海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

ジュウルクニチというのに

2009-02-11 20:39:41 | 米軍・自衛隊・基地問題
 昨日は旧暦の一月十六日で、午後から墓掃除に行った。沖縄は冬でも草が茂るので、親戚の墓の草刈りで汗をかいた。本来そこは別の親戚が管理すべき墓なのだが、最近は放ったままになっているので、父方と母方の墓を掃除した後に、ここにも回っている。
 宮古にいた頃、十六日に家族・親族が墓の前で御馳走を囲んでいるのを目にして、ここではジュウルクニチがシーミーと同じ役割を果たしているのか、と思った。十六日はグソー(あの世)の正月と言われ、沖縄人にとっては大切な日だ。しかし、米軍や自衛隊にはそれも関係ない。
 今日の琉球新報朝刊に、金武町伊芸区の米軍キャンプ・ハンセン内のレンジ(射撃場)4のへリポートを使って、航空自衛隊のCH47J輸送ヘリが離着陸を行ったという記事が載っている。那覇基地渉外室は、訓練ではなく研修、と言っているようだが、県民をなめた物言いだ。研修なら自衛隊の専用バスにでも乗ってくればいい。米軍基地内のヘリポートにヘリで離着陸すること自体が、操縦士にとって訓練の意味を持つのは言うまでもない。そうやって、県民の反応を伺いながら訓練内容を拡大していくのは、自衛隊のいつもの手なのだ。
 キャンプ・ハンセン基地では、すでに陸上自衛隊の訓練も昨年から行われている。それに加えて、空自の訓練も恒常化すれば、ただでさえ米軍演習の被害を受けている周辺住民に、新たな危険が加わることになる。「沖縄の負担軽減」を謳った米軍再編のまやかしが、日米の共同使用が進むキャンプ・ハンセン基地の実態に端的に現れている。
 昨日の琉球新報夕刊には、金武町伊芸区が沖縄自動車道沿いに「流弾に注意!米軍実弾射撃訓練中」と大書した看板を設置した、という記事が載っている。旧の十六日にそういう作業をやらなければならないことが、伊芸区の人たちが置かれた状況の酷さを示している。民家の駐車場で車のナンバープレートを貫通した銃弾が発見され、それが県警の鑑定で米軍の物と明らかになったにもかかわらず、演習による流弾とはっきりしないとして米軍は演習を続けている。
 はっきりしないのなら、はっきりするまで演習を中止すべきなのだ。住民の生命と生活の安全を優先する姿勢があるなら、流弾か否かはっきりしないまま演習を強行することなどあり得ない。しょせんは、演習を優先して住民の安全を後回しにするのが、「良き隣人」の正体というわけだ。自衛隊もまた、その同類にすぎない。伊芸区の住民が置かれた状況に、何の考慮もありはしない。
 昨日は県議会の二月定例会が開会され、仲井真知事が「県政運営方針」を発表している。「09年度の施策の展開」として「米軍基地問題については、基地の整理縮小や日米地位協定の見直し、事件・事故の防止などを、日米両政府に強く求めてまいります」としている。日米両政府に求めるだけでなく、知事が実際にどれだけ事件・事故に抗議して、県民の先頭に立って行動するかが問われているのだ。うっちんとー(うつむいて)して原稿を棒読みするだけでなく、顔を上げて沖縄の現実をちゃんと見て強い姿勢を示さないから、米軍も自衛隊もやりたい放題やっているのだ。
 沖縄県防衛協会のホームページには、「平成19年3月11日」付で以下の記事が載っている。

 沖縄県防衛協会(仲井真弘多会長)は、自衛隊協力団体と共催して、3月11日、陸自那覇駐屯地体育館に於いて、若人約300名の「防衛省自衛隊採用予定者激励会」を実施した。
 当協会からは会長兼任の知事が参加、「離島地域の緊急患者空輸や不発弾処理など県民の暮らしと安全を守る上でも、自衛隊の活躍は誠に素晴らしい」と述べ、自衛隊の活動に感謝と敬意を表すると共に、自衛隊採用予定者に対し「今日の日本の平和を守るという崇高な使命を果たすことになる。職務に誇りを持ち、立派な自衛官になるよう期待している、頑張って欲しい」と激励して前途を祝った。
 激励会には本県選出衆議院議員4名、仲里副知事、協力団体の各会長等が参加した。
県知事がこのような激励会に出席するのは本土復帰以来35年間で初めてのことで、激励会開催前から、当地マスコミも大きく取り上げ報道してきた。
 
 前任の稲嶺知事は知事就任と同時に、中立性を保つ、として県防衛協会会長をはじめ各種団体の役員を退いた。しかし、仲井真知事は就任後も、他の団体の役員は退いたが、防衛協会の会長職は続けた。そして「日本復帰」後初めて上記の激励会に参加している。ここに仲井真知事のタカ派としての姿勢がよく現れている。米軍や自衛隊にやりたい放題させているのも、知事のそういう姿勢からくるものだろう。しかし、それによって被害を受けるのは県民なのだ。伊芸区民が再び「流弾注意!」の看板を張り出さなければならない現状があるのに、知事はいまだに現地に足を運んでいない。基地に脅かされる県民の生命や生活を体を張ってでも守ろうとしないで、何が県民の代表だろうか。

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2 コメント

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知事は… (みや)
2009-02-12 03:34:40
「知事はいまだに現地に足を運んでいない」

…なんとも許しがたい。
その感覚、ヘリが沖縄国際大学に墜ちた時の首相と全く同じだ。怒りを通り越して、呆れる。悲観と絶望も感じる。だが、私は、グソーにいる祖先の為にも、勿論、自分自身の為にも己を高めていきたい。

地主は生活の糧がこれなんだから、何もあなたが熱くならなくてもいいんじゃない?
なんて言葉を発する世話になった友人・知人との古い「縁」は、そこそこに。
30代。大体の方は哲学や生き様が構築されている。気づくのには遅すぎた私だが、指摘したところで何の解決にもならない話をするような方々との時間なぞ、今後の私にもはや無い。私の故郷である沖縄を私は守りたい。ただそれだけ。

県民である私が動かないから、沖縄が動かない。沖縄が動かないから、日本は動かない。日本が動かないから、アメリカは動かない。だから軽蔑されるのだ。アメリカからは勿論、世界からもだ。
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知事の本音 (目取真)
2009-02-12 15:36:40
米国に行くだけの金と時間があるなら、仲井真知事が伊芸区はもとより辺野古区や高江区まで行くのは簡単でしょう。
海兵隊の司令官の所まで直接で向いていって、わったー県民ちゃーするちむいが?と怒りを露わにすれば、米軍の姿勢だって変わります。
結局、沖縄人はおとなしいとなめられているのですね。
米軍は伊芸区の民家で発見された銃弾を、最近の訓練とは関係ない、として逃げようとしています。
それでは伊芸区の住民が狂言をやったというのでしょうか。
そういう米軍のふざけた対応に、「ニュアンスを確認したい」と述べたという仲井真知事の反応の鈍さに呆れます。
米軍の演習を止めることはしたくない、という知事の本音が透けて見えます。
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