2010年度の統計から日本人女性の平均寿命が、昨年より0.05歳下回り86.39歳と発表されました。前年度を下回ったのは5年ぶりということすが、それでも26年連続して世界一位を維持しています。男子は逆に0.05歳増えて79.64歳で世界4位、男女平均はこれまた世界一位です。韓国も男女平均寿命80歳を超え、堂々の世界20位と今では立派な長寿国の仲間入りです。では86歳を迎えた日本の女性が、「自分はこれで同世代の中では、半分以下の長寿の部類に入れた。」と考えたら正しいでしょうか?実はこの時点では、同世代の66%が生存しており、半分以下になるのは89歳です。つまり平均寿命とは0歳の人間が平均して、あと何年生きるかという値を統計的に処理した数値なのです。
当然ですが医学論文などで正確にデータが統計処理されていなければ、その論文は全く価値のないものとされてしまいます。しかし科学の世界でも、計算上は間違っていなくとも母集団や評価法の違いで表れる数字を無意識的にも意図する、或いは自分が期待する結果の方向に導いてしまうことがあり、常にその誘惑から逃れるべく第三者による客観的判断に対して謙虚な思考を持たなければなりません。逆に広告や何かのキャンペーンの為の統計値や数字であれば、それは必ずある目的の為に示された数字と考えても間違いではないでしょう。「体験者の90%が満足している。」とか「回答者の半分以上が不満と感じている。」とかです。「世の中には3つの嘘がある。嘘、真っ赤な嘘、そして統計だ。」と言ったのは、「トムソーヤの冒険」で知られるマーク・トゥエインです。
また、いかにももっともらしい数字や実験を示すことで、人々をだます手段として使われる似非科学にも注意です。「最近太り気味と感じている主婦5人に〇〇を1週間食べてもらったところ、皆何キロ以上痩せました。」といったものです。この実験らしきものは、母集団があまりに少ないこと、被験者が関係者である可能性、対照実験をしていない、その他の条件を個人ごとに統一していない点など全く科学的意味を持ちません。「体験者の80%が満足している。」「回答者の過半数が不満に思っている。」などのアンケートもまた、統計的に見せながら操作されたものがあります。人を信じるなとは言いませんが、少なくとも誰が何のために行ったものかという背景は、自分で確認する必要あるようです