1973年公開のアメリカ映画です。
スター・ウォーズを作る前の、まだ二十代のジョージ・ルーカスが監督した青春映画の傑作です。
オールナイトで、町を車で流すアメリカの高校生や短大生たちの、若いエネルギーに満ち溢れた一晩を、伝説のDJ、ウルフマン・ジャック(実際に出演しています)が流すオールディーズのヒット・ナンバーにのせて、鮮やかに描いています。
西部の田舎町に住む優等生の男の子が、ハイ・スクールを卒業して、奨学金を得て東部の大学へ行く前夜で、彼は本当に出発するかどうか、一晩中悩みます。
背景を説明すると、当時(今でもそうかもしれませんが)、アメリカの田舎町の高校生が地元の奨学金を得て、東部のアイビーリーグに代表されるエリート大学に進むことは、郷土の期待を一身に背負うことであり、全国から集まってきた秀才たちがしのぎを削る戦いの場へ参加することも意味します(実際に、半年で挫折して郷里へ戻ったハイ・スクールの教師が登場します)。
「期待に応えられるか?」「競争に耐えられるか?」と、主役の少年が思い悩むのも当然ですし、一緒に行くはずだった生徒会長の少年は、大学よりガールフレンド(主役の少年の妹で来年のチアリーダー(美人で成績優秀を意味します)に選ばれています)を選んで、取り敢えず一年間は地元に残ることを選択します。
主人公は、その晩町で見かけた絶世の美女(白いサンダーバードに乗っています)に別れを告げて、東部へ飛行機で旅立ちます。
この美女は、主人公にとっては青春の象徴と思われますので、それに別れを告げたのは彼が大人になることを決意したことを意味します。
さて、この作品では、多くの高校生や短大生が自分のアメ車(当たり前ですが)を持っていますが、これはファンタジーの世界ではなく現実の世界なのです。
この映画の時代設定がいつなのかは明示されていませんが、ケネディ大統領の名前が出てくるので1962年前後と思われます。
当時のアメリカは黄金の50年代と言われた好景気をうけて、なおかつベトナム戦争の泥沼に引き込まれる前(エンドロールで、主要な役の少年の一人が1965年にベトナムで戦死したことが示されます)なので、日本で言えばバブル期のようなもので、高校生が自分の車を持っていることは当たり前なのです(他の記事にも書きましたが、ボブ・グリーン「17歳」には、1964年の誕生プレゼントに車をもらうシーンが出てきます)。
言ってみれば、この映画は、高校生たちの青春を描いただけでなく、古き佳きアメリカの「青春時代」を描いたことになります(題名は、それを意味しているのでしょう)
主役の少年を演じたリチャード・ドレイファスは、当時25、6歳だったのでさすがの演技を見せていますが、他の少年たちも、後に監督として大成するロン・ハワードや「アンタッチャブル」で活躍したチャールズ・マーティン・スミスなどが演じています。
また、無名時代のハリソン・フォードもチョイ役で出演しています。