作品論ではありませんが、簡単にあらすじを述べておきます。
イリエは、後輩に対する上司のセクハラを告発して、逆に本社から辺鄙なところにある閉鎖される予定の倉庫へ左遷されてしまいます。
本社へ帰りたいイリエは都内に借りている部屋はそのままにして、倉庫の近くのショッピングセンターのカフェで店長をしている、大学時代の友人のしおりの所に居候しています。
イリエは両親とも関係が切れていて、もう三年も実家へ帰っていません。
つきあっいる相手もいないイリエは、将来しおりとシェアハウスを買って一緒に暮らしてもいいかなと思っていました。
しかし、しおりはカフェでアルバイトをしていた六歳年下の大学生と、その子の卒業を機に結婚することになります。
そのため、イリエは、会社の借りている古いアパートに移らなくてはならなくなります。
四面楚歌の状態に追い込まれたイリエは、その窮地を何とかやり過ごすために、同僚のパッとしない森川という男を好きになったと、自分で仮想することにします。
カソウスキとは、「仮想好き」のことなのです。
正直言って、小説の出来は彼女のその後の作品と比べるともうひとつなのですが、この作品もポスト現代児童文学の創作理論について示唆に富んでいます。
学校(特に教師)、友人関係、家庭に阻害されてような、孤立無援になっている子どもたちにとって、仮想した友人、(それは同性でも異性でも構いませんが)、を持つことは、その状況を克服するとまではいかないにしろ、何とかやり過ごす手段として有効だと思います。
ゲームやネットなどの仮想空間で遊ぶことに慣れている現代の子どもたちにとっては、仮想の友人を描いた作品は親和性の高いものになると思われます。
また、そういった作品を読むことによって、実際に孤立している子どもたちが生き延びていくためのヒントになるのではないでしょうか。
友人ではありませんが仮想のペットを持つことで閉塞感を逃れようとした児童文学の作品には、フィリッパ・ピアスの「まぼろしの小さい犬」があります。
私自身も、幼稚園から小学校低学年のころ、自家中毒という病気で幼稚園や学校を休みがちだったので、「本の中の友だち」(例えば、エーリヒ・ケストナーの「エーミールと探偵たち」のエーミール・ティッシュバインや「飛ぶ教室」のマルチン・ターラーなど)にどんなに励まされたかわかりません。
その時の体験がなかったら、私は児童文学に関わるようにはならなかったでしょう。
イリエは、後輩に対する上司のセクハラを告発して、逆に本社から辺鄙なところにある閉鎖される予定の倉庫へ左遷されてしまいます。
本社へ帰りたいイリエは都内に借りている部屋はそのままにして、倉庫の近くのショッピングセンターのカフェで店長をしている、大学時代の友人のしおりの所に居候しています。
イリエは両親とも関係が切れていて、もう三年も実家へ帰っていません。
つきあっいる相手もいないイリエは、将来しおりとシェアハウスを買って一緒に暮らしてもいいかなと思っていました。
しかし、しおりはカフェでアルバイトをしていた六歳年下の大学生と、その子の卒業を機に結婚することになります。
そのため、イリエは、会社の借りている古いアパートに移らなくてはならなくなります。
四面楚歌の状態に追い込まれたイリエは、その窮地を何とかやり過ごすために、同僚のパッとしない森川という男を好きになったと、自分で仮想することにします。
カソウスキとは、「仮想好き」のことなのです。
正直言って、小説の出来は彼女のその後の作品と比べるともうひとつなのですが、この作品もポスト現代児童文学の創作理論について示唆に富んでいます。
学校(特に教師)、友人関係、家庭に阻害されてような、孤立無援になっている子どもたちにとって、仮想した友人、(それは同性でも異性でも構いませんが)、を持つことは、その状況を克服するとまではいかないにしろ、何とかやり過ごす手段として有効だと思います。
ゲームやネットなどの仮想空間で遊ぶことに慣れている現代の子どもたちにとっては、仮想の友人を描いた作品は親和性の高いものになると思われます。
また、そういった作品を読むことによって、実際に孤立している子どもたちが生き延びていくためのヒントになるのではないでしょうか。
友人ではありませんが仮想のペットを持つことで閉塞感を逃れようとした児童文学の作品には、フィリッパ・ピアスの「まぼろしの小さい犬」があります。
私自身も、幼稚園から小学校低学年のころ、自家中毒という病気で幼稚園や学校を休みがちだったので、「本の中の友だち」(例えば、エーリヒ・ケストナーの「エーミールと探偵たち」のエーミール・ティッシュバインや「飛ぶ教室」のマルチン・ターラーなど)にどんなに励まされたかわかりません。
その時の体験がなかったら、私は児童文学に関わるようにはならなかったでしょう。
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