現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

丘修三「ぼくのお姉さん」

2022-10-29 12:39:12 | 作品論

 偶然、この本が2015年の神奈川県の読書感想文コンクールの課題図書になったことを知り、再読したくなりました。
 こうしたいろいろな読書感想文の課題図書は、純文学的な「現代児童文学」をたくさん売るほとんど唯一の方法です。
 どういういきさつで、1986年に初版が出たこの本が30年近くたった2015年の神奈川県の課題図書になったかは知りませんが、今でも苦労しながら(時には自費出版で)「現代児童文学」の創作を続けていらっしゃる作者のために素直に喜びたいと思いました。
 この本の冒頭には、以下のような「はじめに」という文章があります。
「人生は、たのしいもの。
 けれども、くるしいことや、
 かなしいことや、心をなやますことも
 また、たくさんあります。
 人は、そのようなさまざまなことを
 体験しながら、ほんとうの<人間>
 になるのだと思います。
 ひとの心のいたみがわかる
 <人間>に。」
 30年の間に、子どもたちが読書に求めるものは大きく変化し、たんなる一時の暇つぶし的な娯楽にすぎない場合が多くなっています(大人たちも同様ですが)。
 しかし、時には本書に載っているような作品群を読むことは、今の時代だからこそ大切なことなのではないでしょうか。

ぼくのお姉さん (偕成社の創作)
クリエーター情報なし
偕成社
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ごくせん THE MOVIE

2022-10-27 13:24:24 | 映画

 2009年公開の日本映画です。

 仲間由紀恵が主演した人気テレビドラマ(2002年から2008年にかけての3シリーズの連続ドラマと二本の単発スペシャルドラマがあります)の映画化です。

 ドラマからは、多くの男性アイドル(ジャニーズ系が多い)が、仲間演ずる山口久美子先生(ヤンクミ)の教え子として生み出されました。

 この映画は、その完結編として描かれているで、歴代の教え子アイドルたちの多くが顔を見せる総集編としての顔も持つので、ストーリーが総花的で物足りません。

 まあ、いろいろな男性アイドルが見られることと、ヤンクミ得意の決め台詞の数々が大スクリーンで見られることがポイントかもしれないので、興行的には成功しました。

 

 

 

 

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摩天楼はバラ色に

2022-10-27 13:03:07 | 映画

 1987年公開のアメリカ映画です。

 「バック・トゥー・ザ・ヒューチャー」(その記事を参照してください)の成功で、当時人気絶頂だったマイケル・J・フォックス主演のコメディ映画です。

 アメリカの農村からニューヨークへ出てきた青年のサクセス・ストーリーを、会社乗っ取りや女性重役との恋愛を通して、下ネタも交えてコミカルに描いています。

 ストーリー自体は他愛のないものですが、マイケル・J・フォックスはここでも軽快な演技を見せています。

 

 

 

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シコふんじゃった。

2022-10-27 11:54:11 | 映画

 1992年の日本映画です。

 監督の周防正行と主演の本木雅弘(もっくん)の出世作です。 

 日本アカデミー賞など数々の映画賞を受賞しています。

 卒業に必要な単位と引き換えに相撲部に入部したお気軽学生が、しだいに相撲に打ち込むようになる姿をコミカルに描いています。

 アイドルのもっくんの裸というかなり際物的要素も含んでいましたが、この映画でもっくんは本格俳優としてみとめられ、監督の周防もその後の「Shall Weダンス?」などのヒット作へとつながります。

 もっくん以外の部員も、イケメンの弟、万年留年生の主将(極度の緊張症ですぐに下痢をします)、イギリスからの留学生(裸の尻を拒否してまわしの下にスパッツをはきます)、臆病なクリスチャン(立ち合いで目をつぶってしまいます)、女性マネージャー(巨体の持ち主で、男に扮して試合に出場します)といった個性あふれる面々です。

 出演者も、柄本明、竹中直人、清水美砂、田口浩正、六平直政など、役者ぞろいです。

 

 

 

 

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グリーンブック

2022-10-26 19:40:07 | 映画

 2019年のアカデミー賞で、作品賞など三部門で受賞したロードムービーです。
 天才的な黒人ピアニストと、彼のディープサウスを含むリサイタル・ツアーに運転手(兼用心棒?)として雇われたイタリア系白人の男(それまでは、クラブの用心棒などをしていました)が、次第に心を通わせていく話です。
 公民権運動が勝利する前の1962年なので、当時の南部(特にディープサウス)では黒人差別が公に認められていました(白人用レストランやバーへの出入り禁止(もちろんウェイターやウェイトレスは黒人です)、白人用トイレの使用禁止(黒人用は戸外の粗末なものです)、白人用ホテルの使用禁止、洋服屋での試着室の使用禁止、夜間外出禁止など)。
 こうした差別は、主に黒人に対してなのですが、日本人のようなアジア系の人たちへの適用は微妙だったようで、1959年に同じ南部を旅した庄野潤三の「南部の旅」(その記事を参照してください)には、そのどっちつかずの不安感が描かれています。
 タイトルの「グリーンブック」は、そうした環境の中で、黒人が南部へ旅行するためのガイドブック(黒人が利用できる店やホテルなどの情報が載っています)のことです。
 こうした状況の中で、二人は時に対立しながらもいろいろな困難を乗りこえて、クリスマスイブに予定通りニューヨークに帰着し、ラストでは運転手の家での彼の大家族のクリスマスディナーにピアニストも参加します。
 この映画も、基本的にはエンターテインメント作品なのですが、マイノリティへの差別(黒人、LGBTQ(ピアニストはゲイのようです)など)を鋭く糾弾しています。
 前年の「シェイプ・オブ・ウォーター」(その記事を参照してください)に続いて、このようなマイノリティへの差別を糾弾した映画がアカデミー作品賞を受賞した背景には、当然、移民を阻害しているトランプ大統領の政策への批判もあるでしょう(もともとハリウッドはリベラル色が強く、民主党寄りだという事情もあります)。
 また、この二作が、ともに1962年のアメリカを舞台にしていることにも、明確な理由があります(2017年のアカデミー作品賞にノミネートされた黒人や女性への差別を糾弾した「ドリーム」(その記事を参照してください)も、1961年から1962年にかけてのアメリカが舞台です)。
 アメリカでは、「黄金の五十年代(もちろん白人社会だけにとってですが)」と言われた1950年代の好景気(日本の1980年代のバブルよりはるかにスケールは大きいです。そのころの白人中流家庭の高校生の派手な生活は、サリンジャーの「キャッチャー・イン・ザ・ライ」(その記事を参照してください)や、それよりは少し後ですがボブ・グリーンの「17歳」やルーカスの「アメリカン・グラフィティ」で詳しく描かれています(ナイトクラブで酒を飲んだり、自分用の(ボブ・グリーンは、17歳の誕生日にプレゼントされています)大きなアメ車(当たり前ですが)を乗り回したりしています。
 そう言えば、この映画でも、「シェイプ・オブ・ウォーター」でも、ライト・グリーンの大きなキャデラックがその頃の富の象徴として使われています))を経て、東西冷戦、宇宙開発競争、公民権運動などの大きな社会現象があり、そうした困難な状況を前年の1961年に就任した若きケネディ大統領(黒人ピアニストがディープサウスで警察に不当に拘束された時に、弁護士を通して連絡した大統領の弟のロバート・ケネディ司法長官の電話で釈放されるシーンもあります)と乗り切ろうという国民の機運もありました。
 そのため、いろいろなマイノリティ(女性、人種、障碍者、LGBTQなど)への差別が顕在化した(それまでは当然のこととされていました)時期でもあり、その時代を描くことは現在のアメリカ社会の問題につながり、結果としてアンチトランプの姿勢を明確にできるからでしょう。
 もちろん、この映画はエンターテインメント作品ですので、興業的な配慮が重要なため、黒人にも白人にも八方美人になっている面があって、作品賞受賞に対しては批判もあるようです。
 ピアニストは、若いころ(三才からピアノを弾いています)から才能も認められ、家族も含めた黒人社会から引き離されて、白人社会の中で教育(三つも博士号を持っています)を受けて成功し、上流社会の中で生活(カーネギーホールの上の贅沢な部屋で暮らしています)していますので、いわゆる「アンクル・トム」(ストウ夫人の「アンクル・トムの小屋」は出版当時(1852年)は奴隷解放運動に大きく寄与した偉大な本ですが、そこに描かれたアンクル・トムは白人に従順すぎるとして、黒人社会(特に1960年代から1970年代にかけて)では「白人に従順な黒人」としての蔑称として使われることもあります)的(ただし、それゆえの孤独も描かれていますし、そうした時代にあえて通常の三分の一のギャラでディープサウスをツアーする勇気にも触れられています)ですし、運転手もいわゆる「白人の救世主」(映画などで非白人の窮地を救う白人のステレオタイプ)的な面はあります。
 ただし、ピアニストとは対照的に、ブロンクス(ニューヨークの下町)のイタリア人街育ちで教育もない、いわゆる「プア・ホワイト」(白人貧困層への蔑称)としての困難さも描かれています(それまではクラブの用心棒やボスの運転手をしていて、映画の中でも数回もっとやばそうな仕事を紹介されそうになります。
 こうしたエンターテインメント作品としての限界はあるもの、ピアニストを演じたマハーシャラ・アリ(アカデミー助演男優賞を受賞)と運転手を演じたヴィゴ・モーンセン(惜しくもアカデミー主演男優賞の受賞は逃したものの(受賞は「ボヘミアン・ラプソディ」(その記事を参照てください)のラミ・マレック)、体重を約20キロ増やしてこの役に挑戦しました(「レイジング・ブル」で27キロ増やしたロバート・デ・ニーロは1981年にアカデミー主演優賞を受賞しているのですから、もうちょっと増やせばよかったのかもしれません)の熱演により、優れた作品になっています。

グリーンブック~オリジナル・サウンドトラック
クリエーター情報なし
ワーナーミュージック・ジャパン
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ツレがうつになりまして。

2022-10-17 11:15:45 | 映画

 2011年公開の日本映画です。

 人気コミック・エッセイの映画化(それまでにテレビドラマ化もされています)です。

 うつ病にかかって会社を退職した夫を、漫画家の妻が支える日常を描いています。

 エッセイやドラマとともに、うつ病に対する偏見をとくのに、一定の役割をはたしました。

 ただ、夫が勤めていた会社の様子がリアリティがない(すべて上司の裁量で夫の退職が決められていますが、実際は人事や健康保険組合がからむでしょう。このことが別の偏見(うつ病にかかったら退職しなければならない)を生む恐れがあります)のと、夫役の堺雅人の大げさな演技がこの作品の場合鼻につくのが欠点(感情の起伏が激しく感じられてしまうので、うつ病より双極性障害かと思えてしまいます)です。

 その点、妻役の宮崎あおいの演技は自然体で好感が持てました。

 この作品ではハッピーエンド(夫はうつ病についての講演もし、妻の仕事のマネージメントをすることになります)なのですが、大半のうつ病患者とその家族はこのようにはうまくいきません。

 この映画でも指摘していますが、うつ病は全快になることは少なく、多くは寛解するのがせいいっぱいでしょう。

 それでも、生活のために、社会と折り合っていかなくてはならないのが実情です。

 

 

 

 

 

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勝手にしやがれ

2022-10-11 11:19:11 | 映画

 1960年公開のフランス映画です。

 ジャン=リュック・ゴダール監督によるヌーベルバーグの傑作です。

 無軌道な青年の生と死を、しゃれた台詞、おしゃれなファッション、軽快な音楽、斬新な映像で描いています。

 自動車泥棒の主人公は、欲望の赴くまま、車を盗み、金を盗み、女と寝ます。

 挙げ句の果てには、警官を撃ち殺して追われる身になります。

 車を盗みながらパリ中を逃げ回りますが、最後は女に密告されて警官に射殺されます。

 どこか憎めない不思議な魅力を持つ青年を、こちらもフレッシュなジャン=ポール・ベルモントが軽快に演じています。

 相手役のジーン・セバーグも、ボーイッシュなセシル・カットがよく似合っていて魅力的です。

 

 

 

 

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大人は判ってくれない

2022-10-11 11:17:47 | 映画

 1959年公開のフランス映画です。

 フランソワ・トリュフォー監督の長編第一作で、カンヌ映画祭で監督賞を受賞しました。

 ジャン=リュック・ゴダール監督の「勝手にしやがれ」(その記事を参照してください)などと並んで、ヌーヴェルヴァーグの代表作といわれています。

 愛情のない両親(彼は母親の連れ子です)と高圧的な学校に絶望した十二歳の少年の姿を描いています。

 初めは、学校をさぼって友だちと繁華街で遊ぶだけでしたが、ついには犯罪に手を染めてしまいます。

 犯罪といっても、父親が勤める会社のタイプライターを盗んで、売りさばこうとしただけなのですが、売れずに帰そうとしたところをつかまります。

 そして、父親自らの手で警察に突き出されて、留置場に入れられます。

 母親も、彼の引き取りを拒んで、彼の少年院行きを希望します。

 さらには、面会に来た時に、出所後の引き取りもしないことを、彼に宣言します。

 その少年院を脱走して、たどり着いた海岸で絶望的な表情を浮かべる少年のアップで、映画は終了します。

 友達と遊んでいるときの生き生きとした表情と、家庭や学校で浮かべる彼の暗い表情が、非常に対照的です。

 60年以上も前の映画ですが、少しも古びることなく(白黒映画ですが)、現在の日本の子どもたちを当てはめても成立する作品です。

 こうした状況に肉薄する児童文学作品が必要とされています。

 

 

 

 

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花より男子ファイナル

2022-10-03 10:32:25 | 映画

 2008年の日本映画です。

 人気コミックスのドラマ化を、さらに劇場版にして後日談を描き、興行的には

 

 

大ヒットしました。

 ストーリー自体は、荒唐無稽で他愛のないものですが、井上真央が演じるヒロインをめぐる四人のイケメンの活躍が見せ場です。

 松本潤、小栗旬、松田翔太、阿部力の、それぞれタイプの違ったイケメン俳優たちを、存分に楽しめます。

 観客(若い女性たち)は、それぞれが主人公を自分に置き換えて、夢の世界に遊べるのでしょう。

 

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