海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

チェンジ

2008-11-09 14:03:59 | 政治・経済
 先週行った大阪や京都では、昼間は半袖で過ごしていたのだが、夕方からはさすがに肌寒くてカーディガンをはおった。それに比べて沖縄は、一昨日、昨日とセミの声は秋なのに日差しが強く、クーラーが必要なくらいだった。80歳になった伯父が、「えー、地球温暖化りげらーぬーげら言うしが、昔や11月に霰ぬ降いぬばーぬんあいたんでー」と口にしていて、確かに11月だというのに霰どころか海水浴ができそうな暑さだった。
 今日は一転して朝から肌寒い天気で、雨が断続的に降っている。昨日からヤンバル路ではツールド・オキナワが開かれているのだが、選手は変化の激しい天気への対応が大変だろう。
 このまま地球温暖化とそれによる海面上昇が進めば、数十年後には沖縄の砂浜はすべて消失してしまう。専門家はそう指摘している。沖縄県は日本有数の埋め立て推進県で、愚かなまでに自らの手で砂浜を破壊し続けてきた。県や市町村の行政組織にしても、これ以上砂浜がなくなれば観光に大きなダメージを与える、と危機感を持ちそうなのだが、どうもそうではないらしい。辺野古の海上基地建設では、埋め立てに使われる大量の海砂が県内で採取される予定になっている。それによって沖縄島の砂浜は大打撃を受けると専門家は危機感を持って訴えている。しかし、島袋名護市長や仲井真県知事は、さらに埋め立て面積を拡大させようと沖合への移動を求めているのだ。その方が海砂採取業者や埋め立て業者など県内企業の取り分が多くなる、という発想で、目先の利益しか見ようとしない。おそらくは、自然の砂浜がなくなれば人口ビーチを造ればいいし、カジノを造って観光客を誘致すればいいと考えているのだろう。辺野古の新基地建設問題は、軍事・平和に関わる問題であるだけではなく、沖縄の環境、政治、経済、自治のあり方にも関わっているのだ。
 沖縄にとってはそういう重要な問題であるだけに、米大統領選挙の結果が辺野古や高江の基地建設や米軍再編全体にどのような影響をもたらすか、注目している県民は多いだろう。はたしてブッシュの政策からどれだけのチェンジ(変革)がなされるのか。県内紙ではそのような視点からの論評もなされている。しかし、全国の圧倒的多数の人が目にするテレビでは、オバマと小浜をかけて強引に地域振興(?)に取り組んでいる人たちの涙ぐましくも下らない騒ぎは取り上げられても、米軍基地を抱える沖縄や岩国、横田、厚木などの住民の声は全くと言っていいほど取り上げられない。
 どん詰まりの閉塞感からの脱却願望が募りに募っているのか、目にする映像では「チェンジ」が末法の念仏のように唱えられていて、私には不気味なほどなのだが、マスコミがもっと多様な視点から「多事争論」を起こさなくては筑紫哲也も成仏できまい。
 単独行動主義からのチェンジとは同盟関係の重視になるのだろうし、日本への要求水準はさらに高まり、集団的自衛権行使への圧力が強まるかもしれない。イラクから撤退する一方でアフガニスタンを「対テロ戦争」の主戦場にするというのだから、自衛隊はインド洋での給油どころか、地上兵力の投入が求められる可能性だってある。沖縄の海兵隊のグアム移転に関しても、大幅な費用増大がすでに報道されている。環境重視の姿勢も辺野古の新基地建設問題に関していえば、ジュゴン保護のために埋め立て面積は縮小されるべきだとして、日本政府と共に沖合移動を拒否し、仲井真知事や島袋名護市長との対立はより深まるかもしれない。ジュゴン保護のために辺野古への新基地建設は中止します、とまでチェンジするとは、どんなに楽観的な人でも予想しずらいだろう。
 悲観的な観測ばかり並べているようだが、オバマ新政権になってどのような軍事政策が採られ、それが沖縄、日本にどのような影響を及ぼすのか、否が応でも注目せざるを得ないし、対応もせざるを得ないのだから、まるでブッシュという悪魔が去って救いの天使が訪れたかのような「チェンジ」騒ぎに浮かれている映像など、冷めた目でしか見られないのだ。

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