急に思いついて
50年前によく行った
喫茶店で
オムライスを食べたくなった
久しぶりの京都は梅雨空で
蹴上から、南禅寺、永観堂を経て
哲学の道についたころには
ポツポツの雨粒が、本格的な雨となった
銀閣寺道まで出て
今出川通りに入り
疏水に沿って
百万遍方向へと歩く
確かこの辺で
姿勢の良いじいさんが
草鞋のような
とんかつを揚げていた
店のメニューはそれしかなく
注文しなくてよいのがよかった
結構うまくて
わりあい気に入っていた
当然ながらその店は今はなく
その場所を過ぎて
記憶を頼りに
アラビカという名の喫茶店を探す
50年前には
髪の少ない旦那と奥さんの二人でやっていた
10年前には
奥さんが一人だった
何の変哲もない
ケチャップがかかった
オムライスだったが
徹夜明けには妙にうまかった
そして今日
その店はパン屋に代わっていた。
50年の月日は
いろいろな思い出を洗い流していく
この雨は
50年前の雨と
同じなんだろうか
歩きながらふとそんなことを考えた
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