海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

辺野古有志の会に応援を

2009-04-04 16:00:10 | 米軍・自衛隊・基地問題
 3月30日に新基地建設問題を考える辺野古有志の会とティダの会で、沖縄県環境政策課と話し合いを持った。そのときの様子を3月31日付沖縄タイムス朝刊の記事を引用して紹介したい。

 〈普天間アセス 準備書不備 県に指摘 反対派の住民ら
 米軍普天間飛行場代替施設建設に伴う環境影響評価(アセスメント)準備書の提出を前に、移設に反対する名護市辺野古の住民らが30日、県庁に環境政策担当者らを訪ね、台風時や複数年の調査が実施されていないなど、問題点を指摘した。準備書を受け取らないことも含め、「住民生活を守る立場で厳しく対応してほしい」と求めた。
 応対した県環境政策課の下地寛課長は、アセス手続き上、受け取り拒否はできないと説明。「準備書の内容を掌握していない。提出された段階で地域に影響が出ないよう審査したい」と述べた。
 住民らは、過去の台風時の浸水被害状況を写真で示し、漁港付近の作業ヤード計画に強い懸念を示した。2001年に国が行ったヘリコプター(CH53)デモフライトの騒音調査で集落から1・4キロで70デシベルを記録したこと、1700万立方メートルの海砂採取など懸念を列挙し、「集落は陸、海、空が基地に囲まれる。基地建設で影響が出ないわけがない」と訴えた〉。

 話し合いは県庁四階の一室で行われ、私も参加した。話し合いの中で下地課長は、複数年調査について問われ、準備書の内容が十分なら単年度の調査でもかまわない、と発言した。その発言は問題ではないか、と私は指摘したのだが、県の担当者の本音が垣間見えた気がした。そもそも仲井真知事の名で出された意見書では、沖縄のジュゴンはこれまで生態が殆ど知られていなくて、単年度の調査でそれを把握することは不可能であるとの理由から、複数年調査を沖縄防衛局に求めていた。それを無視して行われた調査で、十分な結果が出せるはずがないのだ。もし、沖縄県が提出された準備書で十分だとみなすのなら、自らの意見書を自己否定するものであり、沖縄防衛局との出来レースといわれても仕方がないだろう。
 辺野古有志の会の皆さんからは、台風時の浸水被害の様子をはじめ、その地域で暮らしている住民の生活体験に根ざした発言が行われていた。辺野古にはすでに集落に隣接して北にキャンプ・シュワブや辺野古弾薬庫がある。国道を隔てて西側にはキャンプ・シュワブの射撃演習場や先だって米兵の死亡事故が起こった爆弾処理場があり、南にはキャンプ・ハンセン基地が続く。このうえ集落東側の海に新基地ができて、ヘリコプターやオスプレイが飛び交うようになればどうなるか。辺野古の集落は東西南北、陸も海も空も基地に囲まれてしまうのである。「地域に影響が出ないように審査したい」とくり返す下地課長に対して、「どんな基地を造っても影響は出るに決まってる」と批判の声が上がったのは当然のことだ。
 これまで基地がなかった地域に新しく基地を造るのではない。辺野古区は今でも全国で最も米軍基地が過密な地域であり、そこにさらにV字型二本の滑走路と港湾機能を持つ新基地が建設されるのである。その理不尽さを正当化し得る論理があるだろうか。日本国憲法25条は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と謳っている。しかし、四方八方を米軍基地に囲まれた場所で営まれる生活に、憲法25条は適用されているといえるか。
 辺野古区の推進派の中には、新基地建設によって区を発展させ、2万人の人口にすると言う人もいるとのこと。しかし、基地に囲まれた生活環境を求めて移り住む人がいるだろうか。むしろ、北谷町砂辺区で起こっているように、爆音など生活環境の悪化に耐えられなくて、出ていく人の方が多くなるのではないか。
 辺野古区には今でも新基地建設に反対する気持ちの人は大勢いる。しかし、表立って発言し、行動できない状況が作り出されている。そういう中で勇気をもって行動している辺野古有志の会の皆さんの活動は、大きな意義を持っている。もっと応援の輪を広げたいものだ。

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