1995年の江戸川乱歩賞を受賞し、翌年直木賞も受賞して評判になったハードボイルド小説です。
新宿中央公園で発生した爆弾テロ事件に巻き込まれたアル中のバーテンダーが、自分自身で事件の謎を追求していきます。
主人公が元東大全共闘で、22年前の爆弾事件にやはり巻き込まれていたことが、作品のミソのようです。
また、主人公の振る舞いが妙に潔く、義理堅いやくざだの、昔の同棲相手の娘だのに、一方的に好かれます。
主人公を含めたこの主要三人の登場人物はなかなか魅力的に描かれていますし、文章や会話のレベルも高いです。
また、非常に凝った複雑な伏線を、ラストで一気に回収する剛腕は、なかなかのものがあります。
ただ、そこに至る過程で、偶然の多用だったり、御都合主義だったりするのは、エンターテインメント小説の書式なのでうるさくいいませんが、ラストの真相解明のシーンが、ほとんど真犯人の独白なのは興ざめでした。
また、亡くなった被害者たちの子供たちが、葬式もすんだかすまないうちなのに、一様に奇妙に冷静でクールなのは、さすがにリアリティに欠けます。
両賞の選者たちは絶賛しているようなのですが、当時一部で囁かれた「全共闘世代のオジンたちだけが喜んでいる、マスターベーション小説」という評価の方が当たっているかもしれません。