美容外科医の眼 《世相にメス》 日本と韓国、中国などの美容整形について

東洋経済日報に掲載されている 『 アジアン美容クリニック 院長 鄭憲 』 のコラムです。

恋と寺

2014-11-15 17:56:40 | Weblog

韓国から義父が来日しました。上背もあるうえに背筋はピンと伸び、とても八十を優に超えているようには見えません。軍人として動乱の時代を生き抜き、退役後も官庁で長く勤務してきた風格を感じます。私の両親は既に他界し、義母も亡くなっているため、夫婦にとって親孝行らしいことができるのも今はこの義父だけです。富士が眺望できる河口湖畔の温泉や、高句麗からの渡来人高麗王若光を祭った高麗神社などを案内しました。東京近郊で何処かと考えたある一日、ふと蕎麦が美味しいからという知り合いの言葉を思い出し訪れたのが深大寺でした。私も妻も寺の由来も知らぬまま義父を連れて行ったわけですが、意外や渡来人の恋の物語を聞かされました。

深大寺は、奈良時代の天平5年(733年)に満功上人が開山したと伝えられます。万功上人の父は福満という渡来人で、この地の豪族右近長者の美しい娘と恋に落ちますが、娘の両親の猛反対にあい、娘は湖の小島に隔離されてしまいました。諦めきれない福満は三蔵法師玄奘が救われた故事を思い浮べ、深沙大王(じんじゃだいおう)に祈願したところ霊亀が現れ、その背に乗って匿われている娘の島に渡ることが出来ました。娘の父母もこの奇瑞を知って二人の仲を許し、やがて生まれたのが満功上人でした。上人は父の深沙大王を祀ってほしいという願いを承知して出家し、唐に渡って法相学を学んだ後故郷の武蔵野へ戻り深大寺を建立します。(深大寺縁起)当然 深大寺という名前はこの水神 深沙大王に由来し、今でも縁結びの寺として多くの人が訪れているということです。

愛し合う二人のキューピッドとなった深沙大王ですが、実際の姿はキューピッドとは似ても似つかぬものです。髪を逆立て、眼を見開き、顔の半分もあろうかと思われる大きな口を開け、物凄い形相であるうえ、そのいでたちがまた凄い!「象皮(ぞうひ)の面」といって、象の顔が付いた皮の半ズボンを履き、七つドクロの胸飾りを付け、腹には人面が現れています。玄奘三蔵が旅の途中、砂漠で一滴の水を得ることができず、息絶えようとしている時、流砂の中より現れて護(まも)ったことから仏教では砂漠の神、旅人の神として信仰されています。見た目は怖いですが、愛の水に乾き、恋に迷った旅人の渡来人にとってはまさに救いの神となりました。

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