生存者の道
チリの鉱山落盤事故によって、地下700mの場所で、2か月以上閉じ込められていた33人の作業員が救出される模様は、生放送で全世界に中継されました。各国のマスコミが争って取材合戦を繰り広げたようで、一部では、家族や本人へのインタビューの代価として金銭的なトラブルの噂も聞かれています。また救出現場でのチリ大統領の行動も、政治的パフォーマンスが過ぎるという陰口をたたく人もいるようです。しかし、そのような雑音は別として、気温35度、湿度90%の狭い空間で70日間にわたり、耐え抜いて生存したことは、医学的にも驚嘆に値することです。そこには肉体的な苦痛以上に、精神的な絶望感から抜け出すべく、お互いの連携やそれを可能にした規律や統率があったものと想像します。
奇跡の生還と言えば、15年前、韓国の三豊(サンプン)百貨店崩壊事故で十数日ぶりに瓦礫の中から救出された3人の男女は、ある意味、今回の事故以上に過酷な状況の中、人間の強い生命力、精神力を示したものとも考えられます。彼らは、崩壊した瓦礫に挟まれ、身動きも儘ならぬ中、耐え抜きました。段ボールの切れ端をちぎって空腹をしのぎ、雨水や消火用の水でのどの乾きを癒したといいます。何より彼らは時間の経過もわからぬ、暗闇の中、たった一人でこのまま永久に発見されないかも知れない恐怖と闘い続けました。救出された直後、「救助隊のお兄さんとデートしたい。」と言って笑わせた当時17歳の少女もエピソードとして伝えられましたが、その心の余裕が最後まで彼女を支えた強さだったのでしょうか。
悲惨な状況の中、九死に一生を得て生き残った生存者たち。別の意味で彼らの人生での戦いは、それから始まるのかも知れません。そのような経験をした多くの人々が、特別な体験をした幸運な人間という形で世間や周囲に奇異な視線で注目され、やがて事件自体が風化し、人々の記憶から薄れていきます。なぜ自分は生き残ったかと自問自答したある生存者の結論は「家族を大切にし、その日その日を悔いがないよう精いっぱい生きる。」でした。
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