海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

返還しないのに代替施設は造る…

2010-03-24 17:41:30 | 米軍・自衛隊・基地問題
 今日の琉球新報の1面トップは〈普天間返還も「ゼロベース」〉〈鳩山首相 施設存続可能性も〉という見出しの記事で、鳩山首相が〈有事利用を念頭に現飛行場を残す可能性に言及した〉という内容である。昨日の参議院予算委員会の中継をNHKで見ていたのだが、自民党の佐藤正久氏の質問に同趣旨の答弁をしていた。
 米軍普天間基地を返還するのではなく、有事に対応するために10年間閉鎖状態にする、というのは国民新党が提案していることだ。鳩山首相もその提案になびいているということだろう。
 しかし、この提案はこれまでの普天間基地の「移設」論議を根底から崩すものだ。1996年4月12日に当時の橋本龍太郎首相とモンデール駐日大使との会談が行われ、普天間基地を5ないし7年ぐらいに全面返還するとの発表がなされた。その条件として沖縄県内での代替施設の確保が言われたのだが、鳩山首相や国民新党が言うように普天間基地を返還しないのなら、どうしてキャンプ・シュワブ陸上案などの代替施設が必要なのか、という疑問が出る。
 それを合理化するためにやられているのが、普天間基地の返還を「危険性の除去」にすり替えることだ。昨日の参院予算委員会の答弁で、鳩山首相は一貫して「危険性の除去」という言い方をしていた。3月20日に行われた「ちゃーすが普天間!?与党3党に問う」という討論集会で下地幹郎議員が使っていたのも「危険性の除去」という言い方だ。
 市街地の真ん中にある普天間基地で米軍ヘリの訓練が行われているのは危険である。従って米軍ヘリの訓練を余所に移す必要がある。「危険性の除去」が意味するのはその程度のことであり、返還よりも実行のハードルははるかに低くなる。普天間基地が返還されなくても、米軍ヘリが飛ばなくなれば「危険性の除去」は実現されたことになるのだ。
 最近は国民新党や民主党の議員をはじめマスコミも「危険性の除去」という言葉を頻繁に使うようになっている。そうやってしだいに普天間基地の返還ではなく、訓練の移転という「危険性の除去」が問題であるかのようなすり替えに市民の意識を慣らしていこうとしているのだろう。

 国民新党が普天間基地を返還せずに10年間閉鎖状態にすると提案している裏には、下地幹郎議員と軍用地主との関係があるのではないか、と私は見ている。「有事」における使用など表向きの口実にすぎない。「有事」になれば米軍は自衛隊と共同で民間空港、港湾施設などを自由に使用できるのであり、那覇空港も民間機は運行停止となり、自衛隊機と米軍機が最優先で使用するのは明らかだ。
 そもそも鳩山首相や国民新党は具体的にどのような「有事」を想定しているのだろうか。「有事」に普天間基地が必要なら、96年以降これまではどうして返還が可能だったのか。「有事」という口実の裏にあるのは、軍用地料を今後ももらい続けたい、という普天間基地の軍用地主たちの思惑であり、そのような一部の軍用地主たちの意向を受けて国民新党が、普天間基地の存続を鳩山首相や民主党中央の幹部らにはたらきかけているのではないか。
 普天間基地は返還しない。しかし、沖縄に代替施設は造る。自公政権ですらあり得なかったような馬鹿げた提案が国民新党からなされ、それになびく発言を鳩山首相が行う。無能な首相の下で普天間基地の「移設」が利権屋どもの思惑に振り回されている。

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4 コメント

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沖縄を愚弄する鳩山内閣 (森口豁)
2010-03-24 22:48:57
今回の鳩山首相の「普天間有事使用」発言ほど沖縄県民を愚弄するものはないでしょう。絶対に許せません。「鳩山内閣への幻想」をきっぱりと捨て去るときがきたように思います。
さっきテレビのニュースで鹿児島県議会が徳之島への基地機能移設反対決議を行ったと伝えていました。同様の決議はこれまでにも全国各地で行われています。
「米軍基地はいらない」
もっともなことです。ただ問題はそのあとです。普天間基地は「行く先」を失ない、返還が先延ばしにされるだけ。これでは何の解決にもなりません。もし反対なら沖縄の「基地負担」をどうするか、その瞬間から「自分の問題」として取り組む責任があると私は思うのです。問われているのは、首相のみならず国民一人ひとりでもあることを忘れてはなりません。
自分がいらないものは沖縄だっていらない。沖縄の人が要らないというものは日本にだっていらない。
そういう大運動を巻き起こしていきたいと切に願っています。
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米軍基地いらない国民大運動 (奥設楽棲息人)
2010-03-25 04:14:43
民主党政権はいったい何を考えているのか!
普天間基地は返還ではなく有事に米軍や自衛隊が使えるよう普段は使わないが基地機能はそのまま据え置くと言い出した。
沖縄県民、日本国民をどこまで愚弄、騙し続けるのか? 県民の多くは基地返還後の跡地利用を様々に思い描いていただろう。これまでの住民の歪んだ暮らしを解消する為様々なプランを思い浮かべていただろう。
普天間基地返還と跡地利用はこれからの再生沖縄の試金石、モデルケースとなるべきものである。それは個別沖縄に留まらず日本の未来の希望に繋がるものであると思う。
国民の政権交代への期待を裏切る民主党政権の策略を許してはならない。
社民党はこんな移設案を呑むつもりなのか?連立離脱をしないのか?
私たち国民は国の未来を決める権利がある。当てにならない政党に任せることなく、米軍基地は日本にいらないの大運動を全国で繰り広げようではないか!
この機会を逃して私たちはいつ立ち上がるのであろうか?
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Unknown (乗松聡子)
2010-03-25 04:19:45
琉球新報が言うように、もともと琉球王国の一部であった徳之島が定義上は鹿児島県に属するとも沖縄本当から見えそうな位置にあるではないですか。徳之島を提案しておいて「県外も検討中」などと偉そうに言うのはあまりにもバカにした話ではないですか。

また、鳩山さんが急に「危険性除去」のことばかり言いだして、あたかも普天間全面返還が「選択肢の一つ」であるかのように言いだしたのは仰天しました。普天間返還は「大前提」であり「選択肢」ではないはずです。一体どうしたのでしょう。今話し合っている5人組から沖縄のことを考えた案が出るとは到底思えません。小沢さんは一体どこで何をしているんでしょうか。小沢さんが加わったからといってどうなるわけでもないかもしれませんがこの不在が不気味です。

また、この件と軍用地主とのつながりは考えていませんでした。いつも勉強になります。このブログから教えていただいていることをなるべく広めるようにがんばります。
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Unknown (豊里友行)
2010-04-01 16:57:45
私が思うに政府は何故基地を要らないと言えないのだろうか?
政府はアメリカとの外交を気にしすぎても沖縄に押し付けている広大な基地を長年返還してくれない(返還する気もない?!)。
日本本土で基地を要らないという反対運動が起こるなら、沖縄とも連帯した基地は要らない運動を盛り上げるべきではないか?
現実的に無理と言われても私は納得いかない。
米軍基地の不必要性を解いていかないといけないと私は思う。
今年5月の政府の決断に私なりに行動したくて自社の「沖縄書房」から基地問題をテーマにした840円の(多くの人に基地の現状を共感し、連帯するため赤字覚悟で===3)写真集を緊急出版する。
沖縄を含め日本全体が米軍基地の要らない非武の島になることを願って止まない。
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