン監督作品の特長ですが、「難解なのに、ハマってしまって、何回でも観てしまう、引き込まれるような面白さ」

 

 少しネタバレになる部分もありますが、作品概要を紹介いたしましょう。まず、TENETという言葉は、「主義」とか「信奉する教義」の意味なのですが、それよりも、頭から読んでも、最後から読んでも「TENET」であることの方が重要です。

 ストーリーは、現代世界を全て破滅させようとする謎の敵と、その謎の敵と対峙する存在が居て、謎の敵と対峙する存在から、主人公が「人類を守る使命」を与えられます。敵も謎のまま、そして、自分に人類を守る使命を与えた存在も謎のまま。

 少しずつ明らかになる敵は、実は未来にいることが判明。そして、自分に使命を与えた存在も同じく未来にいると判る。未来にいる敵は、「時間の流れを制御できる兵器」を保有しており、それを過去である現代世界へ送って、それを使ったエージェントの活動によって、現代世界を危機に追い詰めていく。一方で、主人公に使命を与えた存在も、敵と同様に「時間の流れを制御できる兵器」を使うことが可能で、敵の目論見を何とか阻止しようと、組織だった部隊まで編制していることが判ってくる。

 未来の敵は、最終兵器「アルゴリズム」の存在と、それが9つに分解されて「過去である現代世界」に別々に隠されていることを知っており、それを一堂に集め、「作動」させて現代世界を破滅させることを狙っている。そして、敵側のエージェントが、9つの「部品」をすべて見つけ出して、ついに、それを作動させようとする

 敵とは誰なのか? 主人公に人類を守る使命を与えた存在とは何なのか? また最終兵器「アルゴリズム」とは?

 

 一度ハマると、最低5回は観ないと、謎が解けてきませんよ。貴方も試してみませんか? クリストファー・ノーランの世界! ハマると簡単には抜け出せません!!


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【映画】「天気の子」を観ていたら、何と代々木会館が!

2020-10-14 06:56:53 | 映画

 新海誠監督の「天気の子」をWOWOWで観ました。相変わらず、風景描写の美しさに感銘したのですが、何と冒頭から、JR代々木駅近くの代々木会館という実在のビルが出てきて、映画の重要なパワースポットとして、代々木会館の屋上にある社(やしろ)に日光が差し込むシーンがプロローグとして描かれていました。

 私の実家は、渋谷区代々木にあって、この代々木会館周辺は非常に馴染みが深い場所なので、まずこのシーンに引き込まれてしまいました。この代々木会館は、その昔、萩原健一と水谷豊が主演した「傷だらけの天使」のロケ現場としても有名で、1階にはパチンコ店、地下1階にはアレンジボール・雀球店、2階から上は居酒屋などの雑居ビルとなっていて、特に1階と地下1階には、私も学生時代に大変お世話になりました!

 しかし、近年はさすがに老朽化が酷く、2011年の震災以降は危険なため、ビルが使用されることもなく、今年の8月には遂に解体工事に入りました

 ちなみに、新海誠作品には、前作の「君の名は。」でも、代々木・新宿・千駄ヶ谷など、総武線各駅停車駅の周辺の風景が、かなり緻密に、正確に描かれているため、自分にとっては懐かしい風景がてんこ盛りになっています。きっと、新海誠監督ご本人にとっても、縁の深い場所なんだと思いますが、次回作品も楽しみにしたいと思います。


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