先日 韓国の中央日報で、韓国健康保険審査評価院の調査から「火病(鬱火病)」で診療を受けた患者が年間11万5000人に達するとの結果が出たとの記事を目にしました。その約1ヶ月前の記事では、某就職ポータル会社のアンケート調査によると韓国人サラリーマンの90%以上が「火病(鬱火病)にかかったことがある」と答えたとの結果も掲載されました。一般的には韓国人特有の精神症候と理解されているのが火病です。サラリーマンの90%で罹患経験があり、年間11万人以上が治療を受けているという内容だけだといかにも国民病の様に思えますが、果たして本当に韓国人だけの症状なのでしょうか?
アメリカの精神疾患診断マニュアルであるDSM-IVの巻末付録「文化的定式化の概説と文化に結び付いた症候群の用語集」では「火病」について以下のように記載されています。
【hwa-byung(wool-hwa-byungとしても知られている):韓国の民俗的症候群で、英語には“anger syndrome”(憤怒症候群)」と文字どおりに訳されており、怒りの抑制によるとされている。症候としては、不眠、疲労、パニック、切迫した死への恐怖、不快感情、消化不良、食欲不振、呼吸困難、動悸、全身の疼痛、心窩部に塊がある感覚などを呈する。】このように米国精神医学会で火病を「朝鮮民族特有の文化依存症候群の一つ」として扱い診断マニュアルにも紹介されるようになったのは在米韓国人医師Lin KMらの論文が1983年に"American Journal of Psychiatry"という権威ある精神科雑誌に載ったことが始まりです。文献によると火病患者は経済的弱者で地方在住の40代以上の女性に多いとされています。儒教的価値観が根強い、封建的社会で抑圧された女性へのストレスが原因と考えれば頷けるところもありますが、サラリーマンの90%云々となればまた異なる気がしますね。1960~70年代には韓国の主要大学医学部の卒業生の多くがアメリカに渡り医師として活動しましが、医学界での影響力もそれなりにあったかも知れません。火病という言葉が独り歩きして、無理やり社会特性や民族性に結び付け、韓国人は自己診断をする傾向があるのではないでしょうか。要はストレスを感じて身体的な不調を訴えるのは、どの国、どの社会にもあり得ることです。
日本もかつて「対人恐怖症」を集団の調和を重んじる日本文化特有の病として欧米に発信し、同様にDSM-IVに掲載されました。その後、欧米にも似た症状の患者がいることが確認されています。民族や特定な社会を特別視し過ぎるのは、時に優越性を強調し、逆に差別に繋がる可能性を潜んでいます。喜怒哀楽、古今東西、人間そんなに異なるもものではありません。
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