繰り返し述べてきたように、現在の児童文学の読者は女の子だけでなくより広範な年代の女性です。
幼いころに少女小説に親しみ、そのまま児童文学を読み続けている女性たちもたくさんいます。
また、少女小説から一般書(特に女性小説)に移行する女性たち(これが以前は一般的でした)も依然としてたくさんいることでしょう。
こうして、文学の担い手(読者ばかりでなく書き手や編集者も)は、しだいに女性へ移っています。
これは、紫式部の時代以来の伝統へのカムバックなのかもしれません。
現在でも、女性と比較すると、経済的な理由で作家をあきらめている人は、男性の方が圧倒的に多いでしょう。
一方、現在では、児童文学の男の子の読者はごく少数で、その結果成長しても男性は児童文学だけでなく一般文学もあまり読みません。
唯一の例外はライトノベルで、これらの読者の中心は若い男性ですし、彼らは将来的なSFやミステリなどの一般文学の潜在的な読者でしょう。
しかし、もともと男の子たちの物語消費欲求は、ゲームやマンガやアニメやカードなどで満たされていて、成長してからは、大半はパチンコ、競馬、競輪などのギャンブルへ移行していました。
それが、オンラインゲームや携帯ゲームなどの登場とともに、ギャンブルなしで、ゲームやアニメの世界に留まる男性も多くなってきています。
そのため、成人しても一般文学の読者にならない男性は増えています。
私は、三十年以上、いろいろなボードゲームの例会に参加していますが、その参加者は圧倒的に男性が多いです(最近は女性のゲーマーも増加していますが、依然として少数です)。
こうして、文学の世界では、書き手も読み手も女性が中心になっています。
しかし、それも将来的には先細るでしょう。
一番大きな理由は、スマホの登場です。
現在でも、若い世代を中心に、スマホをさわっている(見ているだけではなくインタラクティブなところがポイントです)時間がどんどん増加しています。
かつては電車の中でマンガ雑誌や本(特に文庫本)を読んでいる人たちがたくさんいましたが、今はほとんど見かけません(いたとしても、たいていは高齢者です)。
今では、ほとんどの人たちが車内でスマホをさわっています。
こうして、紙の本のマーケットは、マンガも含めてどんどん小さくなっています。
そして、この波は小学生(特に女子の普及率が高い)にまで押し寄せています。
すでに、高学年の女子向けの少女小説は売れなくなっていて、出版社の主なターゲットは中学年以下へ移っています。
でも、その年代にスマホ(あるいはウェアラブルコンピュータ)が普及して、少女小説を読まなくなるのも時間の問題でしょう。
こうした時、児童書でも「電子書籍の読み放題」サービスなどを展開して(マンガの世界ではすでにサポートしています)、読者をつなぎ留めないと、少女小説は少女マンガや少女アニメの原作になる以外は消滅するかもしれません。
そして、彼らが大人になった時は、一般文学(特に女性小説)も衰退してしまうでしょう。