海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

九月の空

2008-09-07 11:14:44 | 生活・文化
 沖縄はいまあちこちで鳳凰木の花が咲き誇っている。早朝の雲一つ無い青空に、緑の細かい葉と朱色の花が朝日を浴びてひときわ映える。鳳凰木はまわりに障害物がないと枝を横に広げて見事な樹冠を作るのだが、木質がやわらかくて折れやすいので、街路樹として植えられているものは、台風対策のためにバッサリと切られてしまうことも多い。それでもじきに樹勢が回復するから、沖縄の風土によく合っているのだろう。花に惹かれて庭に植えると、成長が早くて大木になるので、余程広い庭でないと後で切らざるを得なくなるほどだ。
 いつの間にか名護市内で見かけるのは、デイゴの木は少なくなり、鳳凰木やイッペーが目立つようになった。ヒンプンガジマル近くの幸地川沿いや名護市役所の庭にデイゴの大木があるのだが、病害虫のせいもあってか、花が咲き誇っているのを目にする機会が減った。デイゴは沖縄の県木なのだが、数も存在感も鳳凰木に凌がれてしまっている。そのうち鳳凰木の花が沖縄の伝統工芸の図柄になっていく時もくるだろうか(すでになっているかもしれないが)。
 昨日今帰仁の実家に帰ったら、叔父が作ったというドラゴンフルーツが大きな袋に一杯持ってきてあった。農業を専門にしているわけではないのだが、大きさ、形、色、味ともにスーパーに並んでいるものに遜色ない。実家には五、六メートルほどに伸びた三角サボテンがあり、時々それにもドラゴンフルーツの実がなる。近縁種だからなのだろうが、実は大きくはならない。露地栽培で実を収穫できるのだから、これも沖縄の風土によく合っているのだろう。最近は家庭の庭でもよく見かけるほど普及している。
 真ん中から二つに切ったドラゴンフルーツをスプーンで食べながら外を見ると、名護は朝から柔らかな青空が広がっている。八重岳や嘉津宇岳の山並み少しかすんで、沖縄も秋めいてきた。ただ、まだまだ暑さは続く。そう簡単に終わらないのが沖縄の夏なのだ。

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1 コメント

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Unknown (沖縄人)
2008-09-19 16:28:25
沖縄各地で、沖縄在来のものが価値を評価されず軽視されているのは、嘆かわしいです。
役人や政治屋は、自分たちで在来のものを絶やしているくせに、口を開けば「沖縄の文化」などとぬかしますね。本当に苦々しい限りです。
中南部の広域都市化構想も沖縄文化の基層である地域共同体の破壊以外のなにものでもないでしょう。
なんでこんな「くそ役人」や「くそ政治屋」しか持てないのかと思うと、口惜しいです。
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